調査地概要

渡良瀬川河川敷(群馬県桐生市内、図1

草木ダムより約26km下流に位置する。河川敷の本来の植生はススキ、オギ、ヨシなどで構成されているが、近年広範囲にわたって外来樹木のハリエンジュが樹林化している(慶野 2005)。当地では1998年に洪水があり、その際草木ダムの水が放水されてからハリエンジュが急増したとの報告がある(清水 2005)。上流の足尾山地では、鉱毒によって裸地化した山脈に長年にわたってハリエンジュが植林されており、当地のハリエンジュの樹林化にこれが深く関与していると推察されている(慶野 2005)。2009年1月頃に国土交通省が桐生大橋横のハリエンジュ林の一部を皆抜・抜根した(写真1)。またその横にはハリエンジュ林が手つかずで残されている(写真2)。

群馬大学荒牧キャンパス構内ハリエンジュ林・雑木林(写真34

群馬県前橋市北部の群馬大学荒牧キャンパス構内の雑木林は、アカマツ植林地から二次的に成立した林であると考えられ、アカマツ林からクヌギ・コナラ林へと遷移する途中の、関東広陵地に多い里山林の典型と位置づけられる。ここはもともと利根川の河川敷であり、榛名山に挟まれた関東平野の北端に位置する。群馬大学荒牧キャンパスが設置される以前から成立していて、前橋市内の市街地に残された数少ない里山林であると推察される。

高木としてはアカマツ、コナラ、シラカシ、クヌギ、イヌシデなどの在来樹木が生育し、林床にはアズマネザサが繁茂する部分と、ヒナノガリヤス、アキノキリンソウ、ノコンギク、ヤクシソウといった里山植物と多くのシラカシ・コナラの稚樹が生育する部分がモザイク状にみられる(社会情報学部環境政策実習による結果 未発表)。立木密度は、1haあたり約1466本と算出されている(町田 2005)。かつてはハリエンジュの高木が林縁の所々に生育していたが、環境保全のため2006〜2007年頃に相次いで伐採され、現在はほとんど見られない。

同キャンパス構内の馬術部の周囲に広がるハリエンジュ林の由来は、定かではない。近年ハリエンジュの老齢化による倒木が見られるようになったことから、限界樹齢の50年に近い林齢と推察される。すなわち、群馬大学荒牧キャンパスが設置された頃、ここにハリエンジュが生育を開始したと考えられる。

この林ではハリエンジュ以外の高木はほとんど存在せず、林床には稚樹は全く見られない。林床の草本植生は極めて単純で、アズマネザサ、ショカツサイ、コセンダングサ、ヤブカンゾウなどごく少数の植物種しか見られない。ハリエンジュの立木密度を測定した事例はないが、約2〜3m間隔で、樹高10〜15mのハリエンジュ老齢木が生育している。

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