2020年度

研究活動の要旨(2020年度)

石川真一(環境科学第二研究室)

[学会発表]

1. 

発表者名:Shin-Ichi Ishikawa, Takehiro Ohmori, Kazuaki Masuda

題名:Meta-analysis about effects of land-use history on distribution of Primula sieboldii populations in Gunma Pref.

発表年月日(西暦):2020年3月6日

発表学会名:第37回日本生態学会大会

開催場所:名城大学(愛知県名古屋市)

概要:From 2006, so many metapopulations of Primula sieboldii have been found around halfway up Mt. Haruna, Gunma Pref. The survey in 2019 revealed that some other large metapopulations have been also maintained in the artificial forests (Cryptomeria, Quercus) at the north face of the mountain. This area might be large grassland till the end of the World War II, and after that, plantation was set over. Seed germination experiments showed that over 90% of the mature seeds can potentially germinate, but at most 50% may germinate in the field after 2 times’ winter stratification, and no germination after 2-years’ storage at 4C. Growth experiments reveled that the seedlings can grow (but slow) at over 9% RPPFD and over 10/6C, but cannot at 3% RPPFD. Thus, this plant may not have permanent soil seed bank, and the seelings may grow slowly under grassland and Qurecus forests and might not grow under Cryptomeria. The many large metapopulations may survive over 70 years as “rhizome bank”.


2.

発表者名:馬圓,石川真一

題名:大型ビオトープに自生する植物の種子発芽特性と光・気温への実生の生長反応

発表年月日(西暦):2020年3月5日

発表学会名:第37回日本生態学会大会

開催場所:名城大学(愛知県名古屋市)

概要:自然再生を目的として造成され育成管理されている大型ビオトープ(アドバンテスト・ビオトープ,チノー・ビオトープ,男井戸川調節池)において植物種モニタリング調査を約10-20年実施した。在来種はその半数が交代しながら,それぞれ180種,179種,135種程度で定常状態に達している。各ビオトープにはフジバカマ,コギシギシ,ミゾコウジュなど絶滅危惧種が自生している。これら確認された植物には,ビオトープの目標となるべき周辺の里地・里山の植物が多く含まれることから,植物種多様性が高い豊かな地域の自然が再生されつつある,生物の保護上重要性の高い地域であるといえる。
 発芽実験の結果より,フジバカマ,コギシギシ,ミゾコウジュの最大発芽率はそれぞれ46.7%,52.2%,76.1%となった。永続的な土壌シードバンクを形成しないため,生育中の個体群が何らかの壊滅的な影響を受けると,土壌シードバンクからの再生は望めず,自生個体の保全が最優先と考えられる。ビオトープ周辺に生育し緊急保護が必要な絶滅危惧種チョウジソウ,タチスミレの発芽率は17.8%,57.8%となった。冬を経験することと種皮の不透水性を解除する必要があると思われる。栽培実験の結果,フジバカマ,コギシギシ,ミゾコウジュは相対光量子密度13%以上の光環境でないと良好な生長ができないことから,生育中の個体群の保全には,外来植物の除去や定期的な草刈が必須と考えられる。


3.

発表者名:管雪,石川真一

題名:榛名山の里山地域に自生する数種の在来植物種の種子発芽特性と光・気温への生長反応

発表年月日(西暦):2020年3月6日

発表学会名:第37回日本生態学会大会

開催場所:名城大学(愛知県名古屋市)

群馬県立榛名公園は,湿性草原である沼ノ原で多くの絶滅危惧種を含む43科154種5変種の維管束植物の生育が確認されている(群馬県2003)ホットスポットである。ここに自生する代表的な絶滅危惧種キキョウ,オミナエシについて発芽実験(10/6℃〜30/15℃)・栽培実験(10/6℃〜30/15℃,相対光量子密度3%〜100%)を行い,発芽特性,生長特性の解明を行った。キキョウ,オミナエシは25/13℃区〜30/15℃区で最終発芽率よび相対生長速度が最も高くなったことから,本質的な高山植物ではない可能性がある。実際,この2種は「秋の七草」であり,かつては人里近くに自生していた植物である。キキョウ,オミナエシが群馬県内において,現在の生育地よりも標高の低い場所に分布を拡大できない理由は,発芽実験の結果から,冬季が短いと冷湿処理がかからず発芽しにくくなること,および栽培実験の結果から,良好な生長には9%以上の光環境が必須なため,他の植物との競合により被圧されると生長が阻害されるためと考えられる。以上の結果から,キキョウ,オミナエシが群馬県内で現在の生育地よりも標高の低い場所に分布を拡大することは,生態学的には非常に難しく,樹木の伐採や定期的な草刈りによる自生地の里山的保全や地球温暖化の防止など,人為的な保全対策が不可欠と考えられる。実際,沼ノ原は,戦前および戦後は畑や牧草用草原として利用されてきた。その後次第に利用されなくなり,ミズナラなどの樹木が生長して点在し,ビッチュウミヤコザサが大繁茂し優占している部分が拡大している。当地は観光用に時折下草刈りが行われており,これが原因で多数の植物が生育していると考えられる。


[その他]

講演

1.

開催者名:伊勢崎市三和町キタミソウ保存会

題名:「キタミソウの生態と保全方法」

開催年月日:2020年5月3日

開催場所:三和町堤地区公民館(群馬県伊勢崎市)

概要:2017年より三和町の鯉沼で自生が確認されている絶滅危惧植物種キタミソウを住民が保全するため,キタミソウの生態に関する研究成果と保全方法の解説を行った。参加者約10名。


社会的活動

1.

開催者名:石川真一

題名:ビオトープ育成のための環境科学的調査研究と講習

開催年月日:2020年4月〜10月各月各1回開催

開催場所:群馬県明和町,群馬県館林市,群馬県藤岡市

概要:(株)アドバンテスト群馬R&Dセンター(群馬県明和町),東洋水産㈱関東工場(群馬県館林市)および(株)チノー藤岡事業所内に竣工したビオトープを育成する環境科学的調査研究を行い,これに基づいて講習を行った。(株)アドバンテストとの共同研究「ビオトープの育成管理手法の開発のためのモニタリング調査研究」および(株)チノービオトープ基金により助成を受けた。


2.

開催者名:石川真一(群馬県自然環境調査研究会)

題名:群馬県生物多様性モニタリング調査

開催年月日:2020年4月〜9月(月2回程度)

開催場所:群馬県東吾妻町ほか

概要:群馬県の委託事業である。群馬県野生生物保護条例の制定に伴う生物多様性モニタリング調査として,ホットスポット内での絶滅危惧植物の分布・個体数・生育立地調査,種子採集を担当した。

伊藤賢一(理論社会学研究室)

[学術論文]

著者名:伊藤賢一

題名:高校生におけるネット依存とゲームのヘビーユーザーの実態 ― オンライン調査に基づいて ―

発行年月日:2020年3月1日

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:27

頁:17~30頁

概要:2019年に全国の高校生500名を対象に行ったオンライン調査に基づいて,ネット依存の状況やネットの使用状況,とりわけゲームの使用について報告したもの。ネット依存のスクリーニングテストの結果,26.2%が高リスク使用者,39.8%が潜在的リスク使用者,34.0%が一般使用者と診断された。また,平日3時間以上ゲームをすると回答した「ヘビーユーザー」は,ダウンロードやブレイしているゲームのタイトル数が有意に多く,課金する割合も金額も多く,ゲームへの「没入感」を魅力と感じていることが見出された。(査読あり)


[学会発表]

発表者名:伊藤賢一

題名:高校生におけるネット依存とゲームのヘビーユーザーの実態 ― 探索的web調査に基づいて ―

発表年月日:2019年9月15日

発表学会名:2019年社会情報学会(SSI)学会大会

開催場所:中央大学市ヶ谷田町キャンパス

概要:2019年3月に全国の高校生を対象に実施したweb調査に基づいた報告。WHOはゲーム障害のみを疾病と認めているが,ゲーム以外にも依存しやすいコンテンツはありうること,男子はゲーム,女子はSNSが危険と言われてきたが,女子のゲームヘビーユーザーもある程度のボリュウムで出てくること,一部の高校生は「エナジーシステム」を回避して,課金せずに複数のゲームをプレイしていること確認したこと等を報告した。


[学会発表]

発表者名:伊藤賢一

題名:社会学的属性から見る子どものメディア利用の特徴

発表年月日:2020年9月6日

発表学会名:2020年社会情報学会(SSI)学会大会

開催場所:同志社大学(オンライン開催)

概要:コロナ禍の臨時休校中であった2020年5月に全国の小学生の保護者1,300人を対象として実施したweb調査に基づいて,社会学的属性(性別・学年・居住地)毎のメディア利用の特徴について分析し,メディアの長時間利用によるリスクの発生状況について考察したもので,自ら企画したワークショップ「コロナ禍における子どものメディア利用を考える(WS5)」の一部である。


[その他(分担執筆)]

著者名:伊藤賢一・矢野さと子・本間史祥

題名:Ⅵ章 ネット依存問題~なぜ惹きつけられるのか社会学の視点から考える~

編者名:THInet内容・教材開発委員会

書名:スマホ・ネットの長時間接触による健康被害の実際と対策~ネットリスク啓発者と保護者のテキスト~

頁:54-65

発行年月日:2019年10月1日

ISBN:9784600002459

発行所:ネット健康問題啓発者養成全国連絡協議会テキスト部

概要:ネット依存問題について,ネットアドバイザーなどの啓発者向けに解説したもの。世界保健機関(WHO)によるゲーム障害のガイドラインや具体的な症例,ネット依存が発生する仕組みについて説明すると同時に,ネット依存が発生しやすい社会的背景について考察している。


[その他(講演会での講師)]

講師名:伊藤賢一

講演題目:青少年のネット依存問題 ― 社会学の視点から考える ―

講演会名:太田小児科医会講演会

主催者:太田小児科医会

開催年月日:2019年10月10日

開催場所:太田市医師会大講堂(太田市保健センター3階, 群馬県太田市)

概要:太田小児科医会からの要請で青少年のネット依存問題をテーマに,その現状や発生メカニズム,それを生み出す社会学的背景について,伊藤研究室が実施したアンケート調査のデータを交えながら講演した。


[その他(講習会での講師)]

