猪又 優

社会人のリカレント教育には最高の場所

猪又 優(2012年度修了生 )猪又優

 

 

 

 

1.果たすべき役割の指針を求める

 私は現在公的機関においてキャリアコンサルタントとして,仕事探しをしている多くの方々の支援をしています。相談に来られる方々は好むと好まざるとに拘らず「良い人生を歩むための意思決定」をするわけですが,日本社会が大きく変わる中,多種多様な状況を考慮しながら「意思決定」を支援しなくてはいけません。「自信をなくし,なかなか求人に応募出来ない若者」「かたくなに夢を追い続け,理想の職業以外の求人に応募しない若者」「永年勤めた会社のリストラで退職を余議なくされ,家族を養うことと自身の希望の間で葛藤する中年」「リストラされた夫を持ち,社会人として長期ブランクを持つ専業主婦」「定年退職した後に,何か充実感を得られない高齢者」「うつ病のため社会復帰が出来ない人」「家族の介護をしながら仕事をしなくてはいけない人」など様々です。この支援方法次第で人生が変わってしまう場合もありますし,個人で対応出来る限界もあります。
 キャリアコンサルタントとして責任ある仕事をするために,自己のキャリアを振り返ること,現代日本社会を冷静に判断するための幅広い教養を身に付けること,そして自分が今後社会でどのような役割を果たすべきかの指針を決めることが,入学の志望動機でした。

2.自分の考えに基づいて物事を判断する能力を培う

 講義科目では,キャリア形成をキーワードに「情報社会」「社会倫理」「意思決定」「ゲーム理論」「地域社会」「メディア」「言語コミュニケーション」「起業家・NPO」「社会統計」「経営科学」などを幅広く学んでいます。自分の人生を客観的に評価・分析出来てきました。また今まで新聞や著書のみで安易に判断していた諸現象を,学問分野までさかのぼることで,多角的かつ総合的に観ることが出来るようになってきました。
 同時に,ゼミ授業では「キャリア形成や仕事探しと意思決定」をテーマに,各種論文を題材として指導教授から直接指導して頂いています。徐々にではありますが,物事を自分の考えに基づいて判断出来る能力を身に付けています。
 修士論文のテーマは「キャリア教育とインターンシップ/社会人講話の相乗効果を目指した教育プログラムの作成」です。両者を有機的に結合することで,「良い人生を歩むための意思決定能力を身につけること」,「積極的に就職活動をして,納得した進路選択すること」をより効果的に支援出来ると考えています。

3.社会人のリカレント教育の場所

 週三日夕方から講義に出席しています。同期でもある社会人二名とは色んな情報を交換でき,非常に有意義な時間となっています。また,二十代の若者とも対等な立場で自由な議論ができ,若者の気持ちが理解できます。また自分自身も若返ったような気持ちになれ充実した時間となっています。
 仕事経験を持つ社会人がリカレント教育を受けるには理想的な場所であり,ここで学べる機会を与えてくれた家族,大学の先生,職場の方々に日々感謝しております。

4.キャリア教育での大学院生への還元(2013年4月以降)

 卒業後,ハローワークでは自ら申し出て大学生の就職活動を支援する担当となりました。そして大学院での研究成果を基本に接するようになり,「自分で行うべきこととその限界」を明確に認識でき,また「多くの学生が自信を持って就職活動に挑む」姿勢を持つようになりました。そして偶然にも都内の大学生に短期の講座も受け持つことになりました。授業準備から学生の発表指導まで,やはり大学院で研究したことをベースに行うにつれ「大学においてのキャリア教育」に強い興味とやりがいを感じました。丁度今後の事を考えていた時でもありましたが,偶然に岩手大学においてのキャリアデザイン担当の教員が募集されていることを知りました。今までの経歴に自分の気持ちを添えて応募したところ幸運にもご採用頂きました。合計6年半のハローワークでの勤務を終え,2016年4月より岩手大学に移り「キャリアを考える」の授業を担当し2年間経験し,現在は都内の私立大学にて、1年生から3年生までの「キャリアデザイン」科目を担当しておりますが,まさに最後の最後に天職に巡り合えました。本当に有難いことですが,まだまだ未熟です。学生に教えながら,学生から教えられる。こんな日々を過ごしております。

2019.9