調査方法
植生・植物相調査
赤城山覚満淵
覚満淵内全域において、設置された木道・遊歩道沿いを中心に植物相調査を行った。生育が確認された種は、採取して研究室に持ち帰る、または写真を撮影するなどして種の同定を行った。特に高山植物として希少性の高いニッコウキスゲとハナショウブは、個体数が明らかに減少していたため、覚満淵全域においてその分布状況を測定した。生息が確認できた地点の緯度経度をポータブルGPS(ポケナビmap21EX,EMPEX)を用いて測定し、確認できた個体数の記録を行った。この数値をもとにそれぞれの個体分布状況を地図化した。調査は2005年6月17日、7月12日に行った。
沼田市玉原湿原
玉原湿原において、植物相調査を行った。木道沿いから生育が確認できた主な種をリストアップした。また、湿原に設置されている木道の正確な位置を把握するため、車道沿いの湿原入り口を地点Aとし、そこから地点Sまで設け(図 8)湿原一帯を、ポータブルGPSを用いて測定した。
また、玉原湿原の各所に侵入しているハイイヌツゲの分布域調査を行った。ハイイヌツゲは主に木道沿いに生えており、その分布面積を巻尺を用いて測定し、位置をポータブルGPSで記録した。また、ハイイヌツゲの結実個体の分布調査も行った。ハイイヌツゲ群落の分布調査と同様に、結実している個体の位置をポータブルGPSを用いて測定した。これらの数値をもとにそれぞれの分布状況を地図化した。調査は、2005年7月16日、2005年10月20日に行った。
アドバンテストビオトープ
アドバンテストビオトープにおいて、月に一回の頻度で植物相調査を行った。生育が確認できた植物種をリストアップし、採取して研究室に持ち帰り、または写真撮影を行い、植物種の同定を行った。また、本ビオトープ内に敷設されている水路・池沿いの3地点(中流、下流、池)の水辺域において、水域から陸域に向かってライントランセクトを設置し(図 14)、これに沿って水域からの距離の異なる(地点1では、水域からの距離が0m、5m、10m、地点2では 0m、4m、 地点3では0m、5m、11m)2-3個のコドラート(2m×2m)を設置して植生調査を行った。調査は、2005年4月23日、5月26日、6月25日、9 月28日に行った。
土壌含水率
植生調査実施地点と同じ場所において、土壌含水率計(Theta Probe Type ML,Delta)を用い土壌含水率を測定した。各地点5回の測定を行い、その平均値を算出した。測定は、2005年4月23日、5月26日、6月25日、9 月28日に行った。
土壌窒素濃度
玉原湿原内のハイイヌツゲ群落下3地点、ヌマガヤ群落下3地点(図 11)の計6地点から、2005年10月20日に土壌を採取し、実験日まで冷蔵庫で保管した。また、アドバンテストビオトープ内においても水辺4地点(マメ科群落下、ヨシ下、タデ下、カヤツリグサ科下)において土壌を2005年9月28日に採取した。玉原湿原、ビオトープの各地点の土壌30gを蒸留水30mlで懸濁し、約10分間静置した後、ガラスファイバー製濾紙(GFC-NO2,ADVANTEC)を使用して濾過した。この濾液中の硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素濃度をポータブル簡易窒素計(NM-10,東亜ディーケーケー)を用いて測定した。なお、玉原湿原6地点の土壌とビオトープのカヤツリグサ科下については、土壌中にシルト成分が多く含まれており、濾過だけでは測定が不可能であったために、濾過の後に、濾液を遠心分離機(M-160-24,佐久間製作所)に6,000rpmで10分間かけてシルト成分を分離した。その後、上澄み液中の硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素濃度をポータブル簡易窒素計を用いて測定した。
また、各地点の土壌30gを送風定温乾燥機(FC-610,ADVANTEC)内にて80℃で1週間乾燥させた後、乾燥重量を測定し、湿潤重量と乾燥重量から土壌含水率を以下の計算により求めた。
土壌含水率=(湿潤重量−乾燥重量)/湿潤重量
ポータブル簡易窒素計での測定値と土壌含水率から、土壌水分1Lあたりの硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素濃度を算出した。また、算出値からアンモニア態窒素比を以下の計算により求めた。
アンモニア態窒素比=アンモニア態窒素濃度 /(硝酸態窒素濃度+亜硝酸態窒素濃度)
発芽実験
2005年10月13日に赤城山覚満淵で4種(アブラガヤ、イタドリ、マルバタケブキ、ヌマガヤ)の種子を採取した(図 3)。これらは道ばたや山地などでみられる植物で、覚満淵内で多く観察された。また、2005年10月20日に玉原湿原でハイイヌツゲの植物の種子を採取した。実験は、石英砂を敷いた直径9?のプラスチック製シャーレを1植物につき15シャーレ用意し、それぞれ種子を50個ずつ入れた。なお、ハイイヌツゲについては、採取できた種子数が少なかったため、1シャーレにつき25個の種子を入れた。そこに蒸留水を入れ実験を行った。
2005年11月1日から2005年11月31日までの30日間、温度勾配恒温器(TG100-ADCT、NK SYSTEM)内で種子を培養した。温度勾配恒温器内の温度設定は30/15℃、25/13℃、22/10℃、17/8℃、10/6℃(昼14hr/夜10hr)の5段階とし、各温度区に1植物につき3シャーレ(1シャーレに25−50粒の種子を入れた)を用いた。すべてのシャーレを観察し、肉眼で幼根の出現が確認できたものを発芽種子として、数を数えた後に取り除いた。また観察日ごとに蒸留水をつぎ足して、常時湿った状態を保った。
インタビュー調査
赤城山覚満淵の管理主体である県に対する調査
県立公園に属する覚満淵の管理方針等について、群馬県環境・森林局自然環境課(自然公園・景観ブループ)の方に対してインタビュー調査を、2005年12月8日、群馬県庁内にて行った。質問事項は以下を中心に適宜質問を追加しつつ行った。(以下の質問事項は事前にメールで連絡済み)
1 管理主体:管理に対する意思決定者・責任体制
2 管理方法:具体的管理方法と管理頻度、それに携わる人、予算
3 管理指針:管理基準と判断の根拠、県立公園の意味合いについて
4 現状把握: 主な利用者と利用割合、高山植物の現状
特にニッコウキスゲの減少について
5 木道設置について:設置目的・今後の整備計画とその根拠
アドバンテストビオトープの管理者に対する調査
アドバンテスト社の私有地であるビオトープの管理方針等について、ビオトープの管理責任者に対してインタビュー調査を、2005年11月24日、アドバンテストビオトープ内にて行った。質問事項は以下を中心に適宜質問を追加しつつ行った。
1 管理主体:管理に関する意志決定者
2 管理方法:具体的管理方法と管理頻度、それに携わる人、予算
3 管理指針:管理基準と目標
4 現状把握