2015年度

研究活動の要旨(2015年度)

情報行動講座

荒木詳二(外国文化第二研究室)

[その他]

「世界文学会」研究企画委員長として研究集会の企画を担当している。

さらに編集委員会からの依頼で「世界文学会」掲載の論文をを多数査読している。

伊藤賢一(理論社会学研究室)

[学会発表]

発表者名:伊藤賢一

題名:批判理論としての社会的加速化論 ― Rosa理論の射程

開催年月日:2015年6月28日

発表学会名:第55回日本社会学史学会大会

開催場所:京都大学

概要:学会からの依頼により,シンポジウム「社会学理論の最前線 ― 時間」での報告を担当した。他の報告者は多田光弘氏(熊本大学)と濱西栄司氏(ノートルダム清心女子大学)。ドイツの社会学者Hartmut Rosaの社会的加速化の理論について,批判理論として「疎外」を論じている点に注目し,その議論の根拠となっている「よき生」や「共鳴」という理念の有効性と妥当性について論じたもの。


[その他(分担執筆)]

著者名:西垣通,伊藤守(編)

書名:よくわかる社会情報学(やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)

発行年月日:2015年5月20日

発行所:ミネルヴァ書房

頁:92-93

概要:大学生向けの社会情報学の入門書。担当箇所はVI章8「公共圏と熟議民主主義」(92~93頁)。ハーバマスが提唱した公共圏の理念的価値がCMCをめぐる議論に対して果たす意義について解説し,より実践的な展開として熟議民主主義の実験的な試みを紹介した。


[その他(書評)]

執筆者名:伊藤賢一

題名:緻密で完成度の高い翻訳 さまざまな考察を促す刺激に満ちる

掲載紙名:週刊読書人

掲載年月日:2015年4月10日

概要:編集部からの依頼による書評。ニクラス・ルーマン著『リスクの社会学』(小松丈晃訳,新泉社,2014年)について,一般の読者向けに解説した。ルーマンのリスクをめぐる議論は社会学者にはかなり知られているが,テクノロジーと社会の関連やリスク・コミュニケーションのあり方が問われている中で本書がもちうる意義について論じたもの。


[その他(講演)]

講師名:伊藤賢一

題名:スマートフォン時代の青少年をめぐるリスク状況 ― 犯罪・いじめ・依存

開催年月日:2015年7月3日

場所:群馬県前橋合同庁舎

概要:群馬県町村教育長会の依頼により研修会の講師を務めた。青少年ネット環境整備法が想定していなかったスマートフォンと無線LANの普及により,従来のフィルタリングによる保護が無効化されていることや,新しいリスクとして浮上してきたネット依存の問題について解説した。


[その他(審査員)]

審査員名:伊藤賢一

題名:第6回小中学生新聞感想文コンクール

主催:上毛新聞社

日時:2014年10月17日, 11月29日

場所:上毛新聞社本社

概要:県内の小中学生を対象とした新聞感想文コンクールの審査員を務めた。


[その他(学会シンポジウムの司会)]

該当者名:伊藤賢一

題名:公開シンポジウム「社会情報学の〈これから〉~若手研究者からの発言」

主催:一般社団法人社会情報学会(SSI)

共催:東京大学大学院情報学環

日時:2015年7月4日

場所:東京大学本郷キャンパス・山上会館2階大会議室

概要:学会主催の公開シンポジウムの後半,シンポジウムⅡ「個人情報・マイナンバー・ビッグデータ」において,各報告に対するコメントと質疑応答の司会を務めた。登壇者と報告タイトルは以下の通り。「「個人」に関する社会課題と電子行政」庄司昌彦(国際大学),「ネットコミュニケーションに見られる暴力性と個人の特定:生命情報/社会情報/機械情報の連関」河島茂生(聖学院大学),「“マイナンバー”の〈未来〉-生存・規準・適正化する主体-」柴田邦臣(津田塾大学)。

井門 亮(言語コミュニケーション研究室)

[翻訳]

著者名:M. Lynne Murphy and Anu Koskela

訳者名:今井邦彦(監訳)岡田聡宏・井門亮・松崎由貴(訳)

書名:意味論キーターム事典

発行年月日(西暦):2015年9月22日

発行所名:開拓社

頁:363

概要:本書は,伝統的な意味論に加え,認知意味論,概念意味論,語用論,論理学などの関連諸分野まで網羅した用語集の翻訳である。(担当:Key Terms 243項目中86項目)

岩井 淳(意思決定支援研究室)

[著書]

著者名:岩井 淳

書名:よくわかる社会情報学(編者:西垣通,伊藤守)

発行年月日(西暦):2015年5月20日

発行所名:ミネルヴァ書房

頁:217

概要:本書は社会情報学のテキストである。個人としては,第VI章「社会的意思決定と情報」の「1.総論」,「9. 厚生主義と非厚生主義の視点」「10. 社会的意思決定と自己組織性」を担当した。また,第VI章の実質的な編集作業を担当した。


[学会発表]

発表者名:岩井 淳

題名:「社会的選択理論の情報学的展開」と社会情報学の射程

開催年月日:2014年12月13日

発表学会名:社会情報学会(SSI)2014年度第2回定例研究会

開催場所:中央大学駿河台記念館

概要:社会情報学の定義と学問的目標の設定は,社会情報学に集う研究者の共通の関心事である。この問題は,他学問に対する社会情報学の独自性に関する問いや,社会情報学教育がどのような人材を生み出すのかという問いに関わる。本報告では,社会情報学の研究例として「社会的選択の情報学的展開」を取り上げ,その視座を確認することで,社会情報学の全体像を再検討する作業を行った。


発表者名:坂元和靖,新井康平,関 一平,岩井 淳

題名:幸福な人々が多い地域ほど,自殺率は高いのか?~日本のセミ・マイクロ・データを事例に

開催年月日:2015年9月14日

発表学会名:2015年社会情報学会(SSI)学会大会(ポスターセッション)

開催場所:明治大学

概要:西洋諸国では幸福度が高い国ほど自殺率が高いという関係がすでに見出されており,また,アメリカ国内のマイクロデータを用いた分析でも同様の結果が得られている。本研究では,非西洋諸国のデータおよび日本国内のセミ・マイクロ・データを用いて同様の分析を行い,西洋諸国に見られるパラドクスがそのままの形では再現されないことを確認した。


[その他](報告書)

報告書名:平成26年度自殺対策検証評価会議報告書

著者名:自殺対策検証評価会議(岩井 淳,久保田貴文,須賀万智,中西三春,南島和久)

発行年月(西暦):2015年3月

頁:17

概要:内閣府自殺対策推進室における地域自殺対策緊急強化基金・緊急強化事業に関して検証評価作業を行い,報告したものである。今後の事業展開の方向性についても合わせて検討を行った。

小竹裕人(公共政策研究室)

[学術論文]

著者名:小竹裕人

題名:小竹裕人「高等教育市場の将来予測と政策選択」

発行年月日(西暦):2015年2月27日

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:22

頁:19-38.

