研究活動
2. 研究活動  2001年4月14日 更新2010.4.02, 11.7.15, 17.6.01

研究プロジェクト
 典型的な社会心理学の研究では、主に実証的手法が用いられます。つまり何らかの問題意識から課題領域が設定され、そこでの命題が作業仮説に具体化された後、一定の手続きをへて分析されるべき資料が集められます。ここでは実験法・調査法・観察法などが代表的です。そうして集められた資料は、ほとんどの場合、統計的処理を施された後、解釈され、そこから作業仮説、さらには元の命題に対する一定の評価が下されるというプロセスを経ます。
 しかし、問題意識の部分、あるいは分析された資料を解釈・評価する部分では、どのような理論的枠組みでそれが行われるかということが重要になります。そのため社会心理学の研究にも理論研究というものがあります。ただ理論といっても、純粋に思索的・哲学的に行われるのではなく、ほとんどの場合、新旧の実証資料を分析し、解釈する中で、それらを統合的に説明できるような枠組みは何か、と考えるうち現れてくるものだと私は考えています。その際には既存の理論を大きく修正することで別の理論の装いをとってくるものもあるでしょうし、ひらめきのある特別な人が、夜明け時の啓示によって新たに作り上げることもあるかも知れません。ともあれ、単に実証資料があってもそれを解釈する枠組みがなければ、何らかの意味をそこから見いだすことはできないので、理論自体は極めて重要なものであり、従って理論研究も重要です。

 能書きが長くなりましたが、こう書いたのは、実は本社会心理学研究室(つまり現在のところ、唯一の研究室員である私)には、理論研究が量的に大きな部分を占めるからです。理想的な社会心理学研究室がどのような比率で実証研究と理論研究を織りまぜるべきなのか知りませんが、個人的な実感としては自分でもちょっと多いかなと思っています。

 では下に、これまで本研究室が関わった研究プロジェクト名を、時期的に三分してあげておきます。ほとんどは柿本個人の研究ですが、一部共同研究が含まれています。なお、これまでもこれからも「本研究室」という場合、群馬大学社会情報学部発足以来の社会心理学研究室を指す訳ではありません。というのは、この研究室は前任者からそのまま引き継がれたのではなく、柿本が2000年4月に赴任した時点では、社会心理学研究室というものは存在しなかったからです(もっと以前には存在していたようですが)。そこで、下にあげる研究プロジェクトリストには、柿本が前任校で、あるいはそれ以前の学部生・大学院生時代に取り組んだものが含まれています。プロジェクトの一部には概要がついています。

 <最近の研究プロジェクト>
   ・インターネット調査の有効性【概要
   ・電子メディアを通した異文化間接触【概要
   ・カテゴリー分化過程の指標開発【概要
   ・「社会的アイデンティティ」と「間人」の相関関係【概要
   ・集団間関係のコミュニケーション論的検討【概要
   ・仮想世界ゲームを用いた集団間関係研究   →【群馬大学『大学案内2011』内での紹介記事

 <少し前からの研究プロジェクト>
   ・集団間関係における心理諸過程と注意の撹乱
   ・対集団差別の発生・発現メカニズムとその制御

 <もっと前の研究プロジェクト(で、もう過去のものになったもの)>
   ・
   ・
   ・

研究業績など
 研究業績は、普通に考えると研究プロジェクトの成果が公表されたものですから、研究プロジェクトの内容と数におおよそ対応していると考えられるでしょう。しかし事情に詳しい方なら、実際には諸諸の事情で公表されてないものがたくさんあることが分かるでしょう。また研究プロジェクトの規模や成果によってどの程度の単位で業績となるかがまちまちなので、内容はともかく、数の面ではもはや対応がつけがたくなることも分かると思います。

 そこで下にはそういった対応を考えず、「代表的な業績」という観点からいくつかあげておきます。(なお大学情報データベースを使うと、入力分の全業績を表示させることができます。但し英語発表分はローマ字で検索して下さい。)

