結果および考察

1.発芽に対する温度の影響
実験1)
 高温環境下ではハナダイコンは66%(図1)、ルドベキアは81%(図2)、オオキンケイギクは62%(図3)、ケナフは61%(図4)と高い発芽率を示した。4種の植物にとって生育に適した温度であると言える。特に、ルドベキアは81%と他の3種の植物より高い発芽率を示した。低温環境下ではハナダイコンは25%(図1)、ルドベキアは83%(図2)、オオキンケイギクは72%(図3)、ケナフは33%(図4)の発芽率を示した。低温環境下でもルドベキアとオオキンケイギクは高い発芽率を有するといえる。


実験2)
 10/6℃の温度ではハナダイコンは10.6%(図5)、オオキンケイギクは81.3%(図5)の発芽率を示した。4℃の温度ではハナダイコンは4%(図6)、オオキンケイギクは40%(図6)の発芽率を示した。ケナフは、10/6℃(図5)でも4℃(図6)でも全く発芽がみられなかった。10/6℃の温度ではハナダイコン(10.6%)の発芽率は低かったが、オオキンケイギク(81.3%)は高い発芽率を示した。また、オオキンケイギクは低温条件下でも72%と高い発芽率を示していることから、低温でも種子が落ちたらすぐに発芽する植物であると考えられる。ケナフが10℃でも4℃でも全く発芽がみられなかったのは、ケナフの原産地がアフリカ西部であるため寒さに弱いと考えられる。


実験3)
 吸水種子を1日冷凍した場合ではオオキンケイギクは5.3%(図7)、ケナフは1.3%(図9)が発芽し、乾燥した種子を1日冷凍した場合ではオオキンケイギクは88%(図7)、ケナフは88%(図9)が発芽した。吸水種子を12日間冷凍した場合ではオオキンケイギクは9.3%(図8)、ケナフは1.3%(図10)が発芽し、乾燥した種子を12日間冷凍した場合では、オオキンケイギクは88%(図8)、ケナフは88%(表10)が発芽した。以上の結果から、オオキンケイギクは寒さに強い植物であると言えるが、吸水したまま冬をむかえて凍結すると種子が死んでしまう。これは、ケナフでも同様な結果になった。ケナフは1日間冷凍後でも12日間冷凍後でも、乾燥した種子なら88%と高い発芽率を示した。ケナフは乾燥した種子を冷凍して行った実験(1日冷凍:88%、12日冷凍:88%)の方が実験1の高温環境下(61%)より発芽率が高くなった。これは、冷凍よってほとんどの細菌が活動を停止したため、再び高温に置かれても細菌が増殖する前に種子が発芽したためと考えられる。ケナフは実験1(図4)においても実験3(図9図10)においても、発芽実験を始めてから約3〜5日後には発芽率が最高点に達したことから、発芽速度が著しく速い植物であると考えられる。

2. ハナダイコンの生長解析
 バイオマス(図11)は10月〜11月は増加した。はRGR(図13)は10月〜11月はプラスであった。これは、LAR(図15)が高く、NAR(図14)がずっとプラスが続いたためである。
 2001年10月17日のSLA(図16)をみると0.5と高い。これは、LARが高いため葉がたくさんあり、葉の光合成速度が高くなったからである。2001年10月29日のNARは2001年10月17日に比べると高かった。これは、2001年10月29日より葉を薄くして葉面積を広げているからである。SLAを比較すると2001年10月17日に比べ2001年10月29日では葉に厚みがあることがわかった。LWRは2001年10月17日に比べ2001年10月29日にかけて減っていた。これに対して、RWRは増加しており、根の乾燥重量の増加率が大きいことを反映している。
 
3. 分布状況調査
 前橋市内・宮城村・大胡町・富士見村の分布状況調査(図20・表1)から、計29地点で生育が確認された。オオキンケイギクは1地点(図20の地点番号12)のみ生育が確認された。その地点は前橋市二之宮町の上武道路の脇で緑化用として植えられていた。ルドベキアは5地点で生育が確認された。1地点(図20の地点番号1)は赤城山へ行く赤城道路のカーブ1の傾斜地で、他の4地点(図20の地点番号2・3・28・29)では大きい花壇に観賞用として植えられていた。ハナダイコンは23地点で生育が確認された。群馬大学構内では16箇所でハナダイコンの生育が確認された(図21)。

4. インターネット調査
 「ハナダイコン」をキーワードとして検索し502件、「ルドベキア」は2250件、「オオキンケイギク」は896件、「ケナフ」は21000件のホームページを抽出した。(2001年1月16日現在)ハナダイコンは日本全国で26県(図22)、ルドベキアは18県(図23)、オオキンケイギクは24県(図24)で生育が確認された。使用用途別にすると、ハナダイコン(表2)は観賞用5県、緑化用1県、野生化21県が確認された。ルドベキア(表3)は観賞用17県、緑化用1県、野生化2県、販売用2県が確認された。オオキンケイギク(表4)は観賞用12県、緑化用6県、野生化15県が確認された。

 
 ハナダイコンは高温環境下で発芽率が高く、低温環境下では発芽率が低くなった。このことは、インターネット調査の結果、日本では北部地域より南部地域に分布が多かったことと整合性がある。つまり、低温では発芽が抑制されるため北部地域に分布が少なかったと思われる。また、ハナダイコンは葉が多く、光合成のかせぎが少ない時期に生長できる。すなわち、他の植物は枯れていて競争相手が少ない秋から冬にかけて生長できる。発芽特性から春に開花・結実、夏に発芽し、秋から冬にかけて生長する生活史が明らかになった。以上の特徴から、特に南日本において旺盛な拡大傾向にあるものと思われる。
 オオキンケイギクとルドベキアはあらゆる温度環境下で発芽率が高かった。また、オオキンケイギクは吸水した種子を冷凍しても一部発芽した。このことは、インターネット調査の結果、日本全国で分布していたことと整合性がある。両者とも発芽特性から幅広い温度に適応できるため、日本全国で分布していたと思われる。
ケナフは今のところ日本ではまだ帰化したという報告はないが、フロリダ州ではケナフと同じHibiscus属のオオハマボウ(H.tiliaceus)といった栽培種が帰化し、自生種を圧迫しているという報告がある(Florida Extoic Pest Plant Councilの1999年次学会で発表された)。発芽実験の結果では低温環境下では発芽しなかったことから、日本で分布するとしたらフロリダ州と気候条件が似ている南部地域に限られ、北部地域では広がらないと思われる。しかし、乾燥した種子なら冬を越せるため、北部地域でも冬に雨の少ない地域は定着する可能性がある。

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