概要:若井・小椋(1991)や小椋・小竹(1999)の先行研究の分析手法を踏襲し,高等教育市場において硬直的な国公立大学を所与のものとし,文科省の高等教育機関に対する政策選択を検討した。1986年以降のデータを用いて現状の把握と推計モデルの構築を行い,推計モデルを用いて高等教育における政策選択を検討した。将来推計モデルにおいては,12本の連立方程式から構成されている。将来推計の結果,私立大学に対する経常費補助を増加させる政策と,学生定員数の総量規制(5%の定員削減)を行う政策とを比較したところ,後者の方が大学進学のシグナリング効果が高まり,その結果,私立大学が学生を集めるために受検料や授業料を安くし経営状態が悪化しないですむ政策であることがわかった。


[学会発表]

発表者名:(早稲田大)○永井祐二,岡田久典,谷口信雄,堀口健治,(東工大)重藤さわ子,(東京農工大)堀尾正靱,(群馬大)小竹裕人,宝田恭之,(早稲田大学アカデミックソリューション)一宮航

題名:再生可能エネルギー利活用の地域展開促進 に関する研究-全国地方自治体への現状調査に基づく分析-

発表年月日(西暦):2015年8月14日

発表学会名:日本エネルギー学会第24回大会

開催場所:札幌コンベンションセンター

概要:再生可能エネルギーの推進の障害となっているものは何かについて,自治体にアンケートを行いその結果を分析したもの。その結果,再生可能エネルギーは地域の発展につながると認識しているものの,公的施設に設置されている以外の再生可能エネルギーについては把握しにくいこと,小さな規模の自治体ほど再生可能エネルギーの賦存量の把握が難しいこと,再生可能エネルギーの見通しがはっきりしないこと,マンパワー不足であること,が明らかとなった。


[その他]

[社会的活動(委員会等)]

○政策提案にかかわるもの

・群馬県未来創生懇談会委員,9/7

・群馬県未来創生懇談会安全安心部会部会長,9/7

・群馬県未来創生地域懇談会(館林邑楽地域)会長8/31

・連合群馬,政策フォーラムコーディネータ,7/25


○行政と市民との協働にかかわるもの

・総務省,地方共助社会づくり懇談会in群馬コーディネータ,11/21

・群馬県NPOボラ課,協働プラットフォーム意見交換会コーディネータ,10/24,10/31,11/5

・前橋市市民提案型事業審査委員会会長,2/6

・伊勢崎市協働まちづくり審査委員会会長,6/27



○政策評価にかかわるもの

・群馬県県土整備局交通政策課,ヘリポート指定管理者評価委員会会長,8/27

・群馬県企業局,県営ゴルフ場・駐車場指定管理者評価委員会委員

・群馬県議会事務局,議会審査委員会会長,9/24

・前橋市行財政改革懇談会会長,6/26

・安中市外部評価委員会委員,12/22

・安中市行政改革審議会委員,2/2

・安中市行政改革審議会行革大綱策定部会部会長,2/2,2/18,2/24

・総務省行政評価局,行政懇談会委員,12/8,9/10


○その他

・群馬県館林土木事務所多々良沼・城沼自然再生協議会委員,1/28

・群馬県産業政策課,優良企業表彰委員会委員

・群馬県学事法制課,公益認定審議会委員,10/20,1/27,2/27,3/26,4/20,6/24,7/21,9/29

・前橋市コンプライアンス委員会委員

・前橋市,道路愛称名登録等検討委員会会長,11/7

・群馬テレビ,放送番組審議会会長,毎月

・群馬大学理工学府,FutureKiryu,2/20,3/31,5/7,6/12


[社会的活動(講演)]

○地方創生関連講演

・桐生みどり地域,地域懇談会講演,桐生県税行政事務所,9/10

・館林邑楽地域,地域懇談会講演,館林県税行政事務所,8/31


[社会的活動(ワークショップ)]

・赤城山振興にかかわるワークショップ,前橋市・AKAGIやる気塾

・やる気の木プロジェクト,前橋市

末松美知子(舞台表象論研究室)

[学会発表]

発表者名:Michiko Suematsu

題名:“A|S|I|A: Japanese Productions Data”

発表年月日(西暦):2015年2月16日

発表学会名:Asian Intercultural Digital Archives Metadata Workshop

開催場所:国立シンガポール大学

概要: A|S|I|A (Asian Shakespeare Intercultural Archive) 構築に際してアジアにおけるシェイクスピア上演作品を,上演作品,受容,参照事項,芸術/表現様式の4分野についてデータ分析を行ってきたが,その作業で浮かび上がった主な問題点を報告した。例えば,データ全般に関してどこまで詳細にデータ分析を行うか,ある文化特有の芸術/表現様式(Art / Forms)を個人的な「解釈」を加えずにどのように中立的に指摘するかなどは常に問題となった。このようにインターカルチュラルな文化横断プロジェクトにおいては,上演作品における一つの表現が複数の芸術/表現様式や社会/文化的背景に言及している場合など,データの分析方針を統一してからデータ分析を行う必要があると指摘した。

森谷健(地域社会学研究室)

[その他・講演]

発表者:森谷 健

題名:社会情報学部のカリキュラム改革ー基盤性・選択性・柔軟性を基本的観点としてー

年月日(西暦):2015年9月14日

講演会名:第21回国立大学新構想学部教育・研究フォーラム

概要:ミッションの再定義を踏まえた新構想学部の取組をテーマとするシンポジウムで,平成28年度からのカリキュラム改革について,その基本的な観点について講演した。

山内春光(社会倫理研究室)

[学術論文]

著者名:山内春光

題名:今田勇子とは何者か−連続幼女誘拐殺人事件・再論−

発行年月日(西暦):20015年3月31日

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:22

頁:155-170

概要:2011年の東日本大震災で改めて注目されることになった『遠野物語』九九から取り出した,「亡き母」という概念を手がかりに,連続幼女誘拐殺人事件の核心・今田勇子とは何者かという問いを考察した。今田勇子とは,「向こう」の世界に置かれた子供のときの宮﨑を「こちら」の世界から支える存在として,大人の宮﨑によって仮構された存在であり,「向こう」の子供にとってそれは,「亡き母」として幻視されうる存在でもあることを論じた。

情報社会科学講座

新井康平(会計情報分析研究室)

[学術論文]

著者名:新井康平・後藤励・謝花典子・濱島ちさと

題名:内視鏡胃がん検診プログラムへの参加要因

発行年月日(西暦):2015年2月1日

掲載誌名:厚生の指標

巻数:62巻2号

頁:30-35

概要:診療所が,内視鏡胃がん検診プログラムへの参加を決定する要因を分析した。具体的には,内視鏡胃がん検診を診療所で実施している米子市において,内科か外科を標ぼうしているすべての診療所を対象とした郵送自記式の質問票調査を実施し,過去に内視鏡の経験があること,院長の年齢が若いこと,鳥取大学消化器内科(第二内科)医局出身であること,診療所の継承予定があることの4点が,プログラムへの参加に影響していた。


著者名:佐久間智広,新井康平,妹尾剛好,末松栄一郎

題名:因果関係を明示する業績報告形式が資源配分の意思決定に与える影響:実験室実験

発行年月日(西暦):2015年3月31日

掲載誌名:原価計算研究

巻数:39巻1号

頁:76-86

概要:財務情報と非財務情報のそれぞれで因果関係の明示の仕方がどのように意思決定者の判断に影響するのかを検証した実験室実験。非財務指標のほうが意思決定を洗練させることを示した。新井は,実験室実験の設計および関連するプログラムの整備,そして分析を担当した。

石川真一(環境科学第二研究室)

[学術論文等(総説)]

著者名:石川真一

題名:地域の里山環境の再生をめざした事業所敷地内ビオトープの育成〜チノー・ビオトープフォレストの試み〜

発行年月日(西暦):2013年11月(26年度申告漏れ)

掲載誌名:GREEN AGE ((財)日本緑化センター)

巻数:40(11)

頁:28-32

概要:近年「自然然再生事業」と称して,地域の生物相と生態系を取り戻すことを目的とした事業が行われ始めている。この自然再生事業のうち,ビオトープの“順応的”な管理方法について,群馬県内の企業敷地内で群馬大学社会情報学部環境科学研究室によって行われている実践例をあげて概説した。


[その他(報告書)]

著者名:石川真一,増田和明,大森威宏,小暮市郎,鈴木伸一,吉井広始,金杉隆雄,小池正之

題名:西榛名地域生物多様性モニタリング調査III

発行年月日(西暦):2014年11月

掲載誌名:群馬県自然環境課「良好な自然環境を有する地域学術調査報告書」

巻数:XXXX

頁:245-258

概要:2013年度に行われた群馬県自然環境調査研究会による学術調査の報告書。群馬県西榛名地域において2005-2007年度調査で生育が確認された30種の絶滅危惧・希少植物種の生育・分布状況をモニタリングした。このうち2種について新たな生育地が確認された。さらに,同地域の貴重在来種の受粉を行う昆虫相の一部を明らかにした。今後,群馬県の自然環境保護政策の策定・実施の基礎資料となる。筆頭著者として調査・解析・執筆を担当した。


[その他(社会的活動)]

1.

