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  1. 1.Computational Social Choice

  2. 2.匿名保証型GDSS


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 情報工学と社会学を背景に,主に意思決定支援システムの研究を行っています。匿名コミュニケーション,社会的選択理論に関連した支援法などが中心で,ここでは活動例を列挙します。

(情報学部の教員紹介はこちらです。

1. 社会的選択理論の検討

 本研究室の教員は,社会的選択理論の古典とされるAmartya Senの書籍,Collective Choice and Social Welfare の共訳に携わり(志田基与師監訳『集合的選択と社会的厚生』(勁草書房)),その理論紹介を続けてきました。

HP: アマルティア・センの『集合的選択と社会的厚生』を開く
HP: 読解のポイントを探る

関連文献:

[1] 岩井 淳, アローの一般可能性定理, 『数理社会学事典』(第Ⅱ部「基礎論」 第7章「社会的選択理論と決定の数理」第3節, pp260-263), 丸善出版, 2022.   他

2. 匿名性の尺度の設計

 本研究室では,匿名投票でも結果的に匿名性が失われる事態があること,匿名性は匿名か否かの二者択一ではなく,確率論と同じ広がりをもつ連続体的概念として捉えられる面があることを指摘して,「匿名性の尺度」を考えました。

 具体的には,匿名性水準を各投票者のもつ自己情報量の総和として計算する観点から,シャノン理論と接合する新尺度を提案しています。一般に,N人が投票を行い賛成がM票,反対がN-M票であった場合,外部者からみたこの投票の匿名性はlog(N!/M!(N-M)!)となります.


提案尺度による計算例([2-1])

関連文献:

[2-1] Atsushi IWAI, Evaluation of an Anonymity Measure as an Index of Voting Privacy, Journal of Socio-Informatics, Vol.5, No.1, pp11-25 2012.〔査読付〕
[2-2] 岩井 淳,投票行為における匿名性概念の形式化,第35回数理社会学会大会(大分大学), 2003.   他

 この尺度設計はCombinatorial Approachという手法で,ネットワークセキュリティの研究分野で同様の匿名性水準の計算手法が提案されていますが,本研究室の提案はそれに先立つものです。


3. 社会的選択理論の情報学的展開

 社会的選択過程の情報処理量の計算法を提案しました。Sen理論の有効性検討を念頭においた作業で,具体的には,上記の匿名性尺度を利用することで,投票等の情報処理量の計算法(社会的選択の過程で社会が抽出する個人情報量の総計に相当)の提案を行ないました。




投票の情報処理量の計算([3])

 Senの枠組みは単なる投票ではなく,社会的観点での観察と評価に基づくような社会的選択の論理を含む特徴があるように思われます。このことが今日の「幸福」の指標化をめぐる様々な試みにまで関連しています。提案した定量分析の手法は,望ましい社会的選択が観察と評価に基づく方式でどの程度実現可能であるのかを再検討するための,一つの手段になるものと期待しています。


関連文献:

[3] 岩井 淳,政策決定のための幸福指標は実現するか~社会的選択理論の情報学的展開,『シナジー社会論~他者とともに生きる』(編者:今田高俊・舘岡康雄,東京大学出版会), pp.73-85, 2014.   他

4. 匿名性の保証と議論の収斂性の両立

 本研究室では,匿名保証型の集団意思決定支援システムの開発研究を行なっています。意思決定の質を上げるため匿名性を用いる例は多いのですが,意思決定の「発散」と「収斂」の2プロセスうちの前者(新たな選択肢やアイディアを求めるプロセス)での利用が通常です。この背景には,匿名性には説得力を失わせる効果や,協調的な議論をより困難にする特徴があるという仮定があるように思われます。


 本研究室では,匿名コミュニケーション支援の成果は少なくともある程度まではシステムの設計によるものと考え,収斂的思考のプロセスで匿名性保証を用いる集団的な意思決定支援のアプローチを検討しています。システム的な利用実験を行い,肯定的な結果を得ています。


収斂プロセスの支援例([4])

関連文献:

[4] Atsushi IWAI and Kazuhiro SADO, A Design of Web-based GDSS that Supports Anonymous Communication and the Convergent Process, IMECS2010 (International Multi-Conference of Engineering and Computer Scientist 2010) Proceedings, Vol.1, pp693-698. Hong Kong, China, 2010.〔査読付〕   他



主な研究助成
2018 評価情報流出の根源的自動防止と相関分析 (2017年度(公財)電気通信普及財団研究調査助成,研究調査期間: 2018.4-2019.3,代表 岩井 淳)
2013 社会的選択理論の情報学的展開 (科学研究費 基盤研究(B)25282088,2013-2015年度,代表 岩井 淳)
2011 個人情報漏洩を入力値分析を用いて防ぐ堅牢な授業評価システムの開発 (科学研究費 挑戦的萌芽研究 23650526,2011-2012年度,代表 岩井 淳)
2006 議論の収斂プロセスの動的変更が可能な匿名型予算決定支援システムの開発(科学研究費 若手研究(B)18700246,2006-2008年度,代表 岩井 淳)
2003 大規模な意思決定のための匿名保証型DSSの開発 (科学研究費 若手研究(B)15700208,2003-2004年度,代表 岩井 淳)

主な学会活動
2023年度 社会情報学会(SSI):評議員,学会誌編集委員
2022年度 社会情報学会(SSI):理事,評議員,表彰委員長, 選挙管理委員長,関東支部副支部長,広報ネットワーク委員, 第29回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員
2021年度 社会情報学会(SSI):理事,評議員,表彰委員長, 関東支部副支部長,第28回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員
2020年度 社会情報学会(SSI):理事,評議員,広報ネットワーク委員長,副表彰委員長, 関東支部副支部長,第27回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員
2019年度 社会情報学会(SSI):理事,評議員,広報ネットワーク委員長,副表彰委員長, 関東支部副支部長,第26回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員
2018年度 社会情報学会(SSI):評議員,副表彰委員長,Journal of Mechanical and Electrical Intelligent System (JMEIS, J. Mech. Elect. Intel. Syst.): 編集委員, Journal of Technology and Social Science (JTSS, J. Tech. Soc. Sci.) : 編集委員, 第25回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員
2017年度 社会情報学会(SSI):評議員,副表彰委員長,学会大会企画委員,経営情報学会:代議員,International Workshop for Social and Information Studies: a program committee member, 第24回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員
2016年度 社会情報学会(SSI):理事,評議員,関東支部長,研究活動委員,学会誌編集委員,学会大会企画委員,ICA2016: a program committee member,第23回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員
2015年度 社会情報学会(SSI):理事,評議員,関東支部長,研究活動委員,学会誌編集委員,学会大会企画委員,第22回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員
2014年度 社会情報学会(SSI):理事,評議員,事務局長,総務委員,研究活動委員,学会誌編集委員,将来委員,ネットワーク委員,学会大会企画委員,第21回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員
2013年度 社会情報学会(SSI):理事,評議員,事務局長,総務委員,研究活動委員,学会誌編集委員,将来委員,ネットワーク委員,学会大会企画委員,情報経営学会:第66回全国大会実行委員,第20回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員
2012年度 社会情報学会(SSI):研究活動委員,学会誌編集委員,将来委員,学会大会企画委員,学会大会副実行委員長,第19回社会情報システム学シンポジウム:プログラム委員

活動例として