治田 夏葉

好奇心さえあればよい。

治田 夏葉(2017年度修了生 )

 

 

 

 

 

 

1.大学院進学を決めた理由

  ひとえに、「もっと勉強したかったから」の一言に尽きます。

 私は群馬大学社会情報学部の学生でしたが、実は3年次編入学生であり、その前は群馬工業高等専門学校で化学を学んでおりました。私の学部3年生は忙しく、単位取得のために多くの講義に出席し、就職活動に奔走する毎日でした。畑違いの分野に進学したことで、学ぶもの、こと全てが新鮮で刺激的でした。

 就職活動も佳境に入り、内定先が決まろうしていた矢先に、スロベニア短期留学プログラムに参加。そこで交流した日本語学科の学生たちの貪欲で純粋な学問への好奇心に触れ、自分の学問への向き合い方に疑問を持ちました。せっかく進路を変えてきたのに、詰め込むように「こなして」終わりにしてよいのだろうかと。私も彼らと同じように、一つのテーマに向き合い、自分の頭で考え、自分自身がより「好く」生きるために学問の頂を臨みたいと思い進学を決めました。

2.研究について

 研究テーマは「どうして人は人を殺してしまえるのか」。社会的関心が集まった大きな事件について、その当事者たちの手記をもとに実行者の倫理を考えました。

 「絶対に人は殺しません」と言える人が、この世にいるでしょうか。悪いことだと思っているのに「できてしまう」、そのきっかけとはなんでしょう。そもそも善悪は何を基準にしているのでしょうか。当事者に寄り添い、「もし自分だったら」と思考を巡らせる。おそらく、このタイミングでなければ一生考えないことだと思いました。対極の存在と向き合うことで、「まじ、ありえない」や「フツーに考えて」の一言で何でも片付けてしまう了見の狭さから、脱却できたのではないかと思います。

3.修了後の進路

 東京のIT企業に就職し、web広告の仕事をしております。職種は研究職ではなく、提案営業やコンサルタントのようなものです。大学院で学んだ知識がそっくりそのまま生きるというケースは今のところほとんどありませんが、学ぶ中で培われた論理的思考力や問題抽出、解決能力は遺憾なく発揮できているかと思います。

 このプロモーションは本当によいものだろうか。売れれば何でもよいのだろうか。「善い悪い」を考え続けたからこそ、こういった感覚に敏感になることができ、仕事にも生かしております。

 これから長い人生を生きていく上での羅針盤を手に入れ、磨くことができた学生生活だったと振り返ります。

2019.9