開催者名:石川真一

題名:ビオトープ育成のための環境科学的調査研究と講習

開催年月日:2015年4月〜10月各月各1回開催

開催場所:群馬県明和町,群馬県藤岡市

概要:(株)アドバンテスト群馬R&Dセンター(群馬県明和町)および(株)チノー藤岡事業所内に竣工したビオトープを育成する環境科学的調査研究を行い,これに基づいて講習を行った。(株)アドバンテストビオトープ基金および(株)チノービオトープ基金により助成を受けた。


2.

開催者名:石川真一(群馬県自然環境調査研究会)

題名:群馬県生物多様性モニタリング調査

開催年月日:2015年4月〜9月(月2回程度)

開催場所:群馬県東吾妻町ほか

概要:群馬県の委託事業である。群馬県野生生物保護条例の制定に伴う生物多様性モニタリング調査として,ホットスポット内での絶滅危惧植物の分布・個体数・生育立地調査,種子採集を担当した。

大野富彦(経営学研究室)

[学術論文]

著者名:大野富彦

題名:サービス業の表舞台を支える舞台裏のマネジメント-旅館業の「場」に着目したアプローチ-(査読有)

発行年月日(西暦):2015年2月27日

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:22

頁:1-18

概要:日本のサービス産業は,日本経済のGDP,就業者数ともに,その約7割を占めている。このサービス業を分析するアプローチに「サービスの劇場アプローチ」がある。これは,現在提供しているサービスを分析したり,新たなサービスのデザインに役立つひとつのアプローチである。本稿は,このアプローチについて,「場」に着目して議論を発展させ新たな分析モデルを提示した。この分析モデルは,企業の現在提供しているサービスの分析や,新たなサービスのデザインにおいて,舞台裏の議論を深めることができるものである。さらに本稿では,伊香保温泉旅館天坊の取り組みを分析モデルにあてはめ実践上の含意を導いた。①舞台裏での経営トップの姿勢,②ツールの活用,③CS会議の運営の工夫が表舞台をサポートし顧客への良質なサービス提供につながる。


[学会発表]

発表者名:大野富彦

題名:顧客の声が流れる組織マネジメント-伊香保温泉旅館天坊における「場」に着目した考察-

発表年月日(西暦):2014年10月26日

発表学会名:経営情報学会2014年度秋季全国研究発表大会

開催場所:新潟国際情報大学

概要:本稿は,人という経営資源が重要な位置をしめる旅館業(サービス業)について,①「サービスの劇場アプローチ」に場を加えた新たな分析アプローチを示すこと,そして,②旅館業の取り組みをこのアプローチにあてはめて,顧客の声を活用する組織マネジメントの実践上の含意を導くことを目的とする。伊香保温泉旅館天坊の取り組みから,舞台裏での(1)経営トップの姿勢,(2)ツールの活用,(3)CS会議の運営の工夫が表舞台をサポートし顧客への良質なサービス提供につながることがわかった。


[その他:研究会発表]

著者名:大野富彦

題名:(論文解説)C. B. BINGHAM, K. M. EISENHARDT, 'RATIONAL HEURISTICS: THE ‘SIMPLE RULES’ THAT STRATEGISTS LEARN FROM PROCESS EXPERIENCE' , Strat. Mgmt. J., 32: 1437-1464 (2011) について

発表年月日(西暦):2014年11月24日

発表学会名:定性的実証研究会

開催場所:中央大学

概要:(解説論文の概要)多くの研究で,組織プロセスは経験から学ぶといわれるが,驚くことに正確に何を学ぶかについてはほとんど知られていない。明確な学習を測る新たな方法を用いて,われわれは,異なる3つの国のITベンチャー6社に対して,それぞれの国際化戦略(国際進出)を調査した。われわれが提示するフレームワークは,企業はヒューリスティックスから学ぶことを示している。ヒューリスティックスは,ビジネス機会の獲得に焦点をあてるという共通の構造をもち,特定の順序をもって(段階的に)学ばれ,発達される。これは,ヒューリスティックスのかたまりとしては小さいが,とても戦略的なものである。われわれの研究成果は,次の3点である。戦略としてのヒューリスティックスの合理性を強調することによって戦略の心理学的基礎を示すこと,初心者のヒューリスティックスからエキスパートのヒューリスティックスにいたる認知的転換としてのケイパビリティ創造を示すこと,競争優位性を維持するためのダイナミック・ケイパビリティとしてのシンプル化サイクルを示すことである。

柿本敏克(社会心理学研究室)

[著書]

著者名:浮谷秀一,大坊郁夫(左2名編著者),柿本敏克ほか16名

書 名:クローズアップ「メディア」 (現代社会と応用心理学 5)

単著・共著の別:共著(分担部分は単著)

発行年月日:2015年5月

発行所名:福村出版

総頁数:233

概 要:本書は,インターネット,ケータイ,スマホ,ゲーム,SNS,消費生活,報道等々,現代社会のメディアとそれに関わる人間関係を,23のトピックで解説する。日本応用心理学会の企画シリーズの1冊。

担当部分:次の3つの項目を執筆した。
トピック1 メディアの変化(Pp.15-22)
トピック2 メディア環境の進化(Pp.23-31)
トピック17 グローバライゼーションとローカライゼーション(Pp.164-172)


[その他]

編者名:柿本敏克

題名:平成26年度群馬大学社会心理学セミナー報告

発行年月日:2015年 5月

発行所名:群馬大学社会情報学部

総頁数:35

概要: 平成26年度に社会情報学部主催で実施された第11回「群馬大学社会心理学セミナー」(釘原直樹先生)および群馬大学社会心理学研究会主催・社会情報学研究センター共催で実施された第11回群馬大学社会心理学研究小集会(岡本卓也先生)の講演録として作成された。

北村 純(行政学研究室)

[講演]

講演者名: 北村 純

題名: 日本のまちづくり-映像作品と地域活性化

開催年月日: 2015年3月17日

講演会名: 日本事情についての講演会

開催場所: リュブリャーナ大学

概要: スロヴェニア共和国リュブリャーナ大学において日本語・日本文化専攻の学生・院生を対象に日本事情についての講演会を行った。映像文化と地域活性化の観点から,フィルムコミッションの興隆,映像作品の誘致などの話題をとりあげながら,地域の住民と自治体,そしてメディアの係わりのなかで進められる現代日本のまちづくりの動向について説明・紹介した。(Urbano načrtovanje na Japonskem)


講演者名: 北村 純

題名: 政策評価システムについて

開催年月日: 2015年5月15日

講演会名: 平成27年度JICA国別研修「ウクライナの民主化に向けた知見の共有」

開催場所: JICA東京(東京都渋谷区)

概要: 独立行政法人・国際協力機構開催(実施主体:特定非営利法人・日本政治総合研究所)によるウクライナ政府職員を対象とした「ウクライナの民主化に向けた知見の共有」(行財政改革支援コース)(2015年5月10日~5月21日)における研修プログラムの1つとして,「政策評価システムについて」という表題で講義および参加者との質疑応答を行った。[講演サマリーロシア語訳(A4判7頁) Система оценки политики ]

坂本和靖(計量経済学研究室)

[学術論文]

著者名:坂本和靖(森田陽子との共著)

題名:女性のライフイベントと就業継続――結婚・出産・小学校就学

発行年月日(西暦):2015年4月

掲載誌名:Discussion Papers in Economics, The Society of Economics Nagoya City University.

