町田 憲昭

職場を意識し、実践可能な研究成果を目指す

町田  憲昭(2017年度修了生 )

 

 

 

 

 

1.大学院への進学を希望した理由

 目まぐるしく変化する現代において、私達の周りには日々様々な問題が起きています。もはやこれらの問題に対し、決まりきった解決方法はなく、私達は今までになかった視点からの問題解決を余儀なくされているのではないでしょうか。そこで私は社会情報学という裾野の広い領域を学際的に学ぶことにより、今までになかった視点からのアプローチが可能になると考え、社会情報学研究科に進学を決めました。

(1)学際的に学ぶことにより客観的な観点を身につけ、最善の判断を下す。

 様々な不測事態が起こる日々の業務においてはマニュアルに基づく判断だけでは対処しきれないことが多々あります。そんな時、私達は自身の経験から得た「勘」を頼りに判断を下すことが多いのではないでしょうか。しかし、この経験から得た「勘」とは自身の「感覚」に近く、極めて主観的であり、他者を納得させるための材料としては不十分です。従い、他者が関わるビジネスの場においては、自身の「勘」だけを頼りにした主観的判断だけでは最善の判断を下したと言えません。そこで重要となるのが客観的な観点です。客観的な観点から問題の解決にアプローチすることにより、他者を納得させることのみならず、自身の思考を論理的に整理することもできます。そのことにより自他共に納得できる最善の判断が可能になると思います。この客観的観点を身に付けるためには社会情報学という広い領域を学際的に学び、見識を深める必要があると思いました。

(2)情報を主体的に分析し、学際的な知識を基に実践可能な計画を作る。

 情報処理技術の発達により、あらゆる情報を数値化し集計することは比較的簡単にできるようになりました。これは私が経営する小さな企業にとっても同様で、自社内のシステムで膨大な顧客データを蓄積し集計することが可能になりました。しかし本当に大事なことは機械的に集計したデータそのものではなく、集計したデータを基に自社の問題点を発見し、具体的な解決策を導き出すことです。そのためには社会情報学という広い領域を学際的に学び、問題解決への多角的なアプローチ方法を身につける必要があると感じました。

2.研究について

 修士論文は「温泉地における旅館業のあり方」というタイトルで書きました。内容としては、温泉地内での過当競争を避け、独自路線の経営に舵をきることにより地域振興との相乗効果が期待できるのではないかというものです。また、旅館業は家族従業員を主とする中小・零細企業であることが多い現状を踏まえて、経営資源の少ない企業でも実践可能なフレームワークを提案しました。

 修士論文作成過程では大野先生のご指導の下、「いつまでに何章を完成させる」と言った年間スケジュールを入念に作成し、それに基づき進めました。この様にスケジュールを管理することは修士論文を完成させるうえで、論理を組み立てることと同じくらい重要です。とは言え、時に遅れてしまうこともありましたが、大野先生の叱咤激励によりなんとか修士論文を無事完成することができました。私の様に仕事と学業の両立を図ろうとしている人には、スケジュール管理の大切さを何よりもお伝えしたいと思います。

3.修了後の生活について

 修士課程を無事終えて、現在は旅館の経営に専念しております。大学院での4年間では物事の本質を捉える大切さと、本質を捉えるための学際的な視点を学びました。以前は「感覚的な判断が8割」と言った感じで経営をしておりましたが、修士課程を経て論理的に思考する習慣が身につき、今では自信を持って現場での判断を下せるようになりました。しかしながら、現場では思った通りの結果が常に出る訳ではありません。そのような時こそ、もう一度修士課程で学んだ論理的な思考を思い出し、軌道修正をしていく。この繰り返しで一歩一歩着実に前進していると実感しております。

また、修了後も大野先生とはDMO(Destination Management Organization)のやり取りや現状の経営状況の話などを話題に親しくお付き合いをさせていただいております。修士課程の4年間は仕事との両立で大変なこともありましたがとても有意義な時間でした。

2019.6