講師名:伊藤賢一

講習題目:第6分野 ネット依存問題~社会学の視点より~

講習会名:養成協議会第2回公式インストラクター認定講習会

主催者:ネット健康問題啓発者養成全国連絡協議会

開催年月日:2020年1月12日

開催場所:さいたま共催会館(埼玉県さいたま市浦和区)

概要:ネット健康問題啓発者養成全国連絡協議会主催の第2回公式インストラクター認定講習会の講師を務めた。ネット依存について,中学生を想定した啓発の模擬授業を行い,その後で解説の講義を行った。受講者は19名。


[その他(講習会での講師)]

講師名:伊藤賢一

講習題目:ネット・ゲーム依存症とは

講習会名:群馬教室 あなたの身近にある依存症

主催者:NPO法人全国薬物依存症者家族会連合会

共済者:群馬ダルク

開催年月日:2020年1月13日

開催場所:高崎市総合保健センター(群馬県高崎市)

概要:令和元年度文部科学省委託事業・依存症予防教室推進事業の一環として実施された「新しい依存症予防教室」に講師・パネリストとして参加したもの。ネット依存,ゲーム依存の定義,症例,社会学的背景と予防法について報告し,その後のトークセッションにも登壇した。参加者はおよそ80名。


[その他(講演会での講師)]

講師名:伊藤賢一

講演題目:青少年のネット・ゲーム依存問題 ~なぜ惹きつけられるのか,社会学の視点から考える~

講演会名:令和2年度館林市青少年育成運動推進大会

主催者:館林市,館林市教育委員会,館林市青少年問題協議会

開催年月日:2020年11月7日

開催場所:館林市文化会館小ホール(群馬県館林市)

概要:館林市教育委員会生涯学習課からの要請で青少年のネット依存問題をテーマに,その現状や発生メカニズム,それを生み出す社会学的背景について,伊藤研究室が実施したアンケート調査のデータを交えながら講演した。参加者はおよそ70名。


[その他(研修会での講師)]

講師名:伊藤賢一

講演題目:青少年のネット・ゲーム依存問題 ~なぜ惹きつけられるのか,社会学の視点から考える~

研修会名:令和2年度伊勢崎市PTA連合会 理事・女性委員合同研修会

主催者:伊勢崎市教育委員会,伊勢崎市PTA連合会

開催年月日:2020年11月11日

開催場所:伊勢崎市役所5階第1研修室(群馬県伊勢崎市)

概要:伊勢崎市教育委員会生涯学習課からの要請で青少年のネット依存問題をテーマに,その現状や発生メカニズム,それを生み出す社会学的背景について,伊藤研究室が実施したアンケート調査のデータを交えながら講演した。参加者はおよそ50名。


[その他(市民講座の講師)]

講師名:伊藤賢一

講習題目:平成を振り返る 消費社会/情報社会から読み解く平成

講習会名:東村山市市民講座

主催者:東村山市教育委員会

開催年月日:2020年2月20日

開催場所:東村山市中央公民館(東京都東村山市)

概要:東村山市教育委員会からの依頼で,市民講座の講師を務めた。平成の30年がどのような時代だったのか社会学の視点から議論する3回連続講座の1回目を担当したもの。消費社会・情報社会という切り口から,どのような社会変動が起こったのかを論じた。受講者は19名。


[その他(教員免許状更新講習での講師)]

講師名:伊藤賢一,大谷良光,成田弘子

講習題目:ネットいじめの学校での指導とネット・ゲーム依存(選択領域)

開催年月日:2020年8月23日

開催場所:群馬大学共同教育学部

概要:大谷良光氏(青森大学特任教授・弘前大学教育学部元教授),成田弘子氏(白梅学園大学前特任教授)と共同で,現職教員を対象とした教員免許状更新講習を実施した。いじめ・ネットいじめやネット依存・ゲーム依存問題の発生状況や構造について調査データを交えながら解説し,映像を含む各種教材や授業案を示して参加者と共に学校での指導のあり方を考える講習。45名が受講した。


[その他(教員免許状更新講習での講師)]

講師名:伊藤賢一,大谷良光,成田弘子

講習題目:ネット長時間接触による心と脳・体の発達阻害と学校での指導(選択領域)

開催年月日:2020年8月24日

開催場所:群馬大学共同教育学部

概要:上記と同様,大谷良光氏,成田弘子氏と共同で,現職教員を対象とした教員免許状更新講習を実施した。児童生徒のスマートフォンやタブレット端末への長時間接触が問題視される中,発達阻害・健康被害の事実・現象とネット利用との相関関連,エビデンスを分析し,参加者と共に学校での指導のあり方を考える講習。47名が受講した。


[その他(会議参加)]

参加者名:伊藤賢一

会議名:令和元年度前橋市ケータイ・インターネット問題及び高度情報化社会への対応についての対策会議

主催:前橋市教育委員会

日時:2019年11月27日(第1回),2020年2月26日(第2回)

場所:前橋市総合福祉会館

概要:前橋市教育委員会の依頼により有識者として標記の会議に参加した。学校への携帯電話・スマートフォンの持込みに関するガイドライン策定について,前橋市としてどのように考えるかを協議した。


[その他(書評)]

執筆者名:伊藤賢一

題名:整理された社会学史の地図を描く 予想外の指摘と刺激に満ちた社会学の「講義」

掲載紙名:週刊読書人

掲載年月日:2019年9月13日(第3306号)

概要:編集部からの依頼による書評。大澤真幸著『社会学史』(講談社現代新書, 2019年)について,その概要を一般向けに解説した。


[その他(テレビ番組での解説)]

解説者名:伊藤賢一

題名:ズームeye 小学生のオンライン学習

放送局名:群馬テレビ

番組名:ニュースeye 8

放送年月日:2020年6月4日

概要:2020年5月に実施した小学生の保護者を対象とした「コロナ臨時休校中の小学生メディア接触実態調査」で明らかになった,休校期間中の小学生のメディア接触の実態について解説し,とくに長時間のオンライン学習が生徒たちの疲労度を高める可能性について注意を喚起した。

大野富彦(経営学研究室)

[学会発表]

発表者名:大野富彦

題名:DMOと地域との関わりについての考察

-コレクティブ・インパクトを手掛かりにした「編集者」概念の導出-

発表年月日(西暦):2020年1月12日

発表学会名:日本観光経営学会 第1回年次大会

開催場所:阪南大学 南キャンパス

概要:本稿は,DMOが観光地をどのようにマネジメントしていけばよいかの参考になるひとつのモデルを,「コレクティブ・インパクト」を手掛かりに検討する。本稿では,まず,コレクティブ・インパクトと政府が想定するDMOを地域特性から批判的に検討し,DMOの実際的な姿を「編集者」として示す。無数ともいえる「小さな社会」が,時には重なりながら活動する地域では,DMOは,ステークホルダーとのゆるやかな連携によって地域を編み込み観光コンテンツ等をつくっていくのである。さらに,2つのDMO(雪国観光圏と秩父地域おもてなし観光公社)の検討から「編集者としてのDMOの編集プロセス」を提示する。DMOの目的はカタチをつくることではなく,「将来への投資」と「プロセス重視」が求められる。そして,DMOの取り得る編集プロセスには追求すべき,または,馴染むやり方があるのである。


[その他:雑誌記事]

著者名:大野富彦

題名:地域×観光×経営で考える経営講座

発表年月日(西暦):2020年7,8,9月号

掲載誌名:ぐんま経済

巻数:No.445(7月号),No.446(8月号),No.447(9月号)

頁:No.445(7月号)28-29頁,No.446(8月号)32-33頁,No.447(9月号)28-29頁

概要:全3回にわたりDMO(Destination Management/Marketing Organization)を説明したもの。1回目は国が推進するDMOについて,2回目はDMOの実際事例として,雪国観光圏と秩父地域おもてなし観光公社を取り上げ,両DMOから学ぶべきことを説明した。そして,3回目にDMOを4つのタイプの「編集者」-つながりのない編集者を「悲しい編集者」,つながりの深い編集者を「こだわり編集者」,つながりの広い編集者を「顔の広い編集者」,つながりの広い・深い編集者を「頼れる編集者」-としてとらえ,DMOのステークホルダーへのアプローチ方法を提示した。


[その他:社会活動]

発表者名:大野富彦

題名:働きやすさと働きがいの経営学-サービス業を中心に-

発表年月日(西暦):2020年9月,10月

発表会名:株式会社フロムページ 夢ナビライブ(東京会場)

開催場所:群馬大学からオンラインにて実施

概要:高校生を対象とした進学イベント。事前に講義を録画し,一定期間ライブ配信したもの。その後,「質問対応・研究室訪問」として受講者(高校生)の質問等にオンラインで対応した。授業は「働きやすさと働きがいの経営学-サービス業を中心に-」をテーマにし,サービス業(特に,宿泊業)で働く人に焦点をあて,どうすれば前向きになって働くことができるのか,企業の価値創造につなげることができるのかについて,「感情労働」「働きやすさ・働きがい」をキーワードに説明した。

河島基弘(比較文化社会学研究室)

[著書]

著者名:河島基弘

書名:「メディア論で読み解く捕鯨問題」『捕鯨と反捕鯨のあいだに』

発行年月日(西暦):2020年11月 30日

発行所名:臨川書店

頁:221-239

概要:鯨・捕鯨問題を扱った映画やドキュメンタリーなどのメディア作品,環境保護団体による反捕鯨キャンペーンをメディア論の視点で分析した。

北村 純(行政学研究室)

[公開講座(一般向け)]

講演者名:北村 純

題名:映画『ここに泉あり』(1955)の時代(「映像作品と地域活性化」を考える)

年月日(西暦):2019年11月23日(13時~14時30分)

場所:社会情報学部棟611教室

概要:2019年度(平成31年度=令和元年度)群馬大学公開講座(全1回)。平成30年度から始めた公開講座“「映像作品と地域活性化」を考える”シリーズの講義(第2回)。事例として1955年公開の映画『ここに泉あり』が地域社会に及ぼした影響をとりあげ考察した。

吉良知文(ソーシャル数理研究室)

[学術論文]

著者名:Akifumi Kira, Naoyuki Kamiyama, Hirokazu Anai, Hiroaki Iwashita, Kotaro Ohori