巻数:No. 598

頁:-

概要:本研究では「小1の壁」における学童保育の役割を分析する。分析の目的は就学児童がいる世帯の学童保育の利用実態を明らかにし,就学児童がいる女性の就労に対して学童保育がどのような影響を与えているのか,学童保育の利用者にどのような特徴があるのかについて明らかにすることである。分析には,厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」(2002~2011年分)を用い,長子が小学生である女性の就業継続,就業決定,学童保育の利用の要因について,パネル・プロビット分析をおこなった。
 本稿の分析から以下の結果を得た。(長子が)小学校低学年である世帯における学童保育利用率は20.0%であり,母親が就業している世帯ほど,また生活時間を市場労働に配分している世帯ほど,家庭外保育としての学童保育の利用率が高いこと,学童保育が利用しやすい地域に居住しているほど母親の就業選択,就業継続が促進されていること,また,父親の協力が得やすくかつ学童保育が利用できることが母親の労働供給にプラスの影響を与えていること,学童保育の利用者の特徴として,母親が時間利用に柔軟性が確保できるものほど,父親の年収が高いものほど,夫の母親と同居しているものほど学童保育を利用しないこと,地域の学童保育が充実しているほど学童保育を利用していることが明らかとなった。学童保育の量的・質的な拡充が今後も求められる。


[学会発表]

発表者名:坂本和靖

題名: 「サンプル脱落がもたらす推計バイアスに関する考察」

発表年月日(西暦):2015年8月28日

発表学会名:2015 Japanese Stata Users Group Meeting

開催場所:一橋大学一橋講堂

概要:本研究では,同一対象を複数時点に渡って調査するパネルデータにおける途中脱落が推計に与えるバイアスについて分析することを目的とする。パネルデータは,クロスセクションデータ,時系列データと比べて,情報量が多く,有用性が高いデータである。しかし,パネルデータにも問題点がないわけではない。それは,同一個人を調査対象としているため,途中時点で回答を拒否された場合,代わりに他の対象者(予備サンプル)に調査を行うことができない点である。 対象者がランダムに脱落するのであれば問題ないのだが,脱落過程が観察可能な変数や,脱落時点以降の変数,調査では観察しえない変数などに規定されている場合は,脱落が推計に及ぼす影響は看過できない。本発表では,脱落対象の特徴に関する考察に加え,それらの情報を活かしたInverse Probability Weighting法による推計や,回答継続過程における仮定を緩めたBounds推計などを用いて,推計バイアスに関する考察を行う。


発表者名:新井康平(坂本和靖・関一平・岩井淳氏との共著)

題名: 「幸福な人々が多い地域ほど, 自殺率は高いのか?――日本のセミ・マイクロ・データを事例に」

発表年月日(西暦):2015年9月13日

発表学会名:社会情報学会大会

開催場所:明治大学駿河台キャンパス

概要:近年,社会科学において,主観的厚生(Well-Being)に関する研究が増えている(Easterlin 2003, Blanchflower and Oswald 2008a)。本稿では,主観的厚生の一つである幸福度(Hapiness)と自殺との関係,中でも幸福度が高い国ほど自殺率が高いというParadoxについて検証していく。Daly et al.(2011)は,マクロデータから,西洋諸国では,幸福度が高い国ほど自殺率が高いという関係を見出し,さらに,アメリカ国内のマイクロ・データを用いた分析でも,同様の結果を得た。他人の幸福のレベルがリスク要因といえるのだろうか。本稿では,この研究を日本に拡張して,このParadoxが西洋諸国に限定された現象であるのかを検証する。

杉山学(経営管理研究室)

[学術論文]

著者名:杉山学

題名:わが国の電力各社の生産性に対するDEAとInverted DEAを用いた時系列評価 ― 電力自由化前後の計21年間の推移 ―

発行年月日:2015年2月28日

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:22

頁:39-55

概要:日本における電力自由化は,1995年(平成7年),発電事業などへの新規参入拡大により始まり,現在まで段階的に改革が進んできた。電力自由化は,電気事業への競争原理導入により,電気料金の低減やサービス水準の向上といった,更なる効率化を目指すものであり,東日本大震災以前までは,電気料金に直接関係するコストの面において,電力自由化の成果は一定程度,上がっていたといえるだろう。しかし,生産性の観点から実際に効率化が行なわれてきたかは疑問が残る。そこで本研究の目的は,わが国における電気事業体(電力会社)の生産性を時系列的に比較評価することで,電力自由化後,コスト面ではなく生産性の観点からも効率化が行なわれているかどうかを,効率性評価法であるDEA (Data Envelopment Analysis : データ包絡分析法)とInverted DEAの時系列分析を用いて実証的に分析することである。したがって本論文では,電力自由化の開始前後の各10年間程度,計21年間(東日本大震災以前まで)を対象に,わが国の電気事業体(電力会社)に関する生産性の効率評価を,DEAとInverted DEAのウィンドー分析によって詳しく時系列的に分析,評価した。加えて本論文では,DEAとInverted DEAのウィンドー分析の数値結果を,直感的にわかり易く表現する方法として著者が以前提案した「ローソク足」を用いたグラフ化手法の設定を変更し,新たなグラフ化表現も提案した。これらにより,電力自由化後,生産性の観点から効率化が行なわれているかどうかを,実証的に検証した。


[その他 (講演)]

講演者名:杉山学

題名:ビジネスプラン策定スキル② ~ 事業構造と競争関係のデザイン ~

開催年月日:2014年12月4日

講演会名:平成26年度 群馬大学公開講座「社会起業家特論(ビジネスプラン策定スキル)」【群馬大学 産学連携・共同研究イノベーションセンター 荒牧分室 共催】

開催場所:群馬大学サテライト高崎会場

概要:平成26年度 群馬大学公開講座として,「ビジネスプラン策定スキル② ~ 事業構造と競争関係のデザイン ~」という題目の講演を行った。具体的な内容として,ビジネスプラン策定において「決定理論」と「ゲーム理論」の考えを活用した合理的な意思決定を企業活動の例題にて解説を行った。


講演者名:杉山学

題名:金融ビジネスの基礎知識⑤ ~ 総合評価手法 ~

開催年月日:2015年7月30日

講演会名:平成27年度 群馬大学公開講座「企業・産業分析スキル特論(金融ビジネスの基礎から実際まで)」【群馬大学 産学連携・共同研究イノベーションセンター 荒牧分室 共催】

開催場所:群馬大学サテライト高崎会場

概要:平成27年度 群馬大学公開講座として,「金融ビジネスの基礎知識⑤ ~ 総合評価手法 ~」という題目の講演を行った。具体的な内容として,総合評価をして合理的な意思決定支援を行う階層分析法(Analytic Hierarchy Process : AHP)を,身近な例題の意思決定に用い,合理的に結論を導き出す解説を行った。

西村尚之(森林生態学研究室)

[学術論文]

著者名:西村尚之・赤路康朗・鈴木智之・長谷川成明・小野清美・隅田明洋・原 登志彦・飯田滋生・関 剛・倉本惠生・杉田久志・中川弥智子・松下通也・廣部 宗・星野大介・稲永路子・山本進一

題名:北方針葉樹林におけるトウヒ属とモミ属の稚樹の動態に及ぼす林床環境の影響

発行年月日(西暦):2015年3月31日

掲載誌名:低温科学

巻数:73

頁:7-19

概要:北方針葉樹林における樹種共存機構を理解するために,北海道東大雪常緑針葉樹林の調査区内で稚樹個体の毎木調査と林床の全天写真撮影を行い,個体群動態や成長速度と林床環境との関係を解析した結果,エゾマツとトドマツの生残や成長は散乱光の入射割合に,アカエゾマツでは直達光の入射割合に強く影響されており,北方針葉樹林の樹種共存には稚樹期の光環境の違いが重要であることが結論された。


[学会発表]

