研究紹介(岩井 淳)

研究テーマ:社会的意思決定の支援方法

概要

岩井 淳
岩井 淳
匿名保証型の意思決定支援システム

 参加者に匿名性を保証する型の意思決定支援システムの研究を行う。都市レベルの大規模な意思決定支援を最終目標とする。2003年に投票の匿名性水準をクロード・シャノンの情報理論に対応づけて測定する技法を発表した。2007年に米国でコンピュータネットワークのセキュリティ研究の一つとして同様の技法が提案されるが、岩井の提案はこれに先立つものである。

社会的選択理論の情報学的展開

 アジア人として初めてノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センの社会的選択理論を日本に紹介する活動に力を入れる。この分野でセンの主著とされる『集合的選択と社会的厚生』の訳者の一人でもある。一方で、従来の社会的選択理論が可能と不可能の定性的議論に着目しがちである問題に対し、2012年にシャノンの情報理論の定量性を取り入れる「社会的選択理論の情報学的展開」を提案した。

ストレス理論と意思決定支援研究の接合

 1997年に東京大学医学系研究科教員の山崎喜比古とともにアーロン・アントノフスキーの健康生成理論と中心概念SOC(Sense of Coherence)を日本に紹介する研究を行った。同理論は、ストレス源自体を健康な人生を構成する一つの要因と位置づける特徴がある。また、集団的ストレス対応の視点を含む点で集団的意思決定の問題に関わる。自殺抑止の問題にも関連する。

関連する著作・訳書

  • 今田高俊・舘岡康雄編『シナジー社会論』(東京大学出版会,2014年). 担当箇所:「政策決定のための幸福指標は実現するか」, pp.73-85.
  • 西垣通,伊藤守編著『よくわかる社会情報学』(ミネルヴァ書房,2015年). 担当箇所:第VI章「社会的意思決定と情報」の「1.総論」,「9.厚生主義と非厚生主義の視点」,「10.社会的意思決定と自己組織性」
  • アマルティア・セン著『集合的選択と社会的厚生』(共訳,勁草書房,2000年)
  • アーロン・アントノフスキー著『健康の謎を解く---ストレス対処と健康保持のメカニズム』(共訳,有信堂,2001年)