材料および方法

 

1.     分布調査および各分布地点の相対光強度測定

「目的」

 前橋市内においてハナダイコンがどのような光環境の地域に生育しているのかについて調査し、その分布と光環境の関係を解明する。

「方法」

 ハナダイコンの花期は春であるため、2003412日、426日、427日、429日、510日に分布状況の調査を行った。群馬県前橋市において、先行研究(中嶋 2003)で行われた地点のうち、50地点について再び調査を行った。その際GPS(ポケナビmap21EX、  Empex)を用いて、各地点の位置情報(緯度、経度)を記録していった。

光強度の測定は、光量子センサー(LI-COR LI-190SB)を用いて各地点ごとに15カ所、ハナダイコン群落の直下において行った。

 同時に、群馬大学荒牧キャンパス構内の裸地においても同様にして光量子密度を連続測定し、これらと同時刻における各地点での光量子密度の比率をもって光強度を表すこととした。なお、測定日はいずれも晴天であったため、この比率は通常用いられる相対光量子密度(曇天下で測定することになっている)とはならないので、相対光強度と称するものとした。

 

2.発芽実験

「目的」

1で調査を行った地点より、相対光強度100%(上泉町1801)、10%(荒牧町4-2)であった地点で採取したハナダイコンの種子発芽の温度特性を解析する。

「方法」

相対光強度100%(上泉町1801)、10%(荒牧町4-2)であった地点で2003年6月21日に採取したハナダイコンの種子を用いた。石英砂を敷いた直径9センチのプラスチック製シャーレを1地点につき3シャーレ用意し、それぞれ種子を50個ずつ入れた。これを、温度勾配恒温器(TG100 ADCT、NK SYSTEM)に入れて実験を行った。温度勾配恒温器内の環境設定は、昼間の14時間を25℃、夜間の10時間を13℃とする高温環境(初夏、あるいは初秋の温度環境をシュミレート)と、昼間の14時間を14℃、夜間の10時間を8℃とする低温環境(初春の温度環境をシュミレート)の2パターンとした。

全てのシャーレを実験開始(7月18日)から1ヶ月間は毎日、その後は1〜3日おきに観察し、肉眼で幼根の出現が確認できたものを発芽種子とみなして、数を数えた後に取り除いた。また、観察日ごとに蒸留水をつぎ足して常時湿った状態を保った。こうした観察を新たな発芽が見られなくなるまで約2ヶ月間続け、積算発芽率を最終発芽率とした。人工環境下での実験は、新たな発芽が観察されなくなった時点で終了したが、その後もシャーレを約2ヶ月間室内に放置することにより、種子に温度の変化を与え続けた。この処理により、新たに発芽した種子数も数えた。これは、恒温器による温度処理下では発芽しなかった種子を、全てではないにしろ発芽させ、それによって真の発芽可能な種子の割合に近い値を解明するための処置である。

 

3.     個体重量と種子数の測定

「目的」

1で調査を行った地点より、異なる光条件下においてハナダイコンがどの程度生長し、どれだけの種子を生産するかを明らかにする。

「方法」

ハナダイコンの花期が終わり、種子の成熟する621日に行った。1で調査を行った地点のうち、その相対光強度が100%(上泉町1801)、50%(荒牧町360)、40%(富士見村横室894)、30%(荒牧町4-2)、20%(関根町3-7)、10%(荒牧町4-2)であった地点より、個体と種子を1地点につき、10個体採取しス。その後、室内にてサンプル個体を1ヶ月ほど乾燥させ、1個体ずつ茎および根と、種のふたつに分けた。なお、葉は脱落していてほとんど回収できなかったため、測定しなかった。

茎および根部分はさらに乾燥機(FC-610ADVANTEC)内で80℃で一週間乾燥させた後、電子天秤(BP310SSartorius)を用いて1個体ずつ乾燥重量測定を行った。種子も同様に、1個体ずつ種子数を測定した。1個体につき10個の種子の重量をまず測定し、その後残り全ての種子の重量を測定した。その測定値を下記の式にあてはめて、種子数を算出した。

10個の種子の重量=A  残り全ての種子の重量=B として、

種子数=(A+B)/A×10

 

4.   人工被陰下における栽培実験

「目的」

 1の調査より相対光強度100%(上泉町1801)、30%(荒牧町4-2)、10%(荒牧町4-2)の3地点について、異なる光条件下におかれたハナダイコンの枯死率および葉面積推移を調査することにより、生育の最適光強度を解析する。

「方法」

 相対光強度が100%(上泉町1801)、30%(荒牧町4-2)、10%(荒牧町4-2)3地点より採取した種子を、2003年9月25日に群馬大学構内において播種し、栽培した。その際、1ポット(直径11.5センチ、高さ10.5センチ)に種子を5個ずつ播種した。約2ヶ月後、発芽した数をポットに記した。

 同大学構内に黒色寒冷紗を用いて相対光量子密度が100%、13%、6%、0.3%の4段階の光強度区を設け、各光強度区内に1地点につき約15ポットを設置し水やり・枯死確認は、毎週火曜日と金曜日に行った。

 葉面積測定については、11月中3回に分けて全光強度区内のハナダイコンの個体をデジタルカメラ(C-2040 ZOOM 、OLYMPUS)を用いて撮影しパソコンに取り込んだ後に、Adobe Photoshop 3.0Jで処理してNIH Imageで葉のドット数を求めた。

上記の方法により得られたデータから、次のような方法で葉面積を計算した。

・葉面積(LALeaf Area

LA=L*C

L:スキャンした葉のドット数

C:ドット数/面積の換算計数

 

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