発表者名:西村尚之・赤路康朗・鈴木智之・清野達之・星野大介・杉田久志・松下通也・中川弥智子・原 登志彦

題名:北方林・亜高山帯林におけるモミ属・トウヒ属数樹種の稚樹成長と林床環境の関係

発表年月日(西暦):2015年3月21日

発表学会名:日本生態学会62回大会

開催場所:鹿児島大学

概要:北方林・亜高山帯林におけるモミ属・トウヒ属の稚樹成長に及ぼす林床環境の影響を明らかにするために,三つの老齢林分に設置した面積1haの各調査区内で稚樹の毎木調査と林冠状態調査および全天写真撮影を行った。GLM解析の結果,どの樹種でも稚樹成長に及ぼすギャップやマイクロサイトの影響は小さかった。一方,エゾマツとトドマツの成長は散乱光入射割合に,アカエゾマツでは直達光入射割合に影響される傾向があった。また,亜高山帯のモミ属2種の成長には散乱光入射割合と稚樹混みあい度の影響が,トウヒでは散乱光入射割合の影響が強いことが示された。以上から,亜高山帯林では林床環境に対する稚樹成長の応答には樹種間の明確な違いは検出されず,北方林では稚樹成長と光環境との関係において樹種による違いがあることが明らかとなった。

西村淑子(行政法研究室)

[その他]

著者名:西村淑子

題名:平成27年度群馬大学地域貢献事業 ハンセン病療養所栗生楽泉園ボランティアガイド養成講座及びスタディーツアー報告書

発行年月日(西暦):2015年3月

概要:群馬県草津町にあるハンセン病療養所栗生楽泉園は,ハンセン病患者隔離政策の歴史,ハンセン病患者の体験や様々な活動など,ハンセン病問題を学ぶことのできる貴重な場所である。しかし,近年,入所者の死亡による減少と高齢化が進み,入所者が自らの体験を語ることが困難になっている。ハンセン病問題の継承が必要課題であることから,ハンセン病問題と栗生楽泉園に関するボランティアガイドの養成講座を開講するとともに,本講座の修了者がガイドを行う栗生楽泉園スタディーバスツアーを実施した。本報告書は,本事業の概要と成果をまとめたものである。

藤井正希(憲法研究室)

[学術論文]

著者名:藤井正希

題名:反論権再考―マスメディア規制の手段としての反論権

発行年月日:2015年2月

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:22

頁:57-76

概要:反論権の可否は,日本においては,憲法21条1項の表現の自由をめぐる論点の一つとされている。反論権は1970年代にアメリカの学説が紹介されたことにより議論が始まり,サンケイ新聞事件の発生によって盛んに議論されたが,最高裁の否定的な見解が明確に示されたことにより,議論は下火となっていった。学説の大半も,反論権がマスメディアの有する表現の自由に萎縮的効果を及ぼす危険性を指摘し,否定説に立っている。そして,その立場は,学説においては定説に近く,肯定説は異説として少数の学者が主張しているのみである。反論権は,現在では憲法やマスメディア法の教科書等でエピソード的に言及されるに過ぎない存在となっている。かかる現状の下,筆者は本稿において,反論権を再検討し,反論権に新たな意義を付与することによって,反論権を積極的に活用する途を模索していく。


著者名:藤井正希

題名:マスメディアの具体的な規制手段について―憲法学を中心とした学際的な視点から

発行年月日:2015年3月

掲載誌名:清和大学清和研究論集

巻数:21

頁:71-108

概要:本論文は,憲法学を中心とした学際的な視点からマスメディアの具体的な規制手段について考えることを目的とする。まず,基本的人権の尊重(人権の原理)と国民主権(統治の原理)という憲法の二大目的の観点からマスメディア規制の必要性を述べる。つぎに,マスメディア規制のための憲法規範的な論理を三つの視点から考えていく。すなわち,①マスメディアが第四権力化していること,②「マスメディアの表現の自由」と「個人の表現の自由」が大きく異なること,③マスメディアが社会的役割を有していることである。さらに,個別のマスメディア規制法を制定することによってなされている現行法による対応を見ていく。そして,最後にそれらの議論を踏まえ,試論として筆者の考える具体的な解決策を提示していく。すなわち,①反論権の活用,②匿名報道原則の採用,③署名記事の原則化,④ジャーナリストの肖像や経歴の公表,⑤取材源秘匿権の制限,⑥ジャーナリスト資格の公認,⑦マスメディア被害を迅速に救済する公的機関の設置,⑧課徴金制度である。


著者名:藤井正希

題名:投票価値の不平等と一人一票裁判―早期に一人一票の実現を!

発行年月日:2015年7月

掲載誌名:法学館憲法研究所報

巻数:13

頁:36-48

概要:議員定数の不均衡が原因で,選挙における一票の実質的価値が地域において異なること,すなわち投票価値の不平等という問題は,アメリカを始めとする諸外国でも古くから提起されてきたものである。日本国憲法における最大の価値である個人の尊厳を実現するためには,個人の人格的な価値が公権力により平等に取り扱われることが必要である。そこで,憲法14条は人格価値の平等を実現するために法の下の平等を規定した。とするならば,形式的に一人に一票が付与されていても,一票の中身に差異が存するのでは,人格価値の平等は実現しえないことから,憲法14条1項は投票数の平等のみならず投票価値の平等をも含む一人一票の原則を内容とする平等選挙を要請していると解する。この点,最高裁も,憲法14条等を根拠に,国会両議院の議員の選挙における選挙権の内容,すなわち各選挙人の投票の価値が平等であることを憲法が要求していることを明示している。この点,本稿ではかかる一人一票の原則を厳格に適用することが憲法の規範的な要請であることを判例・学説に言及しながら論証していく。


[著書]

著者名:藤井正希

書名:法学・憲法への招待

発行年月日:2014年10月15日

発行所名:敬文堂

頁:13-21

概要:日本における法体系は,日本国憲法を頂点に,ピラミッド型をしている。当然,数え方によって違いがでるが,法の総数は数万にのぼるとさえ言われている。そのように膨大な数にのぼる法を理解するためには,性質の同じものを一括りにして分類し,考えていくのがもっとも近道である。このことは,人間を人種,性別,年齢などで分類して考えることにより,人間の理解が格段に深まるのと似ている。この点,法というものは,様ざまな種類に分類される。その分類を形成しているのが,それぞれの法が持っている思想的・歴史的背景であり,国民の規範意識であり,国家と国民との法的関係であり,それ以外にも,多様な要因が関係していると考えられる。法学は,非常に体系的な学問分野である。本稿では,典型的な法の分類を学ぶことにより,法の本質にふれ,法を体系的に理解する力を身につけていく。


著者名:藤井正希

書名:行政救済法論

発行年月日:2015年3月25日

発行所名:成文堂

頁:206-213, 281-289

概要:民法の三大原則のひとつに,いわゆる私的自治の原則がある。私的自治の原則とは,人はみずからの自由な意思決定に基づいてみずから自由に法律関係を形成できるという原則をいう。この私的自治の原則を十分に実現するためには,たとえ他人に損害を与えたとしても加害者に損害に対する帰責性(故意や過失など)がなければ,加害者は責任を負わないとする必要がある。もし無過失でも責任を負わなければならないとすると,人はみずからの法律行為によって生じたすべての損害を賠償する責任を負う結果になってしまい,自由な活動が阻害されてしまう。このように,“少なくとも過失のない損害には責任はない”という原則を過失責任主義といい,過失責任主義は私的自治の原則から当然に導かれ,それを支えている考え方と言える。この過失責任主義によって,自由で円滑な法律行為や経済活動がよりいっそう保障されることになった。この原則は,資本主義発展の基礎を支える役割を果し,その結果,現代の日本において資本主義はきわめて高度に発展した。本稿では,かかる原則の意義,内容,役割等を判例・学説をもとに詳述していく。
 水害訴訟は,堤防やダムの設置・管理について国家に瑕疵があったことを理由に,地域住民が国家に対して生命や身体,財産等の損害賠償を請求するものである。通常,被害は甚大で,原告は多数となり,また請求額も多額となることから,人びとの大きな注目を集める訴訟となる。河川水害が数において多くより一般的であり,また,それが自然災害に基づくという難しさも有することから,水害訴訟の議論の中心は,河川水害にある。この点,国家賠償法2条が,行政の河川管理に落度があり国民が損害を被った水害の場合に適用されうることは言うまでもない。しかし,道路が人工公物であるのに対して,河川は自然公物であり,特に河川の管理は,道路の管理と比べ,より高い技術が必要とされ困難であるし,また,多くの予算もかかり,社会に及ぼす影響も大きい。そこで,どのような場合に河川管理の瑕疵を認めるべきかについては以前より裁判で争われてきた。本稿では,かかる水害訴訟における国家賠償法2条の働きについて,判例・学説をもとに詳述していく。


