毎木調査
群馬大学構内混交林において一辺約30m、玉原高原ブナ林において約50mの正方形区を設定し、この中の樹高2m以上の全成木の種名と位置、胸高直径(DBH, Diameter at Breast
Height)を測定した。このデータを基に樹木位置図を作図した。GPS(ポケナビmap21EX,Empex)を用いて位置を測定し、巻尺を用いてDBHを測定した。玉原高原ブナ林においては、近くのポール(約270cm)と一緒に写真をとって樹高を求めた。また、近くにポールのない木については人間の影(身長165cm)と樹高の影を同時に測定し比較することで、樹高を求めた(抽出測定した樹木の本数は合計16本)。抽出測定した樹木の樹高とDBHから種類別に回帰式を作り、抽出木以外の木の樹高を推定した。群馬大学構内混交林では、15m以下の樹木については、15mの測幹(竹谷商事)を用い、直接測定した。また、15m以上の樹木については、測幹と一緒に写真をとって樹高を求めた(抽出測定した樹木の本数は19本)。玉原高原ブナ林では種名と位置およびDBHを 2004年9月10日に、樹高を2004年11月20日測定し、群馬大学構内混交林では2004年11月25日、2004年12月16日に測定した。
各調査地において、ポリエステル網を張った一個の開口面積が0.132m2と、0.0962m2の籠(以降リタートラップと表す)を約10m間隔の二直線上に、2m間隔で合計20個ずつ設置した(写真1)。これにより落葉・落枝(リターフォール)を得て、月に一度回収して持ち帰った。送風定温乾燥機(ADVANTEC FC-610)を用い、80℃で一週間乾燥させた後、電子天秤(sartorius BP 310S)を用いて乾燥重量を測定した。リタートラップの設置期間は群馬大学構内混交林では2004年4月15日から2004年12月14日、玉原高原ブナ林では2004年4月29日から2004年11月20日であった。群馬大学構内混交林においては、2004年12月〜2005年4月のデータがとれなかったため、亀澤(2002)のデータを用いてこの間の値を推定した。
成木生長と純生産量の算出
亀沢(2002)の毎木調査結果と今回の毎木調査結果を比較して、同一であると判断することができた成木について、その差分をとることによって年間のDBH生長速度を算出した。算出に用いた成木は、玉原高原ブナ林でブナ20本、群馬大学構内混交林でアカマツ5本、コナラ7本であった。
このように、個々の成木の直接比較によって生長量を算出することは多大な誤差を生ずる危険性が高かった。そこで亀沢(2002)の毎木調査結果と今回の毎木調査結果それぞれについて、個々の成木のDBHから幹および根の現存量を算出し、その総和を分布面積で除することで各年のヘクタールあたりの成木現存量を算出し、差分をとることによって年間の樹木生長速度を算出した。DBHから幹および根の現存量を算出するに際しては、Kira・Ogawa(1968)の結果をもとにして作成した、以下の回帰式を用いた(図)。
ブナの幹の現存量=2.0888×ブナの根の現存量^(1.1404)
ブナの根の現存量=0.080956×DBH2^(0.9967)
アカマツの幹の現存量=5.3402×アカマツの根の現存量^(0.94146)
アカマツの根の現存量=0.077311×DBH2^(0.99528)
なお玉原高原ブナ林においては、ブナ以外の樹種についてもブナの式を適用し、群馬大学構内混交林においては、アカマツ以外の樹種についてもアカマツの式を適用した。これらの措置は、データの不足に起因する不可避なものであった。
群馬大学構内混交林の葉の現存量は、佐藤(1955)の結果に基づいて算出した。その際、アカマツ以外の樹種の葉の現存量は計算に含めなかった。玉原高原ブナ林の葉の現存量は、生育樹種が全て落葉樹であったため、リタートラップ法によって回収された枯葉の総量から算出した。これらの葉の現存量の2年間の差分をとることによって、葉量増加速度を算出した。
以上より、それぞれの森林における年間の純生産量は、以下の式により算出した。
純生産量(t/ha/year)=樹木生長速度+葉量増加速度+リター生産速度
CO2放出速度測定地点の地温・土壌含水率
CO2放出速度測定時に、同時に各地点において、深さ3cmにおける地温をデジタル温度計(T&D corporationのThermo
Recorder おんどりJr.)を用いて測定した。同時に土壌含水率を各地点において、土壌含水率計(Theta probe)を用いて測定した。
土壌CO2放出速度
携帯型CO2センサー(GM70,VAISALA)を用いた密閉型土壌呼吸チャンバー(体積11.314l、底面積0.04906F)を用いて、直接土壌からのCO2放出速度を測定した(写真2)。1地点につき5分間 (15秒毎に自動測定)した。各調査地内で20地点を固定して毎月一度測定した。測定は群馬大学構内混交林では2004年4月15日から2004年12月14日、玉原高原ブナ林では2004年4月29日から2004年11月20日の間に行った。
得られたデータから、X軸を時間[s]、Y軸をチャンバー内のCO2濃度[ppm]として、最小二乗法を用い回帰式を作成し、1秒あたりのCO2濃度上昇速度を算出した。
これらの測定結果をもとにして、1時間一平方メートルあたりのCO2放出速度を以下の式から求めた。
土壌CO2放出速度[g/h/m2] = {チャンバーの内側の体積(11.314)[l]×
1秒あたりのCO2濃度上昇速度×10-6[t]×
273.16[K]/(273.16+気温[℃])[K]/22.4[l]×
CO2の分子量(44)}/チャンバーの底面積(4.906×10-2)
[m2]×(60×60)[h]
連続地温測定
デジタル温度計(T&D corporation Thermo Recorder おんどりJr.)を用いて、深さ3cmの地温を、群馬大学構内混交林には6ヶ所、玉原高原ブナ林には4ヶ所で連続測定した。測定は群馬大学構内混交林では2004年4月15日から2004年12月14日、玉原高原ブナ林では2004年4月29日から2004年11月20日の間に、20分おきで自動的に行った。
リター分解速度
メッシュサイズ0.09mm2、全体の大きさ690cm2のポリエステル網の袋(以降リターバッグという)を各調査地内に12個ずつ設置した。これらのリターバッグに現場のリターを構造を崩さないように切り取って入れ、元の場所に戻した。毎月一度リターバッグ全体の湿重量を現地で電子天秤(エーアンドデー,HL-200)を用いて測定した。またリターバッグを設置した地点の周辺3地点からリターを採取して持ち帰り、湿重量、乾燥重量を計測した。持ち帰ったリターの湿重量、乾燥重量から現地のリターバッグ内のリターの含水率を推定した。これらの結果をもとに、月ごとのリター乾燥重量減少率、一日あたりのリター乾燥重量減少速度を以下の式から求めた。
1日あたりの減少速度=乾燥重量減少量/先月の乾燥重量/日数