題名:On dynamic patrolling security games

発行年月日(西暦):2019年10月

掲載誌名:Journalof the Operations Research Society of Japan

巻数:62-4

頁:152--168

概要:動的な位置関係に応じて決まる利得(総視認度)を,警備員は最大化,侵入者は最小化するゲームを扱う。侵入者の学習能力に応じて3つのケースを議論し,侵入者の最適応答を求める問題は,時空間ネットワーク上の最短経路問題(Case 1・2)とマルコフ決定過程(Case 3)に帰着,Case 1~3のシュタッケルベルグ均衡を求める問題は,それぞれ多項式サイズの混合整数線形計画問題,線形計画問題,双線形計画問題に帰着されることを示した。


著者名:永野清仁, 吉良知文

題名:辞書式最適ネットワークフローによる公平なクラス編成問題へのアプローチ

発行年月日(西暦):2020年3月

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

頁:63--78

概要: 学生の希望を考慮しながら受講クラスを決める割当問題はクラス編成問題とよばれる。本稿では,クラス編成問題に対して,ネットワークフロー理論を応用して,「辞書式最大」と「辞書式最小」の2つのアプローチを適用した。仮想データに対する数値実験をおこない,性能評価をおこなった。


[学会発表]

発表者名:検崎朴郎*, 寺島伸男, 吉良知文

題名:日本パレットレンタルにおける物流ネットワーク最適化の取り組み

開催年月日:2019年9月12日

発表学会名:日本オペレーションズ・リサーチ学会 第44回企業事例交流会

開催場所:東広島芸術文化ホールくらら


発表者名:吉良知文

題名:物流ネットワークの最適化

開催年月日:2020年1月19日

発表学会名:群馬大学 CRANTS 交流会

開催場所:群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センター


発表者名:市原寛之*, 吉良知文, 検崎朴郎, 寺島伸男, 田中元, 山本広高

題名:物流インフラとしてのパレットレンタル網の最適化

開催年月日:2020年8月24日・25日

発表学会名:RIMS 研究集会「数理最適化の理論・アルゴリズム・応用」

開催場所:京都大学数理解析研究所(オンライン開催)


発表者名:吉良知文

題名:クラス編成問題:群馬大学のOR活用と実践

開催年月日:2020年9月14日

発表学会名:日本オペレーションズ・リサーチ学会「動的決定モデルとその応用」研究部会(第7回)・「評価のOR」研究部会(第89回)

開催場所:オンライン開催


[その他]

ホワイト物流を実現する業界横断型共同輸送マッチングサービス事業がNEDO 助成事業に採択されました

https://www.jpr.co.jp/release/20191205_NEDO.pdf

小竹裕人(公共政策研究室)

[学術論文]

著者名:小竹裕人,舩津賢人,天谷賢児,関 庸一,宝田恭之,根津紀久雄,佐羽宏之,登丸貴之,大橋 司,清水宏康,宗村正弘

題名:高齢者居住地域に導入された低速電動バスによる地域の自然発生的な見守り効果

発行年月日(西暦):2019年10月

掲載誌名:社会安全とプライバシー

巻数:vol.3,No.1

頁:pp.15-27

概要:低速電動バスeCOM-8の車室内で地域情報が交わされ,降車後に地域コミュニティーへの情報がさらに拡散される。その過程について情報の拡散モデルSIRを用いたシミュレーションを通じて検討を行った。乗客数が多いほど情報が拡散されその拡散スピードも速いことが確認された。さらに,車室内の情報交換の際に,(1)ユーザー自身がお互いの生存や健康状態をチェックするボランタリーな状況の発生(自発性),(2)見守りを第一目的としていないため自然に発生し持続しやすい体制(持続性),(3)顔を見せなかったユーザーの情報は乗車したユーザーが伝達しあい,間接的な見守り効果が発生する可能性(間接性),が観察され,現在の高コストで一方向的な見守り施策に対してeCOM-8を実装することで低廉で持続可能な見守り施策となる可能性が高いことを明らかにした。



[その他]

著者名:石川みさき,久保田祐加,倉林里帆,小林美聡,長谷川侑希,平井ひなた,干川莉緒,小竹裕人

題名:学生版きりゅうGlasses

発行年月日(西暦):2020年3月

発行:群馬大学・桐生市

概要:群馬大学地域貢献事業,桐生市のシティブランディング事業(桐生市広報課)として,桐生市の地域資源のパンフレットの作成を行った。市の従来のパンフレットと重複しないよう,学生目線で桐生市に通学する学生に対してアピールする媒体として作成した。作成は学生と担当教員。桐生市内の公共施設に配布され,理工学部の学生に配布予定であった(コロナのため配布されたかは不明)。理工学部学生寮のHPに地域紹介の資料として掲載されている。


[その他:研究活動]

・文部科学省イノベーションシステム整備事業,科学技術イノベーションによる地域社会課題解決(DESIGN-i)採択課題「次世代モビリティの導入による持続可能な地方都市モデルの構築」社会課題検討チームリーダーとして研究。(https://www.gunma-u.ac.jp/information/76301

・「トラックによる自動搬送システムに関するニーズ調査」:経済産業省支援事業である商業・サービス競争力強化連携支援事業の受託企業群からの受託研究。


[その他]

上毛新聞,東京新聞などコメント掲載,5件以上

ほか


[社会的活動(委員会等)]

○政策立案にかかわるもの

・総務省行政評価局行政懇談会(委員), 2/4

・群馬県未来創生懇談会検証部会(委員),メール審議

・群馬県第83回国民スポーツ大会・第28回全国障害者スポーツ大会群馬県準備委員会 総務企画専門委員会(委員長),3/4,10/21

・群馬県農畜産物ブランド戦略協議会(会長),メール審議

・連合群馬政策委員会(おもに県民アンケート関係,政策アドバイザー),6/23

○政策評価・行政の効率化にかかわるもの

・安中市行政改革審議会,2/13

・安中市行政改革大綱策定部会(部会長),9/2,9/20,10/21

・群馬県ヘリポート評価委員会(委員長),7/13

○その他

・安中市市庁舎懇談会,6/23,7/29,8/25,9/29,10/26

・群馬県公益認定等審議会委員, 11/6,3/17,8/24

・桐生市まちづくりワークショップ,8/26,9/6,12/14,2/15

坂本和靖(計量経済学研究室)

[学術論文]

著者名:坂本和靖

題名:職業訓練の効果測定における脱落の影響

発行年月日(西暦):2020年1月

掲載誌名:一橋大学経済研究所 『経済研究』岩波書店

巻数:71(1)

頁:10-34

概要:本研究では,「慶應義塾家計パネル調査(2004~2012年)」を用いて,職業訓練が賃金に与える効果に対する,サンプル脱落によるバイアスの影響を分析する。
 これまでの先行研究では,職業訓練の賃金への影響を測定する場合,内生性の問題を中心に,如何にして職業訓練の効果以外のものを統制し,純粋な平均処置効果を測定するかが重要視されてきた。本研究ではその点も考慮しつつ,サンプル脱落がもたらす影響についても検証した。
 職業訓練受講の内生性を考慮したInverse Probability Weighting Regression Adjustment推定(IPWRA, Wooldridge2007; 2010)と,加えて,脱落を考慮した,Inverse Probability Weightを用いて,内生性バイアスと脱落バイアスを推定すると,双方とも過大推計を招いていることが確認された。また両バイアスを比較すると,受講直後は前者の方が大きいが,徐々に後者の方が大きくなった。
 最後に,Lee Bounds推定(Lee 2009)とIPWRA推定とを比較すると,総じて前者の方が大きな値となった。この理由として,Lee Bunds推定における仮定(処置の無作為な割り付け)が満たされないことによる過大推定が考えられる。


[学会発表]

著者名:Kazuyasu Sakamoto and Yoko Morita

題名:The Effects of Gender Identity on Market and Non-market Work of Married Women in Japan

発表年月日(西暦):2020年5月20-21日(論文採択の後, 学会自体が中止)

発表学会名:2020 Annual Meeting of the Society of Economics of the Household

開催場所:Ca' Foscari University of Venice

概要:This study analyzes how gender identity in the so-called “male breadwinner model”—which states that “a man should earn more than his wife”—affects the distribution of labor supply (i.e., market work) and non-market work sharing in married women. More specifically, it assumes that if gender identity is deeply rooted among married women, a wife with high earning capacity may refrain from entering the job market or—even if she is employed—behave in a way that does not deviate from her perceived gender identity by spending more time on non-market (household) work. The objective of this study is to investigate whether wives reduce their labor supply or spends more time on domestic chores in a household where a wife has a higher potential earning capacity than her husband. The analysis utilizes data from 1993 to 2015 of the “Japanese Panel Survey of Consumers (JPSC)” conducted by the Institute for Research on Household Economics.

杉山 学(経営管理研究室)

[学術論文]

著者名:杉山学

題名:DEAとInverted DEAのノンパラメトリック検定を用いたJR本州3社とJR 3島会社の事業活動効率に対する大手私鉄との比較検証

発行年月日:2020年3月2日

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:27

頁:31-47

概要:本研究は,国鉄の分割・民営化によって本当にJRは国鉄時代の事業活動から,大手私鉄並みの事業活動に改善されたかを,データ包絡分析法(DEA)の諸手法を用いて実証的に検証,評価することが目的である。第9報の本論文では総合的な分析・評価の第4段として,著者の第8報と同様の統計学的アプローチであるDEAとInverted DEAのパラメトリック検定とノンパラメトリック検定の両者を適用し,事業活動の4つの効率性(コスト性,生産性,収益性,企業性)に関するDEAとInverted DEAの各効率値の推移結果に対して,JR本州3社と大手私鉄15社とを比較して事業活動に明らかな差があるか否か,そして,JR 3島会社と大手私鉄15社とを比較して事業活動に明らかな差があるか否か,それぞれを統計学的に検証した。そして,国鉄の分割・民営化後のJR旅客6社関して考察を行った。


[その他 (講演)]

講演者名:杉山学

題名:社会的起業とビジネスモデル② ~ 消費者の嗜好傾向を探るには ~

開催年月日:2019年11月21日

講演会名:平成31年度 群馬大学公開講座「社会起業家特論(先端応用情報学特講A・B)」【群馬大学 産学連携・共同研究イノベーションセンター 荒牧分室 共催】

開催場所:群馬大学荒牧キャンパス

概要:平成31年度 群馬大学公開講座として,「社会的起業とビジネスモデル② ~ 消費者の嗜好傾向を探るには ~」という題目の講演を行った。具体的な内容として,マーケティング手法として,コンジョイント分析を用いて,消費者の嗜好傾向を探る例題にて解説を行った。


