研究紹介(柿本敏克)

研究テーマ:仮想世界ゲームを用いた「状況の現実感」に関する研究

概要

柿本敏克
柿本敏克

電子コミュニケーション場面では対面状況と異なる対人相互作用がみられることが指摘されている。ここから「状況の現実感」概念を提唱し、概念妥当性の検討を経たのち、その測定法を確立した(柿本, 2010; 柿本・細野,2010)。さらに、民族紛争やテロリズムなどの集団間の紛争解決に取り組む研究領域である集団間関係研究において、この概念のもつ理論的意義(Kakimoto, 2012)を明らかにした。すなわち、集団状況がリアルなものとしてとらえられるためには、当事者が「状況の現実感」をもつことが必要条件であることを示した。

また、現代に生きる我々につきつけられた課題である環境問題に関して、この「状況の現実感」が、個人が実行できる環境配慮行動を促進する決め手であることを実証した(柿本・阿形, 2013)。

集団間関係や環境問題といった複雑な要素が絡む研究テーマは、さまざまな理由から実験研究を行うのが困難な領域であるが、これを可能にするための道具として、複数集団に分かれた数十人が統制された状況のもとで電子的相互作用を行うことのできる仮想世界ゲーム電子版(cSIMINSOC)を他の研究者とともに共同開発した。

関連する代表的著作

柿本敏克(2008). 社会的アイデンティティ研究から見た自己の社会性 下斗米淳(編著)『社会心理学へのアプローチ』(自己心理学6),金子書房,pp. 65-84.

Kakimoto, T. (2012). A sense of field reality that makes a group situation real. Japanese Journal of Applied Psychology, 37, 45-51.

柿本敏克(2015). メディアの変化 浮谷秀一、大坊郁夫(編著)『クローズアップ「メディア」』(現代社会と応用心理学 5),福村出版,pp. 15-22.

柿本敏克・細野文雄(2010). 状況の現実感尺度の再検討:2つの仮想世界ゲーム実験から 実験社会心理学研究, 49, 149-159.

柿本敏克・阿形亜子(2013). 環境配慮行動を促進する新変数の検討 応用心理学研究, 39, 122-131.