方法

 

 アドバンテストビオトープは20014月に造成され、今年度で3年を経過する。本ビオトープにおいて、植物相および物理化学的環境条件の多様化がどの程度実現されているのか、現地調査を行った。今年度は、植物相調査、植生調査、ギニアグラス群落分布調査、相対光強度測定、土壌含水率測定、土壌窒素濃度測定、気温・地温測定を行った。なお、本年度も本研究と平行して、動物・昆虫についての調査は清水建設が行い、そのデータ(「アドバンテスト群馬R&Dセンタビオトープ 平成15年度 14回モニタリング結果(速報版)」、清水建設 2003)を利用した。

 

植物相調査

 ビオトープ内の全域において、植栽種以外の植物出現種を調査した。出現が確認された種については、採集して研究室に持ち帰り、図鑑(「日本の野草」、林弥栄編 1983)を用いて種の同定を行った。また、可能な限り各植物の標本を作製した。調査日は2003426日、67日、628日、722日、827日、918日、1018日、1115日であった。

 

植生調査

 ビオトープ内の草原5地点(ヨモギ草原3地点、シバ草原1地点、ススキ草原1地点)、林内3地点の計8地点(3)において植生調査を行った。ヨモギ草原3地点および林内3地点においては、調査地点に4F(12m)のコドラートを設置し、さらにコドラートを16分割した上で、コドラード内の植物種のリストアップと各出現種の被度測定を行った。シバ草原においては、100F(110m)のコドラートを設置し、コドラード内の植物種のリストアップ、各出現種の被度測定を行った。ススキ草原においては、調査地点の44F(2.5m×17.6m)内での植物種のリストアップを行った。調査日はヨモギ草原では200367日、シバ草原、ススキ草原では同年722日、林内では同年628日であった。

 

ギニアグラス群落分布調査

 本年度の植物相調査により、外来植物のギニアグラスの群落を多数確認したため、群落の分布状況を測定した。ビオトープ内の全域においてギニアグラス群落を確認したら、地点番号を設け、ポータブルGPS(ポケナビmap21EXEMPEX)を用いて位置を測定し、目視による群落面積の測定を行った。また、これらの測定値をもとに群落分布の地図化を行った。調査日は2003722日であった。

 

生物学的記載

ギニアグラス(学名:Panicum maximum Jacq.、標準和名:ギニアキビ)は南アフリカ原産のイネ科キビ属の多年生草本である。大型でその高さは2mにも達する。もともと牧草として世界各国で栽培されていたものが野生化し、日本でも1970年代から関東地方以西でしばしば農耕地周辺に発生するようになっている。

 

相対光強度測定

ビオトープの森林内36地点(4)において、光量子センサ(LI-190SBLI-COR)を用いて光強度を測定し、同ビオトープ内の裸地で測定した光強度との相対値を算出した。測定日は2003827日であった。当日は晴天であったため、この相対値を相対光量子密度とせず、相対光強度とした。

 

土壌含水率測定

ビオトープ内の水辺3地点、森林内2地点、草原8地点(ヨモギ草原3地点、シバ草原3地点、ススキ草原2地点)の計13地点(5)において、土壌含水率計(Theta Probe Type MLDelta)を用い土壌含水率を測定した。測定は各地点3回行い、その平均値を算出した。なお、林内1、林内2については出力値にばらつきがあったために、各地点5回測定し、その平均値を算出した。測定日は2003918日であった。

 

土壌窒素濃度測定

 ビオトープ内のヨモギ草原3地点、林内3地点、水辺2地点の計8地点(6)から土壌(50cm四方、深さ約10cm)を20031115日に採取し、ェ定まで冷凍庫で保管した。各地点の土壌40gを蒸留水30mlで懸濁して、約10分間静置した後、ガラスファイバー製濾紙(GFC-NO2ADVANTEC)を使用して濾過した。この濾液中の硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素濃度をポータブル簡易窒素計(NM-10,東亜ディーケーケー)を用いて測定した。なお、林内1、林内3については、土壌中にシルト成分が多く含まれており、濾過だけでは測定が不可能であったために、懸濁には土壌60g・蒸留水45mlを用い、濾過の後に、濾液を遠心分離機(M-160-24,佐久間製作所)に6,000rpm10分間かけてシルト成分を分離し、その後、上積液中の硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素濃度をポータブル簡易窒素計を用いて測定した。測定は各地点3回ずつ行った。

また、各地点の土壌10gを送風定温乾燥機(FC-610ADVANTEC)内にて80℃で1週間乾燥させた後、乾燥重量を測定し、湿潤重量と乾燥重量から土壌含水率を以下の計算により求めた。

 

土壌含水率=(湿潤重量−乾燥重量)/湿潤重量

 

 ポータブル簡易窒素計での測定値と土壌含水率から、乾燥土壌1gあたり、および土壌水分1Lあたりの硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素濃度を算出した。また、算出値から窒素態比を以下の計算により求めた。

 

窒素態比=(硝酸態窒素濃度+亜硝酸態窒素濃度)/アンモニア態窒素濃度

 

気温・地温測定

 ビオトープ内10地点(72)において、地上約1mおよび深さ約10cmの土壌中それぞれに温度データロガー(TR-52T & D Corporation)を設置し、気温および地温を測定した。気温測定に際しては、センサ先端部分をアルミニウムカバーで覆い、直射日光が当たるのを避けた。測定期間は気温、地温ともに2003426日から同年1018日であり、この間20分おきに気温と地温を自動記録した。測定データから、立地条件別の月平均気温および地温を算出した。

 

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