講演者名:杉山学

題名:ビジネスプラン策定スキル② ~ 事業構造と競争関係のデザイン ~

開催年月日:2019年12月1日

講演会名:平成31年度 群馬大学公開講座「社会起業家特論(先端応用情報学特講A・B)」【群馬大学 産学連携・共同研究イノベーションセンター 荒牧分室 共催】

開催場所:群馬大学荒牧キャンパス

概要:平成31年度 群馬大学公開講座として,「ビジネスプラン策定スキル② ~ 事業構造と競争関係のデザイン ~」という題目の講演を行った。具体的な内容として,ビジネスプラン策定において「決定理論」と「ゲーム理論」の考えを活用した合理的な意思決定を企業活動の例題にて解説を行った。


講演者名:杉山学

題名:ビジネスプラン策定スキル① ~ 消費者の嗜好傾向を探るには ~

開催年月日:2020年10月25日

講演会名:令和2年度 群馬大学公開講座「社会起業家特論(先端応用情報学特講A・B)」【群馬大学 産学連携・共同研究イノベーションセンター 荒牧分室 共催】

開催場所:群馬大学荒牧キャンパス

概要:令和2年度 群馬大学公開講座として,「ビジネスプラン策定スキル① ~ 消費者の嗜好傾向を探るには ~」という題目の講演を行った。具体的な内容として,マーケティング手法として,コンジョイント分析を用いて,消費者の嗜好傾向を探る例題にて解説を行った。


講演者名:杉山学

題名:ビジネスプラン策定スキル② ~ 事業構造と競争関係のデザイン ~

開催年月日:2020年11月29日

講演会名:令和2年度 群馬大学公開講座「社会起業家特論(先端応用情報学特講A・B)」【群馬大学 産学連携・共同研究イノベーションセンター 荒牧分室 共催】

開催場所:群馬大学荒牧キャンパス

概要:令和2年度 群馬大学公開講座として,「ビジネスプラン策定スキル③ ~ 事業構造と競争関係のデザイン ~」という題目の講演を行った。具体的な内容として,ビジネスプラン策定において「決定理論」と「ゲーム理論」の考えを活用した合理的な意思決定を企業活動の例題にて解説を行った。

高木 理(医療情報学研究室)

[学術論文]

著者名:Osamu Takaki, Ichiro Suzuta, Kota Torikai, Yuichiro Saito, Tsuyoshi Kato, Tetsuya Sato, Hiroki Endo, Yoshifumi Atarashi

題名:Evaluation of a Network Switch with Whitelist-Based Packet Monitoring and Control in Hospital Networks

掲載誌名:Advanced Engineering Forum

概要:本論文では,アラクサラネットワークス株式会社が開発したホワイトリスト機能付きネットワークスイッチ(WLS)の有用性を実証している。「ホワイトリスト機能」とは,ネットワーク上のパケットに対して,学習モードにおいて正当なパケットを記録し,検証モードにおいて記録されたパケット以外のパケットを不正パケットとして通知および制御を行う機能を意味する。工場等の閉じたネットワーク環境ではパケットの種類が限られているためWLSは有効に機能することは知られていたが,病院のような複雑なコンピュータ環境においてWLSが機能するがどうかは検証されていなかった。そこで,実在の大学病院のネットワーク環境, 特に,ナースコールシステムのネットワーク環境への導入実験と,仮想上のナースコールシステム環境におけるWLSの評価実験を行った。その結果,比較的パケットの種類が限られていたナースコールシステム環境に対しては,WLSがある程度は有効に機能することが確かめられたと共に,実運用上のいくつかの課題点が明らかになった。


[その他]

(1)公開講座・講演会

なし


(2)地域貢献活動

講師名:高木 理

題名:データ化社会における安心・安全の保証

年月日(西暦):2019年3月21日

開催:安全・安心まちづくりセミナー IN 桐生 2020

場所:群馬大学桐生キャンパス

概要:一般市民向けのセミナーとして,病院内の医療安全の向上に向けた,病院情報システムや院内ネットワークシステム上のデータの分析,機械学習に基づく無線LANデバイスの位置推定,様々なデータを紐づけて問題事象の発生傾向を洗い出すためのフレームワークを紹介し,さらに,社会全体におけるデータ利用に関する課題点について議論した。


(3)学外の審議会・委員会等への参画

なし


(4)学外の各種調査・研究会等への参画

4-1: International Conference on Technology and Social Science 2020 (ICTSS 2020), Invited Papers Session 13 (Title of the session: “Technologies and issues for social digitalization”), セッションオーガナイザー。

概要:国際会議ICTSS 2020における1つセッションのオーガナイザーとして,当該セッションへの投稿論文の審査および取りまとめ役を務めた。(2020年12月2~4日に開催される国際会議の準備に関する活動を2020年11月までの活動として記載した。)


(5)国際協力

なし(国際会議における査読を「国際協力」と見なすのであれば,2019年9月~2020年11月の期間内は2件)


(6)産業支援

6-2: アラクサラネットワークス株式会社との共同研究,“医療情報システムネットワーク連携に関する研究”,研究期間:2020年6月~現在。

概要:群馬大学医学部附属病院の院内ネットワークの安全性の向上に向けた研究を,アラクサラネットワークス株式会社および群馬大学医学部附属病院システム統合センターの教員メンバー(3人)と共同して行っている。なお,今年度は,システム統合センタ―の鳥飼副センター長が研究代表者を務めている。

鳶島修治(計量社会学研究室)

[学術論文]

著者名:鳶島修治

題名:母親の教育期待の規定要因-学校平均学力と学校の社会経済的特性に着目して-

発行年月日(西暦):2020年2月21日

掲載誌名:社会学研究

巻数:第104号

頁:201-225

概要:本稿では,2015年に国際教育到達度評価学会(IEA)が実施した「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」の日本調査データを用いて,母親の子ども(小学4年生)に対する教育期待の規定要因について検討した。


著者名:鳶島修治

題名:インターネットでのニュース接触が犯罪不安に与える影響

発行年月日(西暦):2020年7月1日

掲載誌名:社会情報学

巻数:第8巻第3号

頁:115-128

概要:本稿では,2014年に日工組社会安全研究財団が実施した「第5回社会生活における不安感に関するアンケート(犯罪に対する不安感に関する調査)」のデータを用いて,インターネットでのニュース接触が犯罪不安に与える影響について検討した。


著者名:Shuji Tobishima

題名:Gender and Socioeconomic Differences in Adolescents’ Perceived Information and Communication Technology (ICT) Competencies

発行年月日(西暦):2020年9月

掲載誌名:Journal of Socio-Informatics

巻数:Vol.13, No.1

頁:1-13

概要:本稿では,2015年にOECDが実施した国際学力調査PISAの日本調査データを用いて,高校生のデジタルスキルに関する男女間の格差および出身階層間の格差について検討した。


著者名:鳶島修治

題名:中高生の教育期待形成における父母の期待の相対的重要性

発行年月日(西暦):2020年11月30日

掲載誌名:教育社会学研究

巻数:第107集

頁:111-132

概要:本稿では,2012年にNHK放送文化研究所が実施した「NHK中学生・高校生の生活と意識調査」のデータを用いて,中高生の教育期待形成における父母の期待の相対的重要性について検討した。



[学会発表]

発表者名:鳶島修治

題名:中高生の教育期待形成における父母の期待の影響

発表年月日(西暦):2019年9月12日

発表学会名:日本教育社会学会第71回大会

開催場所:大正大学

概要:本報告では,2012年にNHK放送文化研究所が実施した「NHK中学生・高校生の生活と意識調査」のデータを用いて,中高生の教育期待形成における父母の期待の相対的重要性について検討した。

永野清仁(数理情報学研究室)

[学術論文]

著者名:永野清仁

題名:テキストデータ分析のための劣モジュラ最適化と整数最適化

発行年月日(西暦):2020年3月2日

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:27

頁:49-62

概要:劣モジュラ関数は離散版の凸関数に対応する関数であり,グラフ理論,ゲーム理論,機械学習など幅広い分野において現れる関数である。本稿では,劣モジュラ最適化のテキスト分析への応用について議論する。さらに計算機実験を通じて,劣モジュラ最大化問題に対する近似解法と整数最適化に基づく厳密解法の性能比較を行う。


著者名:永野清仁,吉良知文

題名:辞書式最適ネットワークフローによる公平なクラス編成問題へのアプロ ーチ

発行年月日(西暦):2020年3月2日

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:27

頁:63-78

概要:線形計画問題の重要なサブクラスである,ネットワークフロー問題は,計算の側面から扱いやすいというだけではなく,幅広い分野の実問題に対し適用可能な最適化問題である。クラス編成問題もまた,ネットワークフローアルゴリズムが応用可能なリサーチ・トピックである。本稿では,辞書式最適なクラス編成の概念を用いて,ネットワークフローアルゴリズムに基づく公平なクラス編成手法を提案し,その性能を計算機実験によって評価する。

林 克彦(数理言語学研究室)

[学術論文]

著者名:Katsuhiko Hayashi, Koki Kishimoto, Masashi Shimbo

題名:A Greedy Bit-flip Training Algorithm for Binarized Knowledge Graph Embeddings

発行年月日(西暦):2020年11月16日

掲載誌名:Findings of the Association for Computational Linguistics: EMNLP2020

巻数:6

頁:109-114

概要:テンソルデータに対する低次元分解モデルをバイナリ圧縮するための手法,および,その学習方法を提案した。計算機科学領域における人工知能・自然言語処理分野の最難関査読あり国際会議EMNLPに採録された。AMiner(aminer.org/ranks/conf)によるComputer Science分野のConference RankにおいてEMNLPは514件中13位というハイレベルなランク評価を得ている。また,QualisやERAのような指標でもEMNLPはそれぞれA1とAという最高評価を得ている。当該分野ではトップカンファレンスと呼ばれる国際会議の採録成果が高く評価されており,ここでは学術性の高い論文として扱う。


[学会発表]

発表者名:Katsuhiko Hayashi (他27名共著であり貢献の順序は不同)

題名:A System for Worldwide COVID-19 Information Aggregation

発表年月日(西暦):2020年11月20日

発表学会名:NLP COVID-19 Workshop (Part2)(査読あり)