[学会発表]

発表者名:藤井正希

題名:マスメディアの情報操作の弊害―国民主権の観点から

発表年月日:2014年10月17日

発表学会名:憲法理論研究会・月例研究会報告

開催場所:東京慈恵会医科大学

概要:マスメディアのもたらす社会的弊害としては,憲法にそって考えるならば,報道被害や冤罪事件等の①人権に対する弊害と,偏向報道や情報操作等の②統治に対する弊害とが挙げられる。この点,①を論じる研究(例えば,犯罪報道と人権)はこれまでに様ざまな場面で議論されてきたが,②を論じる研究(例えば,政治報道と国民主権)は少なくとも憲法学の分野では,あまり議論されてはこなかったように思う。そこで本報告では,後者に焦点をあて,国民主権(前文,一条)の観点からマスメディアの情報操作の弊害を考えていく。“マスメディアの情報操作が国民主権を侵害しているのではないか?”という問題意識が本報告の出発点である。まず国民主権を侵害しかねないマスメディアの情報操作の実例を見て,その問題点を明確にした上で,国民主権実現のためにあるべき憲法的対応を議論していく。その際には,憲法理論を十分に踏まえつつ,弊害防止のための,いわば憲法政策とも言うべき議論が必要となる。


発表者名:藤井正希

題名:マスメディア規制の論理を考える

発表年月日:2014年10月18日

発表学会名:第79回日本公法学会

開催場所:中央大学

概要:現代社会においては,本来,一私人に過ぎなかったマスメディアが巨大化し,権力化した結果,社会的権威として強大な力を持つようになっている(マスメディアの第四権力化)。これは,現代社会が情報に極めて高い価値を認める高度情報社会であり,巨大化したマスメディアに大量の情報が一極集中する傾向にあることが最大の原因であろう。そして,このように第四権力化したマスメディアが,表現の自由を口実にして,かえって①人権の原理としての“基本的人権の尊重”や②統治の原理としての“国民主権”や“三権分立”という憲法の基本原理を阻害しかねない事例が生じつつある。この点,前者の例としては,犯罪報道におけるメディア・スクラムや報道被害,冤罪事件等が,また,後者の例としては,政治,とりわけ選挙報道におけるメディア・イベントや恣意的操作報道,偏向報道等が挙げられる。このように第四権力化したマスメディアが,表現の自由を口実にして,憲法における人権の原理・統治の原理を侵しつつあるのではないか。そこに本報告の問題意識がある。かかるマスメディアのもたらす社会的弊害を防止するために,本報告では,マスメディアの表現の自由を制限する憲法規範的な論理を考えていく。そして,最後に憲法解釈として可能と考えられるいくつかの解決策を提示し,本報告を終える。


発表者名:藤井正希

題名:ノーム・チョムスキーのメディア理論―メディアの最大の犯罪

発表年月日:2015年9月12日

発表学会名:社会情報学会・学会大会

開催場所:明治大学

概要:エイヴラム・ノーム・チョムスキーのメディア論はきわめて興味深いものである。チョムスキーは言語学を専門とする学者であるが,メディアに関する著作も多く,また,積極的に政治的発言も行っている。なかでも,とりわけ強力に批判論を展開する政治的メディア論は個性的かつ過激で有名であり,つねに物議を醸している。アメリカにはマスメディアを悪ととらえる理論が古くから存在していたが,チョムスキー理論は現代におけるその代表と言えよう。本稿では,かかるチョムスキーのメディア論の理論的妥当性を検討していく。具体的には,①民主主義についての逆説的見解,②傍観者民主主義,③合意の捏造,④プロパガンダ・モデル,そしてそれを前提にして,チョムスキーの言う“メディアの最大の犯罪”を考察していく。その考察を通じて,マスメディアの理解に資する何かを導き出したいと考える。


[その他]

研究発表論文

著者名:藤井正希

題名:ノーム・チョムスキーのメディア理論―メディアの最大の犯罪

発表年月日:2015年9月

掲載誌名:社会情報学会・研究発表論文集

頁:16-19

概要:同上


[社会的活動(委員会等)]

題名:税関研修所講師

開催年:2015年

主催者:財務省


題名:通関業法に基づく審査委員

開催年:2015年

主催者:東京税関


題名:情報公開・個人情報保護救済委員会委員

開催年:2015年

主催者:東京都北区



[社会的活動(公開講座等)]

題名:市民のための憲法講座 ~ 終戦記念日に憲法を学ぶ

開催年:2015年8月

主催者:前橋商工会議所


題名:市民のための憲法講座 ~ 人権の基礎を学ぶ

開催年:2015年9月

主催者:群馬大学

前田泰(民法研究室)

[学術論文等]

著者名:前田泰

題名:親族編規定の強行法規性

発行年月日(西暦):2014年2月1日

掲載誌名:法律時報

巻数:86巻2号

頁:102-106

概要:民法親族編の規定から,強行法規性が強いと思われる規定として,婚姻の届出要件規定と嫡出推定・否認制度を取り上げて,それぞれの強行法規性の内容を検討した。その結果,いずれにおいても,解釈論で強行法規性が緩和されてきたか,または,理論により強行法規に反する帰結が認められてきたことを確認し,親族編規定の強行法規性には疑念があることを明らかにした。さらに,このことから,理論においては強行法規に反する結論を導きうる基礎を明らかにすることが,そして解釈論においては強行法規性の緩和を正当化しうる解釈技術の方法論的な検討が課題になることを指摘した。


著者名:前田泰

題名:婚外父子関係

発行年月日(西暦):2014年11月20日

掲載誌名:戸籍時報

巻数:719号

頁:17-23

概要:日本家族<社会と法>学会内に設けられた家族法改正研究会の第7回シンポジウム「実親子関係について~基本的な考え方といくつかの提案」(2014年7月6日,早稲田大学)における報告内容である。シンポジウムを担当した親子法グループの3人の報告者の1人として,認知に関係する領域を担当し,改正案の内容,その理由および検討経緯を記述した。


著者名:前田泰

題名:遺言能力

発行年月日(西暦):2014年12月14日

掲載図書名:村田彰先生還暦記念論集『現代法と法システム』酒井書店

頁:133-159

概要:遺言に関する意思能力の判定基準を検討した。成年者(高齢者)が作成した遺言の効力が,意思無能力を理由に争われた82件の判決から,平成10年以後の33件を取り上げて検討し,さらにその中で意思能力の判定が微妙であり,一審と二審とで結論が分かれた3件を取り上げて,詳細に検討した。その結果,当事者の障害内容の程度から即断すべきではなく,障害者の置かれた状況を含めた法的評価を重視すべきであるという私見の視座から高く評価すべき判決が存在することを明らかにした。


[判例研究]

著者名:前田泰

題名:実父母の同意なき特別養子縁組申立ての可否

発行年月日(西暦):2014年7月15日

掲載誌名:私法判例リマークス

巻数:49号

頁:54-57

概要:特別養子縁組に対する父母の同意を不要とする事由の存在を否定した,平成25年5月27日東京高決の判例研究である。契約構成を採用した普通養子縁組とは異なり,家裁の審判により成立する特別養子縁組は子の利益のための制度であり,この観点から本研究では,817条の6で要求される父母の同意の意義と,同意不要事由の判定基準を検討した。
 さらに,実父母との関係を断絶する特別養子について父母の同意を不要とする可能性を認めながら,断絶しない普通養子ではその余地がない現行法は,要件と効果の点でバランス失していることを指摘し,問題にすべきは普通養子縁組の代諾構成であり,これを代理と解すべきでないことを主張した。


