<ハナダイコン>
1.分布地点における相対光強度測定
〔目的〕
群馬大学荒牧キャンパス構内において、ハナダイコンが分布している立地の光条件を明らかにする。
〔方法〕
2004年4月19日、4月27日、5月6日、5月31日、6月9日の計5回、群馬大学荒牧キャンパス構内に生育する地点のうち11地点(立地名:アカマツ林林縁・ハリエンジュ林林縁・混交林林縁・裸地)において相対光量子密度の測定を行なった。その際、GPS(ポケナビmap21EX,Empex)を用いて各地点の位置情報(緯度・経度)を記録した。
測定には光量子センサー(LI-COR,LI-190SB)を用い、地点ごとにハナダイコン群落の上下1〜5カ所において交互に行なった。また、各群落の測定前後には裸地の相対光量子密度を測定し、比率を算出した。なお、測定日のほとんどは曇天であったため、本稿ではこの比を相対光量子密度と称するものとする。
2.個体重量と生産種子数の測定
〔目的〕
群馬大学荒牧キャンパス構内において、異なる光条件下におけるハナダイコンの生長・種子生産特性を解明する。
〔方法〕
ハナダイコンの種子が成熟した、2004年6月8日に行なった。1で調査を行った地点のうち、6月の相対光量子密度が10%(弓道部南)、15%(馬術部右)、20%(ミ情横・テニスコート横)、30%(ミ情駐ヤ場北・馬術部左・西門右)、40%(ミ情駐ヤ場南)、70%(プール横)であった地点より、個体を10個体ずつ採取した。その後コ内にて1週間乾燥させてから、1個体ずつ鞘・葉・茎・根と、種子の2つに分けた。
鞘・葉・茎・根は、送風定温乾燥機(FC-610 ADVANTEC)にて1週間80℃で乾燥させた後、電子上皿天秤(BP310S Sartorius)を用いて1個体ずつ乾燥重量測定を行なった。種子も同様に1個体ずつ種子数を測定した。その際には、まず1個体につき10粒の種子重量を測定し、その後残り全ての種子重量を測定した。その測定値を下記のョにあてはめ、種子数を算出した。
種子10粒あたりの重量=A 残り全ての種子重量=Bとする
種子数=(A+B)/A×10
3.発芽実験
〔目的〕
ハナダイコンの種子発芽の温度依存性と、これが生育光条件によって異なるかどうかを解明する。これらから、ハナダイコンが永続的シードバンクを形成する可能性を検証する。
*シードバンク…土壌中の生存種子の集合のこと。
種子は、芽生えの生長に不適な時期を発芽せず
やり過ごすための生理的特性(休眠発芽特性)
を持つ。生理的に休眠している種子は、発芽に
適した温度や水分意恵まれていても発芽せず、
芽生えの生長に適した環境のシグナルを受け取
ってから発芽する。このため、土壌中には発芽
せず休眠の状態にある種子が多く含まれている
(鷲谷・草刈 2003)。
〔方法〕
先行研究(今枝 2003)の際(2003年6月21日)に採取された種子(相対光強度10%、100%地点)と2004年6月8日に6月の相対光量子密度が20%(テニスコート横)、30%(西門右)、70%(プール横)の地点で採取したハナダイコンの種子を用いた。(先行研究の種子を用いたタ験を第1タ験、今回採取した種子を用いたタ験を第2タ験とする。)石英砂を敷いた直径9cmのプラスチック製シャーレを各地点、各温度条件につき3シャーレずつ用意し、第1タ験については1シャーレにつき50個、第2タ験については100個ずつ入れた。これを、温度勾配型恒温器(TG100-ADCT,NK
SYSTEM)に入れてタ験を行なった。温度勾配恒型温器内の温度設定は、第1タ験では30/15℃、25/13℃、22/10℃、17/8℃、10/6℃(昼14hr、夜10hr)の5段階、第2タ験では30/15℃、25/13℃、17/8℃(昼14hr、夜10
hr)の3段階とし、昼間の光量子密度は蛍光灯を用いて約30μmolm-2s-1に調整した。