開催場所:オンライン開催(https://www.nlpcovid19workshop.org/emnlp2020/schedule/

概要:COVID-19に関する世界中のニュースを集約し,日本語と英語で掲載するサイトを構築した。

サイトのURLはhttps://lotus.kuee.kyoto-u.ac.jp/NLPforCOVID-19/en/

発表を行ったワークショップは査読ありであるため,誰でも発表できる訳ではない。

平田知久(比較社会情報学研究室)

[学術論文]

著者名:Tomohisa Hirata & Koen Leurs

論文名:Media, Migration, and Nationalism: Introduction to the Special Collection

発行年月日(西暦):2020年7月1日

発行所名:University of California Press

概要:学術誌『Global Perspectives』の特別号「Media, Migration, and Nationalism」のイントロダクションとして出版された共著論文。論文では,特別号に所収の論文を,四つの絵画の解釈を用いながら通覧的に示し,移民のメディア利用,および移民のメディア表象,さらにCOVID-19やBlackLivesMatterなどの社会情勢を経由しつつ引き起こされる現代のナショナリズム的(排外的)応答について批判的に検討した上で,これらの状況を分析し調停する概念として,黒人フェミニズム研究において提起されたインターセクショナリティを参照した。(査読あり)


[学会発表]

発表者名:平田知久

題名:計算社会科学と社会情報学――その実践と教育

発表年月日(西暦):2019年9月13日

発表学会名:2019年 社会情報学会(SSI)学会大会 プレカンファレンス

開催場所: 中央大学

概要:スマートフォンなどの携帯インターネット接続端末が世界の人々に行きわたりつつある中で注目されつつある「計算社会科学(Computational Social Science)」について,この学問領域における第一人者である東北大学准教授の瀧川裕貴氏と群馬大学助教の川畑泰子氏を招いて開催したプレカンファレンス。カンファレンスではコメンテーターとして学習院大学教授の遠藤薫氏を招いて,この分野の研究と教育に関する課題について議論を行った。(カンファレンスオーガナイザー)


発表者名:平田知久

題名:対談「情報科学/技術を「哲学」する」に対するコメント

発表年月日(西暦):2020年9月18日

発表学会名:IIAS「哲学と先端科学」の対話シリーズI 市民共同参画シンポジウム―市民とともに考える先端科学技術の行方―

開催場所: 国際高等研究所

概要:公益財団法人国際高等研究所主催の市民参加型シンポジウム「市民とともに考える先端科学技術の行方」にコメンテーターとして参加した。
 シンポジウムでは,現代における多様な先端情報科学技術に関する議論を拡張する論点として,人々のなすある時点における不価値/無価値な行動や無為などが後に価値を持つという場合に,先端科学技術において「ある時点」でそれを捉えることは可能か,またそれはどのようにしてか,ということについて,いくつかの事例を紹介しながら,コメントを行った。(招待報告/コメンテーター)


発表者名:平田知久

題名:『ネットカフェの社会学――日本の個別性をアジアから開く』(慶應義塾大学出版会 2019年)

発表年月日(西暦):2020年10月11日

発表学会名:関西社会学会 第71回大会

開催場所: 龍谷大学(オンライン)

概要:関西社会学会の企画である「自著を語る」にて,2019年に出版した『ネットカフェの社会学――日本の個別性をアジアから開く』の概要,執筆動機,執筆環境などについて報告したもの。
 報告ではさらに,本書の編集者の言なども紹介しながら,その強みなどについても論じた。(招待報告)


[その他]

・シンポジウム主催

発表者名:平田知久

題名:「SDGsと対話する社会情報学――地域・情報・メディア」に関するコメント

発表年月日(西暦):2020年2月14日

研究会名:2019年度社会情報学シンポジウム「SDGsと対話する社会情報学――地域・情報・メディア」

開催場所:群馬大学

概要:2015年9月の国連サミットにて採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」について,社会情報学の観点からそれがどのような意味をもち,その達成にいかなる社会情報学的な課題があるのかについて,群馬大学理工学部教授の金井昌信氏と群馬大学社会情報学部教授の結城恵氏を交えながら検討したシンポジウム。(シンポジウムオーガナイザー/コメンテーター)


・英語学術雑誌編集

著者名:Tomohisa Hirata

題名:Media, Migration and Nationalism: A Special Collection

発行年月日(西暦):2020年6月17日

掲載誌名:Global Perspectives

巻数:1 (1)

概要:二国間共同セミナー「メディア・移民・ナショナリズムの興隆――ヨーロッパとアジアの経験と視座の比較」(2018年9月19日~21日)の日蘭のいくつかの報告,およびこの特別号と関連する2018年の国際コミュニケーション学会における報告をもとにした複数の論文を,ユトレヒト大学のKoen Leurs氏とともに共同ゲスト編集者として編纂し,University of California Pressから出版したもの。(共同ゲスト編集者: Koen Leurs)


・インタビュー

協力者名:Tomohisa Hirata

題名:Media, Migration and Nationalism: A Q&A with Global Perspectives Guest Editors Koen Leurs and Tomohisa Hirata

発行年月日:2020年6月26日

発行所名:University of California Press

概要:英語学術雑誌Global Perspectivesの特集号「メディア・移民・ナショナリズム」のゲスト編集を行ったことについて,カリフォルニア大学出版局からこの特集号の企画の意図,特集号の編纂のきっかけとなった2018年に開催された二国間共同セミナーの概要,COVID-19やBlack Lives Matterなど現代社会の様々な課題と「メディア・移民・ナショナリズム」と題された特集号との関係,今後の領域横断的学術研究と芸術との協同などについて,共同でゲスト編集をおこなったユトレヒト大学のKoen Leurs氏とともにインタビューを受けた。

https://www.ucpress.edu/blog/50926/media-migration-and-nationalism-a-qa-with-global-perspectives-guest-editors-koen-leurs-and-tomohisa-hirata/


協力者名:平田知久

題名:《変革 山本県政1年》情報発信 政治 動画で身近に

発行年月日:2020年7月29日

発行所名:上毛新聞

概要:上毛新聞の特集「《変革 山本県政1年》」の「情報発信」の記事への協力。山本一太群馬県知事が実践してきたこれまでのオンラインによる情報発信の経緯を振り返りながら,動画による県内情報の発信の宛先に関する十分な検証の必要性を示した(記事構成は担当記者による)。

https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/229280

藤井正希(憲法学研究室)

[学術論文]

著者名:藤井正希

題名:安倍改憲論の問題性―自衛隊の憲法9条加憲論を中心にして

発行年月日(西暦):2019年12月8日

掲載誌名:憲法ネット103編『安倍改憲・壊憲総批判 憲法研究者は訴える』

巻数:1

頁:25-38

概要:自衛隊の憲法9条加憲論を中心にして安倍首相のとなえる改憲論の問題性を明らかにしていく。まず,安倍改憲4項目と2012年自民党改憲案を概観し,安倍改憲の背後にあるものを考える。特に安倍9条加憲の素案については,具体的な条文を確認する。つぎに,9条加憲についての安倍首相の説明は,まったく根拠がないばかりか,その真の目的が自衛隊を将来,完全な集団的自衛権が認められ,国連軍にも参加できるようなフルスペックの軍隊にすることにあることを指摘する。さらに,平和主義の実現のためにはむしろ9条を改正すべきであるという立憲的改憲論と呼ばれる新しい主張について,その内容や目的を見ていく。立憲的改憲論がその目的とするところを決して実現しえず,結局,自衛隊の固定化につながり,かえって安倍改憲に手を貸す結果にもなりかねないという危険性を持つことを明らかにする。


[著書]

著者名:後藤光男,高島穣,秋葉丈志,上原陽子,岡田大助,片上孝洋,川辺啓,日下和人,澤田千秋,竹嶋千穂,平岡章夫,藤井正希,三浦一郎,村山貴子,楊亜楠,吉田友明

書名:人権保障と国家機能の再考―憲法重要問題の研究

発行年月日(西暦):2020年3月20日

発行所名:成文堂

頁:30-48,147-165

概要: 第2講・日本国憲法における平和主義の普遍性=平和主義は現在大きな岐路に立たされている。この点,9条が改正されるかどうかは,今後の日本の政治の行く末や日本人の将来を左右するとともに,“国のかたち”自体を変容させかねない大問題である。かかる政治状況の下,改正が現実味を帯びてきた今こそ,もう一度,平和主義の理念を再確認し,9条をめぐる問題を再検討することが,国民投票に適切に対処するためにも,ぜひとも必要となろう。かかる問題意識に立って,本稿では,まず9条の平和主義がどのような理想にもとづくものなのか,そして,その理想は現在でも通用するものなのか,さらには,将来にわたっても維持しうる普遍性を有するものなのかを考えていく。この点,筆者は,日本国憲法における平和主義の普遍性を信じており,その説得的な論証が本稿の最大の眼目となる。そして,その議論を踏まえ,近時,平和主義に関して国民的論争を巻き起こした二つの論点,すなわち,①集団的自衛権の容認の是非と②自衛隊の9条加憲の是非を取り上げ検討していく。
 第8講・生存権の現代的課題=私たちは,貧困にあえぐ人びとを見過ごし,切り捨てていく社会に生きている。今こそ,“貧困の連鎖”を断ち切る大きな流れを作るべき時である。経済が極度に停滞し,社会が勝ち組と負け組に二極化しつつある今こそ,社会的経済的弱者を救済すべく,生存権(憲法25条)の積極的な活用が図られるべきである。そのためには,従来の思考枠組を乗り越える柔軟かつ大胆な発想が必要となる。生存権の持つ重要性は,今後,ますます高まることが予想され,憲法25条は,憲法9条,憲法21条と並び,憲法の三大論点の一つとなろう。この点,“言葉どおりの具体的権利説”と“ベーシックインカム制度”は,生存権の積極的活用策の究極的なものであり,それを認めるならば生存権の人権としての実効性を強化し,その保障を貫徹することにつながり,日本の貧困格差社会の是正にも大いに資する。両者の成立可能性,実現可能性を憲法的観点から論証することが本稿の最終的な目的である。