<研究論文>
  • 柿本敏克 「内集団バイアスに影響を及ぼす個人差変数」(社会心理学研究,第11巻,94-104頁,1995年)
  • 柿本敏克 「社会的アイデンティティ研究における動機論的アプローチと認知論的アプローチ」(心理学評論,第39巻,295-314頁,1996年)
  • 柿本敏克 「社会的アイデンティティ研究の概要」(実験社会心理学研究,第37巻,97-108頁,1997年)
  • 柿本敏克 「最小条件集団状況を用いた集団研究」(組織科学,第31巻,60-71頁,1997年)
  • 柿本敏克 「集団間葛藤を引き起こす心理諸過程に関する一考察—社会的アイデンティティと集団間葛藤」(『偏見とステレオタイプの心理学』現代のエスプリ第384号,172-184頁,1999年)
  • 柿本敏克 「電子メールを通した異文化間接触のコミュニケーション論的意義」(山形県立米沢女子短期大学紀要,34巻,99-111頁,1999年)
  • 柿本敏克 「集団間関係研究のコミュニケーション論的位置づけ」(群馬大学社会情報学部研究論集,8巻,79-92頁,2001年)
  • 柿本敏克・堀正・黒須俊夫 「研究手法としての仮想世界ゲーム ─ゲーム展開事例の報告とともに─」(群馬大学社会情報学部研究論集,11巻,215-225頁,2004年)
  • 柿本敏克 「状況の現実感が集団同一視と内集団バイアスの関係に及ぼす影響についての一考察」(群馬大学社会情報学部研究論集,13巻,83-91頁,2006年)
  • 柿本敏克 「濱口の人間モデルと内集団バイアス生起の前提条件」(群馬大学社会情報学部研究論集,14巻,121-130頁,2007年)
  • 柿本敏克・細野文雄 「状況の現実感尺度の再検討:2つの仮想世界ゲーム実験から」(実験社会心理学研究,49巻,149-159頁,2010年)
  • Kakimoto, T. "A sense of field reality that makes a group situation real." Japanese Journal of Applied Psychology, 37, 45-51 (2012).
  • 柿本敏克・阿形亜子 「環境配慮行動を促進する新変数の検討」(応用心理学研究,39巻,122-131頁,2013年)

  • <分担執筆>
  • 柿本敏克 「社会的影響」(白樫三四郎編著,『社会心理学への招待』,ミネルヴァ書房,101-127頁,1997年)
  • 柿本敏克 「社会的アイデンティティ理論」「自己カテゴリー化」(山本眞理子ほか編著,『社会的認知ハンドブック』,北大路書房,それぞれ120-123頁,124-125頁,2001年)
  • 柿本敏克 「社会的アイデンティティ研究から見た自己の社会性」(下斗米淳編著『社会心理学へのアプローチ』(自己心理学6),金子書房,65-84頁, 2008年)
  • 柿本敏克 「『私たち』と『あの人たち』:集団間関係の心理」(安藤香織・杉浦淳吉編著『暮らしの中の社会心理学』,ナカニシヤ出版,15-24頁, 2012年)
  • 柿本敏克「メディアの変化」「メディア環境の進化」「グローバライゼーションとローカライゼーション」(浮谷秀一、大坊郁夫編著『クローズアップ「メディア」』(現代社会と応用心理学 5),福村出版,それぞれ15-22頁,23-31頁, 164-172頁, 2015年)

  • <その他>
  • Kakimoto, T. "Social categorisation, distraction, and intergroup discriminiation." PhD Thesis, University of Kent at Canterbury. (博士学位請求論文, 1994年)
  • 柿本敏克(書評) 「広瀬幸雄(編著)『シミュレーション世界の社会心理学:ゲームで解く葛藤と共存』」(社会心理学研究,14巻,106-108頁,1999年)
  • 柿本敏克(書評) 「濱口惠俊(著)『「間(あわい)の文化」と「独(ひとり)の文化」』」(社会心理学研究,22巻,333-334頁,2007年)
  • 柿本敏克(翻訳) 「その他の条件即応理論」(白樫三四郎訳編,『リーダーシップの統合理論』(M.M.Chemers, An integrative theory of leadership, Lawrence Erlbaum Associates,1997より),担当部分:第4章(61-83頁),北大路書房,1999年)
  • 柿本敏克(翻訳) 「社会的関係」(山内光哉(日本語版監修)白樫三四郎ほか(監訳),『アイゼンク教授の心理学ハンドブック』(M.W.Eysenck, Psychology: A student's handbook, Psychology Press, 2000より),担当部分:第20章(742-786頁),ナカニシヤ出版,2008年)

  • 在外研究
     2001年度に次のような内容で短期間の在外研究の機会を与えられました。これを可能にしていただいた同僚の皆さん、受入先の諸先生、(および、私事ながら私の家族・親族)の(ご)尽力に感謝いたします。

     研究テーマ「電子メディアを通した集団間関係に関する研究開発動向の調査」
      ・2001年12月22日−2002年1月12日 豪州シドニー大学心理学科客員研究員
      ・2002年1月13日−同2月8日 英国ケント大学心理学科集団過程研究センター客員研究員


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