第1実験においては2004年4月15日からタ験を開始し、タ験開始後1ヶ月間は毎日、その後は1〜3日おきに観察し、肉眼で幼根の出現が確認できたものを発芽種子とみなし、数を数え記録した後に取り除いた。また、観察日ごとに蒸留水を注ぎ足して常時シった状態を保った。こうした観察を新たな発芽が見られなくなるまで約1ヶ月間続け、2004年5月19日から10月10日までの約5ヶ月間4℃で冷シ処理を行なった。冷シ処理とは、種子に冬の定温を経験させることによって、胚の後熟を促進するなどして休眠の解除を促すための処理である。冷シ処理後は、再び温度勾配型恒温器内で約2ヶ月間同じ温度設定にてタ験を行なった。温度設定が17/8℃、10/6℃のものについては、後半約1ヶ月は発芽を促進させるために30/15℃の温度設定下にシャーレごと移動した。第2タ験については2004年7月29日からタ験を開始し、タ験1と同様にタ験を行なった。冷シ処理期間は1ヶ月とし、冷シ処理後約2ヶ月のタ験のうちの後半約1ヶ月は、温度設定が17/8℃のものだけ30/15℃の温度設定下にシャーレごと移動した。
4.人工被陰下における栽培実験
〔目的〕
ハナダイコンの生長・生存に対する生育光条件の影響を、人工的に光条件を制御して栽培することによって解明する。
〔方法〕
2004年8月2日、6月の相対光量子密度が20%(テニスコート横)、30%(西門右)、70%(プール横)の3地点より採取した種子を、1地点につき8つ用意したプランター(縦23cm、横63cm、高さ18cm)それぞれに1プランター100個ずつ播種した。約2ヶ月間裸地で栽培し、10月7日時点で生育している個体を記録した。
同大学構内に黒色寒冷ムを用いて相対光量子密度が3%、11%、14%、100%の4段階の光強度区を設け、各光強度区内に1地点につき2プランター(相対光強度30%地点から採取した種子については発芽がほとんどないプランターが2つあったため、11%区と14%区においては1プランター)を10月7日に設置した。水やり・枯死確認は、毎週1度に行ない、その際にデジタルカメラ(C-2040
ZOOM,OLYMPUS)を用いて全光強度区のハナダイコンの個体を撮影した。生長解析のためのサンプリングは2004年10月7日、11月8日、12月8日に行なった。また、各光強度区における気温推移を測定するために、デジタル温度計(TR-52,T
and D)をそれぞれ地上50cm地点に設置し測定した。
*生長解析
乾燥重量と葉面積の測定
採取した個体を根・茎・葉の部分に分け紙袋に入れ、送風定温乾燥機(FC-610 ADVANTEC)で1週間80℃で乾燥させた後、電子上皿天秤(BP310S
SARTORIOUS)で乾燥重量を測定した。葉面積はサンプリング日中にカラースキャナー(JX-350 SHARP)で葉をスキャンした後に、Adobe
photoshop3.0JとNIH Image1.67を用いて測定した。
生長パラメータの計算
上記の方法により得られたデータから、次のような方法で計算した。
・ 葉面積(LA:Leaf Area)
LA=(L1+L2+L3+…)*C
L:スキャンした葉のドット数
C:ドット数/面積の換算計数(今回は25�ぁ�155725ドットを用いた)
・相対生長速度(RGR:Relative Growth Rate)
RGR={Ln(W2)-Ln(W1)}/(T2-T1)
T1:前サンプリング日 T2:現サンプリング日
W1:T1における個体総乾燥重量(g)
W2:T2における個体総乾燥重量(g)
・ 純同化率(NAR:Net Assimilstion Rate)
NAR=(W2-W1){(Ln(LA2)-Ln(LA1))/(T2-T1)*(LA2-LA1)
T1:前サンプリング日 T2:現サンプリング日
LA1:T1における個体あたりの葉面積(m2)
LA2:T2における個体あたりの葉面積(m2)
・ 比葉面積(SLA:Specific Leaf Area)
SLA=LA/LW
LA:1個体あたりの葉面積(m2)
LW:1個体あたりの乾燥重量(g)
・ 葉面積比(LAR:Leaf Area Ratio)
LAR=(LA2/W2+LA1/W1)/2
LA1:前サンプリング日の 1個体あたりの葉面積(m2)
LA2: 現サンプリング日の 1個体あたりの葉面積(m2)
W1: 前サンプリングにおける個体総乾燥重量(g)
W2: 現サンプリングにおける個体総乾燥重量(g)
・ 葉重比(LWR:Leaf Weight Rate)
LWR=LW/W
LW: 1個体あたりの乾燥重量(g)
W: 1個体あたりの総乾燥重量(g)
・ 茎重比(SWR:Stem Weight Ratio)
SWR=SW/W
SW: 1個体あたりの乾燥重量(g)
W: 1個体あたりの総乾燥重量(g)
・ 根重比(RWR:Root Weight Ratio)