著者名:飯島滋明,榎澤幸広,奥田喜道,河上暁弘,清末愛砂,藤井正希,松原幸恵,宮内紀子,矢崎暁子

書名:はじめの一歩 法学・憲法

発行年月日(西暦):2020年4月10日

発行所名:現代人文社

頁:56-57,68-71,80-83,118-121,130-133,174-177

概要:①LGBT,②裁判員制度,③ハンセン病問題,④国民主権・民主主義,⑤個人の尊厳・幸福追求権,⑥司法という法学・憲法における6つのテーマについて,全くの初学者向けに基本事項の解説をおこなう。その際には,歴史的・沿革的な考察から始め,条文や判例,法制度をもとに法的問題点の解明と,今後の課題を提示した。本著は,高校の社会科から大学における学問としての法学・憲法への橋渡しを企図しているが,大学の講義用テキストとしても十分に使用可能なレベルとなっている。


著者名:秋葉丈志,岡田大助,片上孝洋,高島穣,竹嶋千穂,藤井正希

書名:現代憲法25講

発行年月日(西暦):2020年4月20日

発行所名:成文堂

頁:82-94,151-164,180-193,194-206,207-219,341-354

概要:第7講・人権の制約原理=まず人権の制約原理としての“公共の福祉”についての典型的学説を概観し,その意義と役割を考える。そして,公共の福祉にもとづく人権制約の合憲性審査基準として,“比較衡量論”と“二重の基準論”について検討していく。その際,二重の基準論の根底にある“表現の自由の優越的地位論”を確認する。さらに,表現の自由に使われる厳格な違憲審査基準について,具体的に見ていく。その際には,できうる限り重要な最高裁判例に言及していく。人権の分野では,憲法的に許される人権制約なのか,それとも許されない人権制約なのかを明確に判断するために,その人権の特性にあった違憲審査基準を定立することが重要となる。よって,本講は決して軽視されてはならない。
 第12講・表現の自由=表現の自由は,人権体系上,優越的地位を占める権利であり,いわば“人権のチャンピオン”といえる。本講では,このような表現の自由について,まず権利の具体的な内容を概観していく。その際には,表現の自由の優越的地位論や思想の自由市場論といった伝統的な憲法理論にふれていく。つぎに,表現の自由に対する制約を考える。ここでも伝統的な憲法理論である二重の基準論にふれて,表現の自由につき厳格な違憲審査基準が必要とされる理由を学んでいく。さらに,判例研究としては,立川反戦ビラ配布事件を取り上げ,東京地裁第一審判決と最高裁上告審判決の結論の違いを考える。そして最後に,表現の自由に関する今日的な問題として,ヘイトスピーチ規制を検討していく。
 第14講・生存権=まず,生存権の内容を概観する。その際,貧困格差社会化,超高齢社会化が進む日本社会における生存権の意義を確認する。つぎに,生存権の歴史的背景を見ていく。近代の自由権の時代から現代の社会権の時代への変遷,日本国憲法に生存権が規定された経緯はぜひ知っておく必要がある。その後,生存権についての憲法解釈上の論点として,生存権の法的性質,「健康で文化的な最低限度の生活」の意義,憲法25条1項と2項の関係を検討していく。さらに,生存権の判例として,食料管理法違反事件,朝日訴訟,堀木訴訟,中嶋訴訟の事案と判旨を理解する。そして,最後に,ベーシック・インカム導入の是非という生存権に関する新しい問題を考えていく。
 第15講・教育の自由と教育を受ける権利=第1節では,まず教育の自由について,その内容を見ていく。その際には,教育の自由と教授の自由との異同をおさえる。つぎに,大日本帝国憲法の教育と日本国憲法の教育を比較し,あるべき教育を考える。そして,旭川学力テスト事件を取り上げ,普通教育における教育の自由の限界を検討していく。第2節では,教育を受ける権利の中心が子どもの学習権であることをまず理解する。つぎに,教育権の所在につき対立する国民教育権説と国家教育権説を概観し,再び旭川学力テスト事件を取り上げる。そして,教科書検定の合憲性については家永教科書裁判を,また,学習指導要領の合憲性については伝習館高校事件を素材に考えていく。さらに,義務教育の無償の範囲についての学説や判例を整理する。第3節では,教育現場での教育勅語の活用を検証する。
 第16講・労働基本権=ここでは,生存権とともに社会権に分類される労働基本権(労働三権),すなわち団結権・団体交渉権・団体行動権について概説していく。まず前提として,勤労の権利と義務の内容を確認し,労働基本権の内容と効果を見ていく。それを踏まえて,勤労の権利や労働基本権の法的意味を考える。そして,特に激しい対立がある「公務員の労働基本権」の問題については,全逓東京中郵事件や都教組事件,全農林警職法事件等の重要事案の最高裁判決を外国の状況も念頭におきつつ検討していく。その際には,「公務員も労働者である」ということを明確にふまえる必要がある。さらに最後に,労働基本権を真に充実させるためには,“大きな政府”の理念が再評価されなければならないことを考えていく。
 第25講・憲法の保障=憲法は,国家の基本にかかわる根本法であり,その国のあり方の大枠を形づくるものと言える。それゆえ,憲法を最高法規と位置づけ,憲法の規範内容が不当に侵害されないような仕組みを事前につくっておくことが必要となり,その仕組みを一般に憲法保障の制度という。憲法保障は,まず正規的憲法保障と超法規的憲法保障とに大別され,前者はさらに,事前的憲法保障と事後的憲法保障とに分かれる。超法規的憲法保障には,抵抗権と国家緊急権がある。本稿では,かかる憲法保障の制度を具体的に概観していくが,そのなかでも近時,大きな問題になっているのが憲法改正の是非である。以前とは違い,憲法改正に賛成する人びとが非常に多くなり,憲法改正は現実味をおびている。憲法改正は改めて熟考していきたい。


著者名:藤井正希

書名:憲法口話

発行年月日(西暦):2020年5月20日

発行所名:成文堂

頁:244

概要:本著は,群馬大学の教養教育科目として担当している「日本国憲法」の講義をテープ起こしした文章に必要最小限度に手を入れた原稿を書籍化したものである。教養「日本国憲法」の受講生必携の指定教科書として使用することを企図して計画された。それゆえ,内容は90分の講義を15回で憲法の全体が学べるようにカリキュラムされており,まったくの憲法の初学者であっても理解できるレベルとなっている。基本的には授業で話した通りに忠実に再現しているので,口語形式になっている。憲法の基本事項はほとんど網羅され,重要判例にもできうる限り言及しており,全体的には教養憲法としては十分の内容になっている。本著を通読すれば日本国憲法の基本構造や基本原理を楽しみながら理解し,身につけることができる。ぜひ多くの人びとに本著を手に取って頂き,大学の講義をリアルに体験して,“学問の楽しさ”を味わってもらいたいと考える。


[その他(研究ノート)]

発表者名:藤井正希

題名:批判的人種理論の有効性―ヘイトスピーチ規制を実現するために

発行年月日(西暦):2020年3月1日

掲載誌名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:27

頁:101-110

概要:本稿は,批判的人種理論を分析・検討し,同理論を日本におけるヘイトスピーチ規制に活かすことを目的としている。日本人は,単一民族神話ゆえに人種や民族の問題には元来,無自覚であり,日本の憲法学において,これまであまり批判的人種理論が議論されることはなかった。しかし,近時,日本でも社会問題化している在日韓国朝鮮人に対するヘイトスピーチや,欧米諸国で多発するヘイトクライムの問題は日本人に人種や民族を強く意識させている。今後の憲法学は,批判的人種理論の研究を避けては通れないであろう。そのための一歩として,批判的人種理論についての筆者の理解をまとめるとともに,現時点での筆者の考えを書き留める。その成果は,つぎの論文にそのまま承継させ,さらに発展させていくつもりである。


[その他(社会的活動等)]

題名:高等理論研修講師

開催年:2020年

主催者:財務省


題名:税関研修所講師

開催年:2020年

主催者:財務省


題名:通関業法に基づく審査委員

開催年:2020年

主催者:東京税関

松井 猛(システム最適化論研究室)

[学会発表]

発表者名:Yusuke Takahashi and Takeshi Matsui

題名:Structural Estimation of Consumer Brand Preference through the Advertising Effectiveness

発表年月日(西暦):2019年12月4日

発表学会名:International Conference on Mechanical, Electrical and Medical Intelligent System 2019

開催場所:桐生市市民会館

概要:近年,嗜好や商品の多様化に伴い,消費者が商品を購入する際の意思決定も複雑になってきている。インターネットの普及により,現在では製品を即座に購入することが可能となり,その製品を覚えていて商店へ買いに出かけるという行動が必ずしも必要ではなく,購入前にネットで製品の機能を調べたりなどの行動が一般的となっている,また,購入後もその製品の情報を他の消費者と共有するようになりつつある。消費者の購買行動に基づく選択の意思決定の過程を分析することは,消費者の嗜好を理解し,適切な製品をデザイン・販売して届けるというマーケティングにおいて重要であると考えられる。そこで多様化する消費者のそれぞれの嗜好を考慮することにより,消費者がどの製品を購入するかを予測する手法を本研究では提案する。


[学術論文等]

著者名:Takeshi Matsui and Tomomi Mashiyama

題名:Interactive route planning through generalized pickup and delivery traveling salesman problems with time windows

発行年月日(西暦): 2020年9月

掲載誌名:ICIC Express Letters

巻数:14巻9号

頁:867-872

概要:近年,ガイドブックやSNSなどのWebから入手した情報を用いて旅行者自身で観光計画を立案することも増えてきている。しかし,多数の選択肢の中から自分の嗜好に合った最適な旅行を計画することは困難な場合がある。本研究では,観光客が出発地から一度昼食をとって宿泊地に到達するまでの一連の観光行動において,観光における価値を最適化する経路を立案する手法について考察する。このような観光経路最適化問題を時間枠付き一般化集荷配送巡回セールマン問題として定式化し,さらに観光者にとって満足度の高い経路を対話的に導出するアルゴリズムを提案する。

松宮 広和(情報法研究室)

[学術論文] 

(1)

著者名:松宮広和

題名:欧州委員会による「デジタル時代のための競争政策 最終報告書」 (2019年) (1)