著者名:前田泰

題名:認知者が血縁上の父子関係がないことを理由に認知の無効を主張することの可否

発行年月日(西暦):2014年5月1日

掲載誌名:民商法雑誌

巻数:150巻2号

頁:131-152

概要:平成26年1月14日最高裁第三小法廷判決の判例研究である。この直後に出た平成26年3月28日最高裁第二小法廷判決との比較,関連規定の立法趣旨,従来の学説および判例を整理して,認知制度と認知無効に関する私見の視座から本判決を評価した。
 具体的には,次の通り。私見では,実親子関係における血縁主義は子の利益に適することにその基礎と限界があり,認知無効の可否も子の利益との関係で判定すべきであるが,血縁の有無だけで認知無効を判定する判例実務を前提とするならば,子の利益を確保するために認知無効訴訟における認知者の原告適格を否定すべきである。これを肯定する本判決には反対する。さらに,本判決は,「藁の上からの養子」を権利濫用法理で保護し,「推定の及ばない子」の範囲で外観説維持する近時の最高裁の立場と比較して,過度に血縁主義に傾斜している。

松宮広和(情報法研究室)

[学術論文]

(1)

著者名 : 松宮広和

題名 : 独占禁止法24条に基づく接続拒否差止請求訴訟において電気通信事業法が別途定める総務大臣による認可を受けていないことを理由として請求が棄却・却下された事件-ソフトバンク対NTT東西事件

単著

発行年月日 : 2014年11月25日

掲載紙名 : ジュリスト

号数 : 2014年12月号(第1474号)

頁 : 115-118頁

出版社名 : 有斐閣

要旨 : 本稿は,2014年9月20日に立教大学池袋キャンパスで開催された経済法判例研究会(2014年9月例会)において報告を担当した判例研究に基づく。規制当局による事業法規制と競争当局による独禁法規制との関係は,特に電気通信事業を含む公益事業規制との関係で,長く議論を提起してきた。本件で,原告ソフトバンクテレコム株式会社及びソフトバンクBB株式会社は,被告東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社に対して,光ファイバ設備を用いた戸建て住宅向けのFTTHサービスの提供を目的として,(当該被告が保有する,加入者光回線設備の一部を構成する1つの光信号主端末回線収容装置(='Optical Subscriber Unit'/OSU)を複数の事業者で共用することを前提とする)光ファイバの1分岐端末回線単位での接続を求める,独占禁止法24条に基づく接続拒否差止請求訴訟を提起した。しかし,東京地方裁判所は,電気通信事業法32条が別途定める総務大臣による認可を受けていないこと等を理由として,当該請求を棄却・却下した。本稿は,この所謂「ソフトバンク対NTT東西事件」(東京地方裁判所平成26年6月19日判決 平成23年(ワ)第32660号 独占禁止法第24条に基づく差止請求事件 LEX/DB25504287)に対する考察を行ったものである。


(2)

著者名 : 松宮広和

題名 : インターネットの自由及び開放性の維持を目的とする2010年のFCCの判断をめぐる議論について-Verizon v. FCCにおけるアメリカ合衆国連邦控訴裁判所判決を中心に- (1)

単著

掲載紙名 : 群馬大学社会情報学部研究論集

巻数 : 第22巻

号数 :

発行年月日 : 2015年2月27日

頁 : 77-107頁

要旨 アメリカ合衆国のブロードバンド政策においては,近時の合衆国最高裁判所判決及びFCCによる規制緩和によって,ケーブル・モデム・サービスを含むブロードバンド・インターネット・アクセス・サービスが,連邦通信法第I編のもとで,より緩やかな規制にもとづく情報サービスとして規制されることが確定した。しかし,「ネットワークの中立性」(='network neutrality')をめぐる議論の活発化とともに,FCCが,情報サービスのプロバイダーに対して,如何なる法的根拠のもとで,如何なる範囲で規制権限を行使し得るかという問題が,顕在化してきた。2010年12月23日,FCCは,当該問題に関連する初めての規則制定である,「インターネットの自由及び開放性の維持を目的とする2010年のFCCの判断」(一般に「オープン・インターネット命令」(='FCC Open Internet Order 2010'))を公表した。しかし,2014年1月14日,コロンビア特別区連邦控訴裁判所は,(1) 1996年電気通信法§ 706(すなわち,47 U.S.C. § 1302)が,FCCに,ブロードバンド・インフラストラクチャーの当該提供を促進する手段を制定する積極的な権能を与えたこと,(2) FCCが,それにブロードバンド・プロバイダーのインターネットの通信量/トラフィックの取扱いを支配する規則を公布する能力を与える目的で,当該条項を合理的に解釈したこと,及び(3) それらの規則が,(特にエッジ・プロバイダー及び消費者によって実現される)革新の高潔なサイクル/循環を維持し,かつ,容易なものとするという,争点となっている当該特定の規則のための当該正当化は,合理的であり,かつ,実質的証拠によって支持されたこと,を認定した。しかし,本件裁判所は,(4) FCCは,明示的な制定法上の義務に違反する要求を課すことは出来なかったこと,すなわち,(5) FCCが,ブロードバンド・プロバイダーを,それらがコモン・キャリアの取扱いを免除される様なやり方で分類したが故に,連邦通信法は,それらをその様に規制することを明示的に禁止したこと,を指摘して,(6) FCCが,当該命令の「非差別」(='anti-discrimination')及び「ブロッキング/遮断の禁止」(='anti-blocking')の規則が,本来的にコモン・キャリアの義務を課さないことを示さなかったことを理由として,それらを,取り消した(一方,「開示」(='disclosure')の規則は維持された)。本稿では,当該判決に関連して,(1) 当該判決以後の,賛成及び反対の両方を含むネットワークの中立性の議論の論者,事業者,連邦議会及びFCC等の動向,(2) 前述したFCCの権能の根拠を1996年電気通信法§ 706に求めること,及びブロードバンド・サービスを,連邦通信法第II編の下で規制される電気通信サービスとして再分類することが提起する議論,並びに(3) 将来における課題(すなわち,情報通信産業で,コンテンツ,アプリケーション,サービス及び機器等の多岐に渡る第三者が提供する補完的な商品及び/又は役務を巻き込んで成長していく「エコシステム/生態系」(='ecosystem')が形成され,それらの提供の「鍵となる」「プラットフォーム」(='platform')によって,競争が引き起こされるという今日の状況における,ブロードバンド・サービスの「伝送」(='transmission')の構成要素に対する規制に限定されない,レイヤー型規制の導入(及び/又はアプリケーション層(及び/又はより上位)における規制を可能とする権能の確保)による,より広い情報サービス規制の必要性),を中心に検討等を行った。


(3)

著者名 : 松宮広和

題名 : インターネットの自由及び開放性の維持を目的とする2010年のFCCの判断をめぐる議論について-Verizon v. FCCにおけるアメリカ合衆国連邦控訴裁判所判決を中心に- (2・完)

単著

掲載紙名 : 群馬大学社会情報学部研究論集

巻数 : 第22巻

号数 :

