大島 一英

研究の楽しさ

大島 一英(2018年度修了生)  

 

 

 

 

 

 

1.志望動機

  人生も折り返し、残りの時間を思うと、やりたいことをやらなければ損であるような気がする。私は幼少期から本が好きであった。そうかと言って、文学の勉強をしたわけではなく、好きな本を読んできただけだ。そこで仕事も安定した今、文学に関わる勉強がしてみたいと思ったわけである。しかし、身近に文学部などはない。仕事の傍ら研究するのだから、移動時間などは極力省きたい。検討の結果、自宅から比較的近距離である本学の入学案内を取得した。社会情報学の何たるかはわからなかったが、シラバスによると文学系の教授も在籍しており、学際的な学びの場であるようだった。またカリキュラムは社会人でも学びやすく設定してあった。そこには、私の学びたいことも包含されているのではないかと思い志望した

2.研究テーマ、修論

  入学前の半期に指導教官高山先生の授業を聴講した。先生の授業の資料として挙げられていた『宇治拾遺物語』を一読し、不思議な読後感の虜になった。そして関係資料を漁るうちに、『宇治拾遺物語』には解明されてない謎が多くあることを知った。俄然好奇心が刺激され、研究の対象とすることにした。テキストを読み、研究を進めるうち、現在定説となっている集録説話の配列方法について、異なる解釈が成り立つのではないかとの仮説を得ることができた。その解明の試みを、先生のご指導を受け修論とした。

3.今後の思い

 修論を完成させてやっと研究が緒に就いたわけなので、今後も仕事と両立させながら細々とでも継続したい。古代から中世にかけて出現した説話が行き着いた一つの形は現代小説であろうし、また落語などの演芸であるかもしれない。説話がその時々の社会と交渉しながら変遷して行く過程に思いを及ぼすと、意外に現代的な課題も見えてくるのではないだろうかと考える。

 伊能忠敬を引合いに出すのもおこがましいが、私のような晩学の徒でも何かしら社会に還元できる成果を生み出せるのではないかと、ほんの少し期待している。

2019.6