単著

掲載紙名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:第27巻

発行年月日:2020年3月2日

頁:159-167頁

要旨:2019年4月4日,「欧州委員会」(='the European Commission')は,「デジタル時代のための競争政策 最終報告書」(='Competition Policy for the digital era, Final report')を公表した。当該報告書は,欧州委員会の「競争総局」(='Directorate-General for competition')担当のMargrethe Vestager委員によって,2018年3月28日に,任命された3人の「特別顧問」(='special adviser(s)')であるthe Humboldt University of Berlinの法学の教授であるHeike Schweitzer,the Toulouse School of Economicsの経済学の教授であるJacques Crémer,及びImperial College Londonのデータ・サイエンス/データ科学の准教授であるYves-Alexandre de Montjoye(以下,これら3名を「執筆者」と呼ぶ)によって,作成された。本報告書は,「如何に,「競争政策」(='competition policy')が,「デジタル時代」(='the digital age')において,「消費者を支持する」(='pro-consumer')「イノベーション/革新」(='innovation')を促進し続ける目的で進化するべきかを「探索する」(='explore')こと」,をその目的とする。
 概して,執筆者は,「デジタル・エコノミー/デジタル経済」(='digital economy')においても,競争法の基本的な目的を再考する必要は,存在せず,「活力有る競争政策の強制/執行は,依然として,消費者の当該利益及び経済全体に奉仕するある強力な「ツール/道具」(='tool(s)')である」こと,を指摘する。
 しかしながら,執筆者は,同時に,デジタル・エコノミー/デジタル経済を考察し,それを特徴付ける3つの鍵となる/重要な/主要な特徴である,(a) 「規模に関する極端な収穫」(='extreme returns to scale'),(b) 「ネットワーク外部性」(='network externality(-ies)'),及び(c) 「データの役割」(='the role of data')によって,そこでは,強力な「範囲の経済」(='economies of scope')が,存在すること,を指摘する。そして,彼らは,それが,「エコシステム/生態系」(='ecosystem')の発展を優遇し,特に,「プラットフォーム」(='platform(s)')を保有する既存の事業者に対して,「取り除くことは,非常に困難な」(='very difficult to dislodge')強力な「競争上の優位性」(='competitive advantage')を与えること,を確認する。
 同時に,彼らは,「「支配的な」(='dominant')デジタル企業が,「反競争的行為/行動」(='anti-competitive behaviour')に従事する強力な「インセンティブ/誘因」(='incentive(s)')が,存在する」こと,を確認する。

 そして,執筆者は,全てのこれらの要因が,デジタル・エコノミー/デジタル経済において,競争が取る当該形態に,大きく影響を与えること,及び,それらに対応する目的で,「活力有る」(='vigorous')競争政策の「強制/執行」(='enforcement')が,要求され,かつ,競争法が適用される当該やり方に対する「調整/修正/補正」(='adjustment(s)')が,正当化されること,指摘する。
 結論として,執筆者は,本報告書において,EUの競争ルール/競争準則の当該適用の一般的な示唆を行うものである。
 伝統的には,巨大企業によるインターネットに対する影響力・支配の増大が提起する問題は,巨大通信事業者が,「ブロードバンド・インターネット・アクセス・サービス」(='Broadband Internet Access Service'/以下「BIAS」)の提供に伴って,ネットワークの「下位レイヤー」において有する影響力に関連して,「ネットワークの中立性」(='network neutrality')等と呼ばれる激しい議論をめぐって,闘わされてきた。しかし,今日では,BIASに対する規制だけでは,必ずしも十分ではない。何故なら,ブロードバンド・プロバイダー以外のものが,「門番」(='gatekeeper(s)')としての役割を果たし得るという更なる危険性が,発生してきたからである。
 例えば,特に,本報告書でも記される様に,近時では,「エコシステム/生態系」(='ecosystem'),及びその「鍵となる」「プラットフォーム」(='platform'),の形成及び発展等によって,特にアプリケーション層(及び/又はより上位)で影響力を行使し得る事業者の能力が,増大してきた。この様な企業の代表的なものとして,一般に「GAFA」(すなわち,Google Inc.,Apple Inc.,Facebook, Inc.,及びAmazon.com, Inc.の4社)と呼ばれる巨大IT企業が挙げられ,それらの間で激しい競争が行われている。彼らは,可能な場合には,公共インターネット上に「壁に囲まれた庭」(='walled garden')を構築し,それに対する支配からはほぼ排他的に利益を得ることを実現してきた。
 当該状況は,近年における「ビッグ・データ」(='big data'),「人工知能」(='Artificial Intelligence'/以下「AI」),及び「物のインターネット」(='Internet of Things'/以下「IoT」)の領域における技術の発展によって,更に加速されつつある。
 しかし,既存の法制度は,所謂「デジタル経済」におけるデータ関連技術の飛躍的発展に必ずしも十分に対応し得ていない。それらは,十分な整合性を有するものではなく,法の欠缺も,存在する。巨大IT企業の行為に対する各国の当局による従前の対応は,個人情報保護及び市場支配的地位の濫用に代表される競争法の適用の追求に留まる。その様な状況において,「GAFA」に代表される支配的なプラットフォームを保有する巨大IT企業の活動に対応すること,を目的とする政策が,各国の当局によって,模索されてきた。
 しかし,「上位レイヤー」に対する影響力・支配を有する巨大IT企業に対して,専ら「競争法」のみによって,規制を行うことは,必ずしも十分ではない。何故なら,特に,近時では,所謂「GAFA」に加えて,一般に「BAT」(すなわち,Baidu, Inc. (百度公司),Alibaba Group Holding Limited(阿里巴巴集団),及びTencent Holdings Limited(騰訊控股有限公司)の中国系の3社)と呼ばれる巨大IT企業も,その活動の領域を,中国国内のみならず,世界に拡大してきたからである。
 特に,「BAT」は,自らのネットワークに加えて,中国の「グレート・ファイアウォール」(='Great Firewall')の内側のサイバー空間に「壁に囲まれた庭」(='walled garden')を構築し,それに対する支配から排他的に利益を得る一方で,公共インターネット上のデータを利活用してきた。これは,データ移転の観点から,顕著な不平等であり,経済的のみならず,自由主義陣営の国家安全保障上の政策からも,第三国経由のデータ移転も含めて,その対応が,急務である。また,互恵性の観点からオープン・データ政策の再考も必要である。
 これらの様なことを考察する場合には,執筆者が,本報告書で主張する様に,専ら,「実際に発生した(すなわち,顕在化した)事件」に対して,「事後的に」対応する競争法を,巨大IT企業に対する主たる規制手段とするのみでは,必ずしも十分ではなく,「より一般的な事象」に対して,「(予防法学的意味も含めて)事前的に」対応する個別の事業法等による規制が,(少なくとも,執筆者が主張する程度よりも)より遙かに重視されるべきである様に思われる。
 将来的には,まず,特にアプリケーション層(及び/又はより上位)に対するより精緻な考察をともなう形で,「レイヤー型規制/レイヤー構造に基づく規制」の導入(及び/又はアプリケーション層(及び/又はより上位)における規制を可能とする権能の確保)が必要とされるものと思われる(その一部は,既存の通信規制の枠組みを越える可能性も存在し得るものと思われる)。
 本稿では,当該報告書に対する解説を行い,そして,これらの問題に対する解説及び検討等を行った。


(2)

著者名:松宮広和

題名:欧州委員会による「デジタル時代のための競争政策 最終報告書」 (2019年) (2・完)

単著

掲載紙名:群馬大学社会情報学部研究論集

巻数:第27巻

発行年月日:2020年3月2日

頁:169-190頁

要旨:本稿は,当該最終報告書の「要約」の邦訳を記したものである。紙幅の都合上,当該報告書の詳細は,上記の松宮広和「欧州委員会による「デジタル時代のための競争政策 最終報告書」 (2019年) (1)」群馬大学社会情報学部研究論集 第27巻 159頁以下 (2020年)における記述を参照のこと。


[翻訳・編集等]

(1) 

研究代表者名:松宮広和

報告書:科研研究題目「持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究」(国際共同研究加速基金(国際共同研究強化))(令和元年度)(JSPS科研費 15KK0109)実績報告書(研究実績報告書)

単独(研究は,共同研究)

報告年月日:2020年5月

研究支援者:独立行政法人日本学術振興会

研究期間:平成28(2016)年4月-

概要:上記の科研研究に,研究代表者として従事してきた。本研究は,基研究である「持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究」(基盤研究(C))(平成24年度-28年度)(JSPS科研費 JP24530056)を格段に発展させ,優れた研究成果をあげることを目的とする。当該基研究は,持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究を行うことをその目的とする。具体的には,過去約20年間 ICTの利活用で比類無い成功を収めてきた米国を参考に,(1) 通信インフラストラクチャーの更なる整備・更新,(2) アプリケーション層における競争環境の整備,(3) クラウド化及びスマート・グリッド,並びに(4) 公共サービスに関連するICTの利活用,の4つを中心的課題として,前記の目的に貢献し得る成果の獲得を目指す。本研究は,現在の我が国の最大の政策的課題(の1つ)である持続可能な経済成長の実現に,ICTが果たし得る役割についての有用な示唆を提供し得る点に,その意義を有する。
 本研究は,当該基研究との関連で,特に,(1) 電磁波のスペクトル利用の更なる拡大のあり方,(2) 上位レイヤーにおける規制のあり方,並びに,(3) ICT領域の規制当局であるFCC及びその規制のあり方を中心に,在外研究によって,外国の研究機関に在籍する研究者と共同して研究を行うものである。
 令和元(2019)年度は,当該研究題目に関連する研究に従事し,前年度から継続して,米国に渡米して,The University of California, Berkeleyに,「客員研究員」(='Visiting Scholar')として在籍して,在外研究を行い,そして,その研究成果の一部を公表した。
 本報告書は,最終年度となった当該年度における,これらの研究の実施状況について記載したものである。


(2) 

研究代表者名:松宮広和

報告書:科研研究題目「持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究」(国際共同研究加速基金(国際共同研究強化))(平成28年度-令和元年度)(JSPS科研費 15KK0109)研究成果報告書

単独(研究は,共同研究)

