VI-2. 方法

 当ビオトープは2001年4月に完成したとはいえ、植裁種が順調に定着するか、植裁種以外のどのような植物が出現するかを追跡調査していかなければならない。また、生物の多様性の創出のためには各種環境要因の多様性も創出しなくてはならない。そのため、調査地点3では、植生調査、光強度調査、含水率調査、土壌シードバンク定量のための実験を行った。

[ 調査1 ] 植生調査
 月に一回、ビオトープ全域において、植栽種以外の出現種を調査した(調査日:2001年6月16日、7月28日、8月30日、9月27日)。出現を確認した場合は、採集し研究室に持ち帰り、種の同定を行った。その結果、ビオトープの趣旨にそぐわない帰化植物などが確認された場合は、その刈り取りの時期などを検討し、指示を出した。また、刈り取りの際に間違いがないように、各植物の標本を作り、アドバンテストに提出した。

[ 調査2 ] ビオトープ内の土壌含水率調査
 ビオトープには、渓流と池が作られている。それらの水系が土壌水分状態にどのような影響を及ぼしているのか調査した。調査日は地点1が2001年7月28日、8月30日、9月27日、地点2が7月28日である。調査地点は[図5]に示した。土壌含水率計(Theta Probe TypeML,Delta社)を用い、池から0.5m置きに8m測定をした。平行線上にもう一点、同様の方式で15m測定した。また、4地点の土を持ち帰り、土壌含水率計の値を補正した。持ち帰った土は2週間冷蔵庫で保管し、その後湿潤重量を測り、その土を乾燥機(80°)に2週間入れ、水分を蒸発させた後、乾燥重量を測定した。湿潤重量と乾燥重量から含水率を以下の計算で求めた。

 土壌含水比=(wetwt-drywet)/drywet
 土壌含水率=((wetwt−drywet)/wetwt)

[ 調査3 ] 植裁種の定着率調査
 植裁した各植物の定着率を2001年8月30日、9月27日調査した。調査種はヨモギ、ススキ、チガヤの3種である。各植物の植栽地にコドラート(サイズは[表5]に示す)を作り、その中で当該植物の株数を数え、当初植栽株数との比をもって定着率とした。調査地点は[図5]に示した。

[ 調査4 ] 森林内における相対光強度調査
アドバンテストビオトープにおいて、最も南側、車道に近い区域の光強度を2001年9月27日に調査した。調査地点は、ビオトープ造成以前からあった主にケヤキとクスノキを囲むように、新たに高木を植裁した地域である。しかし、道路とビオトープを隔てるバッファがないため、常に林床は光にさらされている。また、植裁した樹木がまだ大きく育っていないため、上方からの光にもさらされている現状である。このため、実際どれほどの光強度の多様性が森林内で実現されているのかを調査した。光量子センサー(IKS-X7,Koito工業)を用いて、森林を34地点測定した。調査地点は[図5]に示した。同ビオトープ内の裸地で測定した光強度との相対値を算出した。

[ 調査5 ] 土壌シードバンクの定量化
 2001年4月から11月までの出現植物を毎月調査し、帰化植物がみられた場合には除去作業を指示してきた。しかし、今年出現した種のみが来年も出現するわけではなく、土壌シードバンクからの出現があり得る。そこで、アドバンテストビオトープ内、3地点の土を持ち帰り、発芽実験を行った。これによって出現植物に対して早期に対策を講じることが可能となる。
 アドバンテストビオトープ内の3地点の土(表面より深さ3〜5cm)を7月28日採取し、研究室に持ち帰った。採取地点は[図5]に示した。持ち帰った土は、1ヶ月間4°Cの冷蔵庫で保管した。その後、各地点の土をほぼ半分ずつ第一回発芽実験に用いた。バットに土(1007g〜1556g)を入れ、重量を計測した後、人工気象器(サンヨー、MLR-350)に入れ、夜15°を10時間、昼25°、光量70μmolm-2s-1を14時間という設定下で、実験を行った。実験中は、毎日一回水道水を与えた。芽生えがみられたら、発芽としてカウントした。実験終了日にバットの中の植物を同定し、発芽種を確認した。その時点では同定が出来なかった種については、種が同定できるまで継続して同条件で栽培を行い、実験を続けた。なお、3地点の土は土壌含水率調査と同様に、湿重量と乾燥重量を測り、土壌含水率を求めた。

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