RWR=RW/W
RW: 1個体あたりの乾燥重量(g)
W: 1個体あたりの総乾燥重量(g)
<ハリエンジュ>
1.渡良瀬川流域における分布調査
〔目的〕
渡良瀬川流域におけるハリエンジュの分布現況を解明し、またハリエンジュの分布と立地条件の関係を解析する。
〔方法〕
群馬県、栃木県内を流れる渡良瀬川と桐生川の上流から中流において、ハリエンジュの生育地を2004年8月4日に探索した。その際、GPS(ポケナビ map21EX
Empex)を用いて生育の見られた地点の位置情報(緯度、経度)を記録した。また、桐生市元宿町の渡良瀬川河川敷において萌芽幹(ルートサッカーを含む)11本、非萌芽幹5本を伐採した。
*ルートサッカー…根萌芽のこと。1つの個体の根から新しい
個体が生まれることにより個体数を増やす。
ハリエンジュは細粒砂層において根を平面的
に拡大させることができ、また正の屈光性が
強く幹からの萌芽が著しく生長が早いので樹
林化を促進させている(清水ほか 1999)。
2.発芽実験
〔目的〕
ハリエンジュの種子発芽条件を解明し、種子繁殖の可能性を評価する。
〔方法〕
群馬大学荒牧キャンパス構内(馬術部周辺)で2004年8月6日に採取した種子を用いた。石英砂を敷いた直径9cmのプラスチック製シャーレを各温度条件につき3シャーレずつ用意し、1シャーレにつき50個入れた。これを、温度勾配型恒温器(TG100-ADCT,NK-
SYSTEM)に入れてタ験を行なった。温度勾配型恒温器内の温度設定は、30/15℃、25/13℃、22/10℃、17/8℃、10/6℃(昼14hr、夜10
hr)の5段階とし、昼間の光量子密度は、蛍光灯を用いて約30μmolm-2s-1に調整した。2004年8月13日からタ験を開始し、タ験開始後1ヶ月間は毎日、その後は1〜3日おきに観察し肉眼で幼根の出現が確認できたものを発芽種子とみなし、数を数え記録した後に取り除いた。また、観察日ごとに蒸留水を注ぎ足して常時シった状態を保った。約1ヶ月行なったが吸水が悪いためわずかしか発芽が見られなかったので、全ての未発芽種子にカッターナイフを用いて1個ずつ傷を付けた後、蒸留水で種子表面を洗浄し、再びシャーレに戻してタ験を続けた。しかし約2週間後になっても、吸水はしているが発芽がほとんど見られなかった。その原因は、黒ずんでいたシャーレの水に、種子から溶出した発芽阻害物ソがあるためと考え、新たに石英砂と蒸留水を入れたシャーレに全ての未発芽種子を移し替えた後、タ験を続行した。
3.年輪解析
〔目的〕
ハリエンジュの萌芽幹と非萌芽幹の年輪解析によって、両生育型の生長比較を行う。これにより、ハリエンジュが伐採や倒壊などの障害を受けた際に、萌芽によって急速に再生できるメカニズムを解明する。
〔方法〕
1の調査で伐採してきたハリエンジュをコ内で約3ヶ月乾燥させ、2004年11月19日に、年輪を計測しやすくするため電気カンナとサンドペーパーを用いて断面を研磨した後、水道水で洗い流した。約1週間後コ内で乾燥させた後、カラーイメージスキャナー(GT8700
EPSON)で断面と、年輪幅を計測するための定規をスキャンした後に、Adobe Photoshop7を用いて年輪幅を全て測定した。各年輪ごとに間隔を計測し、表面が楕円形になっているものに関しては、半径の短い方と長い方の半径を同様に計測した後平均値を算出した。それぞれの年輪の幅を足したものを積算半径とした。
積算半径=A+B1+B2+…
A:1年目の半径(mm)
B:各年輪の幅(mm)
4.樹高・胸高直径測定
〔目的〕
群馬大学学荒牧キャンパス構内に成立しているハリエンジュ林において、成木の樹高・胸高直径(DBH)の頻度分布を解明する。これによって、ハリエンジュ林の生長・生存動態を推定し、またハリエンジュ林下に生育するハナダイコンとの相互関係を解析する。
〔方法〕
群馬大学荒牧キャンパス構内(馬術部周辺)に生育する成木中の30本程度を対象とし、GPS(ポケナビ map21EX Empex)を用いて位置情報を記録した。その後、樹高15m以下のものについては測幹(竹谷商事)を用いて直接樹高を測った。15mより高い木については、測幹を5m延ばした状態をデジタルカメラ(C-2040
ZOOM,OLYMPUS)で撮影し、測幹との比率で樹高を算出した。このため、若干過小評価となっている可能性がある。