報告年月日:2020年7月

研究支援者:独立行政法人日本学術振興会

研究期間:平成28(2016)年4月-

概要:上記の科研研究に,研究代表者として従事してきた。本研究は,基研究である「持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究」(基盤研究(C))(平成24年度-28年度)(JSPS科研費 JP24530056)を格段に発展させ,優れた研究成果をあげることを目的とする。当該基研究は,持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究を行うことをその目的とする。具体的には,過去約20年間 ICTの利活用で比類無い成功を収めてきた米国を参考に,(1) 通信インフラストラクチャーの更なる整備・更新,(2) アプリケーション層における競争環境の整備,(3) クラウド化及びスマート・グリッド,並びに(4) 公共サービスに関連するICTの利活用,の4つを中心的課題として,前記の目的に貢献し得る成果の獲得を目指す。本研究は,現在の我が国の最大の政策的課題(の1つ)である持続可能な経済成長の実現に,ICTが果たし得る役割についての有用な示唆を提供し得る点に,その意義を有する。
 本研究は,当該基研究との関連で,特に,(1) 電磁波のスペクトル利用の更なる拡大のあり方,(2) 上位レイヤーにおける規制のあり方,並びに,(3) ICT領域の規制当局であるFCC及びその規制のあり方を中心に,在外研究によって,外国の研究機関に在籍する研究者と共同して研究を行うものである。
 本報告書は,平成28年度-令和元年度の研究期間全体を通じて行われた,これらの研究の実施状況について記載したものである。


[研究会発表]

(1)

報告者:松宮広和

題名:「巨大IT企業による上位レイヤー支配」

単独

研究会名:東京経済法研究会(2020年6月例会)において,報告担当者として報告。

報告年月日:2020年6月20日

開催場所:オンライン開催

概要:本報告は,東京経済法研究会(2020年6月例会)において,報告担当者として報告を担当したものである。
 インターネットの一般への普及から約四半世紀が,経過した。近時では,巨大企業によるインターネットに対する影響力・支配の増大が,強く懸念される様になってきた。
 巨大企業によるインターネットに対する影響力・支配は,2000年頃以降,まず,物理的ネットワークを含む「下位レイヤー」において影響力を有する巨大通信事業者の影響力が,問題とされ,「ネットワークの中立性」等と呼ばれる激しい議論が,闘わされてきた。
 近時の米国では,2018年1月4日,共和党のDonald J. Trump大統領の政権下のFCCによって,公表された所謂「2017年のインターネット自由回復命令」(='FCC Restoring Internet Freedom Order 2017')によって,物理的ネットワークに対する支配を有する巨大通信事業者の影響力に対する規制が,大幅に緩和された。報告者は,これらについて,松宮広和「インターネットの自由回復を目的とする2017年のFCCの判断」群馬大学社会情報学部研究論集 第26巻 139頁以下 (2019年)で,考察した。
 しかし,巨大企業によるインターネットに対する影響力・支配の増大は,「下位レイヤー」において影響力を有する巨大通信事業者のそれらに限定されない。すなわち,今日では,「ブロードバンド・インターネット・アクセス・サービス」(='Broadband Internet Access Service'/以下「BIAS」)に対する規制だけでは,必ずしも十分ではない。何故なら,ブロードバンド・プロバイダー以外のものが,「門番」としての役割を果たし得るという更なる危険性が,発生してきたからである。例えば,本判断では,「エコシステム/生態系」(='ecosystem'),及びその「鍵となる」「プラットフォーム」(='platform'),の形成及び発展等によって,特にアプリケーション層(及び/又はより上位)で影響力を行使し得る事業者の能力については,必ずしも十分に考慮されていない。この様な企業の代表的なものとして,一般に「GAFA」(すなわち,Google Inc.,Apple Inc.,Facebook, Inc.,及びAmazon.com, Inc.の4社)と呼ばれる巨大IT企業が挙げられ,それらの間で激しい競争が行われている。彼らは,可能な場合には,公共インターネット上に「壁に囲まれた庭」(='walled garden')を構築し,それに対する支配からはほぼ排他的に利益を得ることを実現してきた。
 当該状況は,近年における「ビッグ・データ」(='big data'),「人工知能」(='Artificial Intelligence'/以下「AI」),及び「物のインターネット」(='Internet of Things'/以下「IoT」)の領域における技術の発展によって,更に加速されつつある。
 しかし,既存の法制度は,所謂「デジタル経済」におけるデータ関連技術の飛躍的発展に必ずしも十分に対応し得ていない。それらは,十分な整合性を有するものではなく,法の欠缺も,存在する。巨大IT企業の行為に対する各国の当局の対応は,個人情報保護及び市場支配的地位の濫用に代表される競争法の適用の追求に留まる。その様な状況において,「GAFA」に代表される支配的なプラットフォームを保有する巨大IT企業の活動に対応すること,を目的とする政策が,各国の当局によって,模索されてきた。
 現時点における,当該領域における研究で,おそらく,最先端のものとして,EU委員会が,公表した専門家報告書であるEuropean Commission, Competition Policy for the digital era, Final report, a report by Jacques Crémer, Yves-Alexandre de Montjoye & Heike Schweitzer (2019)が,挙げられる。当該報告書で,執筆者は,所謂「デジタル経済」は,データの価値を飛躍的に増大させる一方,(a) 規模に関する極端な収穫,(b) ネットワーク外部性,及び(c) データの役割,と云う3つの主要な特徴を有すること,を指摘する。そこでは,強力な「範囲の経済」が,存在し,それが,エコシステム/生態系の発展を優遇し,特に,プラットフォームを保有する既存の事業者に対して,強力な「競争上の優位性」を与える。同時に,「支配的な」デジタル企業が,「反競争的行為/行動」に従事する強力なインセンティブ/誘因が,存在することを指摘する。Id. pp.2-3. 結論として,執筆者は,本報告書において,EUの競争ルール/競争準則の当該適用の一般的な示唆を行うものである。
 しかし,「上位レイヤー」に対する影響力・支配を有する巨大IT企業に対して,専ら「競争法」のみによって,規制を行うことは,必ずしも十分ではない。何故なら,特に,近時では,所謂「GAFA」に加えて,一般に「BAT」(すなわち,Baidu, Inc. (百度公司),Alibaba Group Holding Limited(阿里巴巴集団),及びTencent Holdings Limited(騰訊控股有限公司)の中国系の3社)と呼ばれる巨大IT企業も,その活動の領域を,中国国内のみならず,世界に拡大してきたからである。
 特に,「BAT」は,自らのネットワークに加えて,中国の「グレート・ファイアウォール」(='Great Firewall')の内側のサイバー空間に「壁に囲まれた庭」(='walled garden')を構築し,それに対する支配から排他的に利益を得る一方で,公共インターネット上のデータを利活用してきた。これは,データ移転の観点から,顕著な不平等であり,経済的のみならず,自由主義陣営の国家安全保障上の政策からも,第三国経由のデータ移転も含めて,その対応が,急務である。また,互恵性の観点からオープン・データ政策の再考も必要である。報告者は,これらについて,松宮広和「欧州委員会による「デジタル時代のための競争政策 最終報告書」 (2019年) (1)・(2・完)」群馬大学社会情報学部研究論集 第27巻 159頁以下,169頁以下 (2020年)等で,考察した。
 これらの様なことを考察する場合には,執筆者が,本報告書で主張する様に,専ら,「実際に発生した(すなわち,顕在化した)事件」に対して,「事後的に」対応する競争法を,巨大IT企業に対する主たる規制手段とするのみでは,必ずしも十分ではなく,「より一般的な事象」に対して,「(予防法学的意味も含めて)事前的に」対応する個別の事業法等による規制が,(少なくとも,執筆者が主張する程度よりも)より遙かに重視されるべきである様に思われる。
 将来的には,まず,特にアプリケーション層(及び/又はより上位)に対するより精緻な考察をともなう形で,「レイヤー型規制/レイヤー構造に基づく規制」の導入(及び/又はアプリケーション層(及び/又はより上位)における規制を可能とする権能の確保)が必要とされるものと思われる(その一部は,既存の通信規制の枠組みを越える可能性も存在し得るものと思われる)。
 報告者は,当該研究報告において,これらについて,前述の拙稿を含む資料を配布及び使用して,そして,更に,追加的な研究を反映させつつ,解説及び検討等を行った。


[研究活動 その他]

(1)

研究代表者名:松宮広和

科研研究題目:「持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究」(国際共同研究加速基金(国際共同研究強化))(平成28年度-令和元年度)(JSPS科研費 15KK0109)

共同

研究支援者:独立行政法人日本学術振興会

研究期間:平成28(2016)年4月-

概要:上記の科研研究に,研究代表者として従事している。本研究は,基研究である「持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究」(基盤研究(C))(平成24年度-28年度)(JSPS科研費 JP24530056)を格段に発展させ,優れた研究成果をあげることを目的とする。当該基研究は,持続的な経済成長の促進を可能とするICT利活用のあり方に関する総合的研究を行うことをその目的とする。具体的には,過去約20年間 ICTの利活用で比類無い成功を収めてきた米国を参考に,(1) 通信インフラストラクチャーの更なる整備・更新,(2) アプリケーション層における競争環境の整備,(3) クラウド化及びスマート・グリッド,並びに(4) 公共サービスに関連するICTの利活用,の4つを中心的課題として,前記の目的に貢献し得る成果の獲得を目指す。本研究は,現在の我が国の最大の政策的課題(の1つ)である持続可能な経済成長の実現に,ICTが果たし得る役割についての有用な示唆を提供し得る点に,その意義を有する。
 本研究は,当該基研究との関連で,特に,(1) 電磁波のスペクトル利用の更なる拡大のあり方,(2) 上位レイヤーにおける規制のあり方,並びに,(3) ICT領域の規制当局であるFCC及びその規制のあり方,を中心に,在外研究によって,外国の研究機関に在籍する研究者と共同して研究を行うものである。
 令和元(2019)年度も,米国に渡米して,The University of California, Berkeleyに,「客員研究員」(='Visiting Scholar')として在籍して在外研究を行うことを含めて,当該研究を継続してきた。


(2)

研究代表者名:松宮広和

研究題目:2019年度(公財)電気通信普及財団研究調査助成研究題目「5G時代における情報通信ネットワーク安全保障のあり方に関する国際研究」[財団設立35周年記念事業](令和2(2020)年度)

単独

研究支援者:公益財団法人電気通信普及財団

概要:公益財団法人電気通信普及財団の支援を得て,令和2(2020)年度以降前記の研究に,研究代表者として従事してきた。主たる研究対象は,(1) 5Gが有する技術的特性に基づく規制のあり方,(2) 国家によるサイバー攻撃に対する対応のあり方,及び(3) データ移転の適切性及び安全性の確保のあり方である。
 令和2(2020)年度は,当該研究題目に関連する研究に従事してきた。