発行年月日 : 2015年2月27日

頁 : 109-132頁

要旨 : アメリカ合衆国のブロードバンド政策においては,近時の合衆国最高裁判所判決及びFCCによる規制緩和によって,ケーブル・モデム・サービスを含むブロードバンド・インターネット・アクセス・サービスが,連邦通信法第I編のもとで,より緩やかな規制にもとづく情報サービスとして規制されることが確定した。しかし,「ネットワークの中立性」(='network neutrality')をめぐる議論の活発化とともに,FCCが,情報サービスのプロバイダーに対して,如何なる法的根拠のもとで,如何なる範囲で規制権限を行使し得るかという問題が,顕在化してきた。2010年12月23日,FCCは,当該問題に関連する初めての規則制定である,「インターネットの自由及び開放性の維持を目的とする2010年のFCCの判断」(一般に「オープン・インターネット命令」(='FCC Open Internet Order 2010'))を公表した。しかし,2014年1月14日,コロンビア特別区連邦控訴裁判所は,(1) 1996年電気通信法§ 706(すなわち,47 U.S.C. § 1302)が,FCCに,ブロードバンド・インフラストラクチャーの当該提供を促進する手段を制定する積極的な権能を与えたこと,(2) FCCが,それにブロードバンド・プロバイダーのインターネットの通信量/トラフィックの取扱いを支配する規則を公布する能力を与える目的で,当該条項を合理的に解釈したこと,及び(3) それらの規則が,(特にエッジ・プロバイダー及び消費者によって実現される)革新の高潔なサイクル/循環を維持し,かつ,容易なものとするという,争点となっている当該特定の規則のための当該正当化は,合理的であり,かつ,実質的証拠によって支持されたこと,を認定した。しかし,本件裁判所は,(4) FCCは,明示的な制定法上の義務に違反する要求を課すことは出来なかったこと,すなわち,(5) FCCが,ブロードバンド・プロバイダーを,それらがコモン・キャリアの取扱いを免除される様なやり方で分類したが故に,連邦通信法は,それらをその様に規制することを明示的に禁止したこと,を指摘して,(6) FCCが,当該命令の「非差別」(='anti-discrimination')及び「ブロッキング/遮断の禁止」(='anti-blocking')の規則が,本来的にコモン・キャリアの義務を課さないことを示さなかったことを理由として,それらを,取り消した(一方,「開示」(='disclosure')の規則は維持された)。本稿では,当該判決に関連して,(1) 当該判決以後の,賛成及び反対の両方を含むネットワークの中立性の議論の論者,事業者,連邦議会及びFCC等の動向,(2) 前述したFCCの権能の根拠を1996年電気通信法§ 706に求めること,及びブロードバンド・サービスを,連邦通信法第II編の下で規制される電気通信サービスとして再分類することが提起する議論,並びに(3) 将来における課題(すなわち,情報通信産業で,コンテンツ,アプリケーション,サービス及び機器等の多岐に渡る第三者が提供する補完的な商品及び/又は役務を巻き込んで成長していく「エコシステム/生態系」(='ecosystem')が形成され,それらの提供の「鍵となる」「プラットフォーム」(='platform')によって,競争が引き起こされるという今日の状況における,ブロードバンド・サービスの「伝送」(='transmission')の構成要素に対する規制に限定されない,レイヤー型規制の導入(及び/又はアプリケーション層(及び/又はより上位)における規制を可能とする権能の確保)による,より広い情報サービス規制の必要性),を中心に検討等を行った。


[翻訳・編集等]

(1)

研究代表者名 : 松宮広和

報告書 : 科研研究題目 「持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究 」(基盤研究(C))(平成26年度)報告書

単独

報告年月日 : 2015年4月

研究支援者 : 独立行政法人日本学術振興会

研究期間 : 平成24(2012)年4月-

概要 : 上記の科研研究に,研究代表者として従事している。本研究は,持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究を行うことをその目的とする。具体的には,過去約20年間 ICTの利活用で比類無い成功を収めてきた米国を参考に,(1) 通信インフラストラクチャーの更なる整備・更新,(2) アプリケーション層における競争環境の整備,(3) クラウド化及びスマート・グリッド,並びに(4) 公共サービスに関連するICTの利活用,の4つを中心的課題として,前記の目的に貢献し得る成果の獲得を目指す。本研究は,現在の我が国の最大の政策的課題(の1つ)である持続可能な経済成長の実現に,ICTが果たし得る役割についての有用な示唆を提供し得る点に,その意義を有する。平成26(2014)年度は,当該研究題目に関連する研究に従事し,その研究成果の一部を公表した。本報告書は,これらの研究の実施状況について記載したものである。


[研究活動 その他]

(1)

研究代表者名 : 松宮広和

科研研究題目 : 「持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究 」(基盤研究(C))(平成24年度-27年度)

単独

研究支援者 : 独立行政法人日本学術振興会

研究期間 : 平成24(2012)年4月-

概要 : 上記の科研研究に,研究代表者として従事している。本研究は,持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究を行うことをその目的とする。具体的には,過去約20年間 ICTの利活用で比類無い成功を収めてきた米国を参考に,(1) 通信インフラストラクチャーの更なる整備・更新,(2) アプリケーション層における競争環境の整備,(3) クラウド化及びスマート・グリッド,並びに(4) 公共サービスに関連するICTの利活用,の4つを中心的課題として,前記の目的に貢献し得る成果の獲得を目指す。本研究は,現在の我が国の最大の政策的課題(の1つ)である持続可能な経済成長の実現に,ICTが果たし得る役割についての有用な示唆を提供し得る点に,その意義を有する。平成26(2014)年度は,当該研究題目に関連する研究に従事してきた。


(2)

研究代表者名 : 松宮広和

研究題目 : 平成25年度公益財団法人電気通信普及財団助成研究題目「モバイル・ブロードバンドの利活用を促進する情報通信政策のあり方に関する研究-周波数利用の更なる拡大及びエコシステム間の事業者間競争を促進する規制的枠組みの構築を中心に- (継続)」(平成26年度)

単独

研究支援者 : 公益財団法人電気通信普及財団

概要 : 公益財団法人電気通信普及財団の支援を得て,平成24年度以降前記の研究に,研究代表者として従事してきた。主たる研究対象は,(1) 既存の周波数オークションに限定されない,周波数利用の更なる拡大を促進する規制的枠組みの構築のあり方,及び(2) モバイル・ブロードバンド利用の発展にともなって顕在化してきたエコシステム間の事業者間競争を促進する規制的枠組みの構築のあり方である。平成26年度は,当該財団による当該研究に対する研究助成が,審査の後に継続された。同年度は,当該研究題目に関連する研究に従事してきた。

社会情報学講座

平田知久(比較社会情報学研究室)

[学会発表]

発表者名:Tomohisa Hirata

題名:What They Learn in/for Internet Cafes: To Rethink about the “Openness” of the Open Society

発表年月日(西暦):2014年11月17日

発表学会名:ELLTA 2014 3rd International Conference: Leadership and Learning in the Asian Century

開催場所: Universiti Sains Malaysia, Penang, Malaysia

概要: 東南アジアで行ってきたインターネットカフェ調査のまとめとして,特にインターネットやPC,およびそれを利用するためのスキルについて,教育という文脈に主眼を置きつつ,これまでの調査結果を再度分析したもの。
 帰結では,K. ポパーが提起した「開かれた社会」にかんする考察を参照しつつ,持たざる人々の未来の選択肢を開くという理念が教育と現代メディアに共通するものであり,その実現に向けての課題を示した。


発表者名:Tomohisa Hirata

題名:How Should Entertainments Be Provided? The Disparity of the Distribution of Internet Cafes in Beijing and Rural-Urban Migrant Workers

発表年月日(西暦):2015年9月25日

発表学会名:ECREA (European Communication Research and Education Association) Media & the City 2015 Conference Urban Media Studies: Concern, Intersections and Challenges

開催場所: University of Zagreb, Zagreb, Croatia

概要:北京(および上海・天津)のインターネットカフェ調査の結果をもとにして,北京の都市拡張と中国の出稼ぎ労働者(農民工)との関係を,インターネットカフェの集中する地域の観点から明らかにした報告。
 報告の結論においては,インターネットカフェにおいて,違法にアップロードされた動画を農民工が娯楽として享受している状況を踏まえた上で,彼ら/彼女らの社会的経済的状況を勘案すれば,そのような選択肢以外に娯楽を享受するすべを持たないことを示し,ここに現代の社会的公正性に関する問題があることを指摘した。