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教員紹介

岩井淳 (いわい・あつし)准教授

岩井淳

IWAI, Atsushi

  • 出身地:カナダ トロント

  • 最終学歴/学位:東京工業大学大学院 社会理工学研究科 博士課程中退/博士(学術)
  • 所属学会:日本情報処理学会,日本ソフトウェア科学会,日本社会学会,数理社会学会,日本社会情報学会(JASI), 日本社会情報学会(JSIS),日本経営情報学会,日本情報文化学会,日本保健医療社会学会,現代中国学会
  • 担当科目:プログラミングⅠ,プログラミング言語,データベースⅡ,マルチメディアⅡ,情報数学,意思決定支援システム論,情報処理特論,モデル・シミュレーション論
  • 個人ページ: http://www.si.gunma-u.ac.jp/~iwai/

現在の研究テーマ

専攻分野・研究内容紹介

個人や集団がものごとを決める手続きの支援方法

意思決定の手続き,つまり個人や集団がものごとを決める手続きを,コンピュータやネットワークを利用して支援する方法について研究しています。特に,集団活動という紆余曲折を経て進む特徴がある人間のプロセスを何とかフォーマルに記述する方法はないかと検討しており,これが中心的な問題設定です。この点はなかなか説明の難しいところですが,着想をご理解頂けるよう,以下に私の専攻分野や時間的な経緯も追いつつ,少し長く説明したいと思います。

基本的な背景

私は情報工学と社会学をバックグラウンドにしており,授業科目の担当は主にデータベースや意思決定関連の科目です。学生時代には修士課程まで情報工学を学び,その後少し考えがあって理論社会学の研究室に移りました。1年ほどで別専攻の所属になりましたが,それは大学の組織変更に伴う書類上のことで,研究室はずっとそのままでした。情報工学と社会学の複合領域の研究を進めていった次第です。特に集団的な意思決定に焦点を当てて研究活動を行い,それがずっと今に続いています。

研究上の出発点

まず私が工学部の4年生のときに出会った,プロセスプログラミングという考え方を説明したいと思います。これが重要な出発点になりました。ここでいうプロセスとはソフトウェアの開発工程の意味のソフトウェアプロセスのプロセスです。UMLなどが知られる現在では,ある面では当たり前,ある面では奇異に思われるかもしれませんが,論点を整理しておきましょう。

提唱者のOsterweilという方が議論を始めたのは1987年です。当時は大規模化,複雑化したソフトウェアを効率的に開発する方法の研究として,ソフトウェアプロセスの研究が広く行なわれていました.プロセスの形式化はその一分野であり,「プロセスプログラミング」はその形式化手法の1つです。特にプログラム形式の記述で形式化を試みる点に特徴があり,そこで想定された主なメリットはつぎの3点でした。

第一に「プロセスの明確な表現」。従来,開発リーダーの頭の中だけにあり,共有されにくかった開発手順を共有しよう,全員が手順や目的を正しく認識できれば質の高い開発を実現できるはずだ,という考えに立ちます。プログラム記述で形式化しようとする点が大切で,これはプログラムの制御構文が豊かな表現力をもつことや,(自然言語と違い多義的でないので)誤りを防げるといったメリットが見込めるためです。音楽での楽譜にたとえると解りやすいでしょう。音楽は元来目にすることができない。しかし,表現法をフォーマルに定めれば互いに正確に理解でき,合奏もスムーズにできるようになります。

第二に「プログラムとしての保存と再利用」は,作成者がいなくなっても方法が残り,他者が再利用できるということです。これも,作曲家にとっての楽譜と同様です。

第三に「実行時における機械的な支援」。本当にしっかりと形式化された記述は計算機でも読める。ちょうどMIDI音源の機器にスコアを読ませれば演奏するように。プログラム形式で記述された開発プロセスはコンピュータも理解できるので,開発ツールの自動的立ち上げ等,開発者の支援ができるようになるということです。

以上の三点を実現し,これにより大規模で高品質なソフトウェアの効率的な開発を間接的に支援する,というのがプロセスプログラミングの最初のアイディアでした。

如何でしょう?一部当たり前になった部分もありますが,全体的にはまだまだ斬新に感じられる部分があるのではないでしょうか?人間同士のメディアとしてのプログラム。私はこの考え方を継承したというのとは少し違うのですが,この考え方から色々な影響を受けました。

私の思ったこと

実際にプロセスプログラミングの研究に数年携わった後,私はソフトウェア工学以外の文脈で同様の技法を利用できないかを考えました。そのように考えるようになったきっかけは,(正確には他にも色々とあったのですが)特に「手続きを明確に定めて相互行為をするという営みは,行政やビジネスの営みとも似ている面がある」と感じたことが大きかったように思います。この技法を上手に使えば,契約,起業,意思決定など,ネットワーク上でもっと理路整然とした共同作業がもっと楽にできるようになるのではないか,などと考えました。それがちょうど修士時代の終わりのころで,そのあとは,この着想の実現のために現在まで本当に少しずつ歩み続けてきたというところです。(社会学の研究室に移ったのも,この問題設定が社会科学的側面を多くもっていたので,理論社会学の研究室に進学を希望したという次第でした。)

私は,特に意思決定の文脈で,人間のプロセスをフォーマルに記述する文法や,その文法で書かれた文書をコンピュータ処理する(処理した結果,記述の対象となった人間のプロセスがもっと細やかにサポートされる)といったことを実現したいと思ったのですが,これが最初に書きました研究室の中心的な問題設定ということです。

如何でしょう?文章ではなかなか説明しにくいところもあるのですが,以上の説明で少しでもイメージを持って頂けたとしたら幸いです。このようなテーマで研究を続け,個人的には少しずつ成果が上がっているように感じている今日この頃です。具体的な展開はまだまだ今後に待つところも大ですが,未来があるのではという感覚を強めております。

Last Update 2008/09/02