IV-3-2. ヒアリング調査


 覚満淵は「県立赤城公園」に属しており、その管理の指針は、群馬県立公園条例に基づいている。本条例における「県立公園」の定義は、県が設置する都市公園及び県有公園である。よって、条例の内容も、都市公園に主体をおいたものとなっている。尾瀬は国定公園であるため、自然環境条例が適用されている。県立公園条例では、当該公園を損傷し、又は汚損すること、土地の形質を変更すること、竹木を伐採し、又は植物を採取すること、立入禁止区域に立ち入ることなどの行為の禁止などを定めている。群馬県自然環境課公園管理係ではこれに則って覚満淵の利用についての管理を行っている。また、浄化槽の設置、トイレの設置、木道の設置等なども行っている。条例は利用者に対しての禁止、制限を定めたものが多く、実際の管理方針に与える影響は少ないようにみえる。県では、「県立赤城公園」を以下のように位置づけている。1、視点:「環境・人・地域」にやさしい公園づくり、2、目的:自然環境を保全しつつ、恵まれた自然環境を多くの人に体感してもらい「潤い・安らぎ」と豊かな感性を育んでもらう。 具体的には、○人にやさしい公園整備 ○住民参加型の公園づくり ○自然学習である。県としては、湿原の保護と観光としての利用を両立する形での管理を目指している。特に県有公園であるため、「人々に湿原を利用してもらって自然の良さを体感してもらえばと思っている」と公園管理、整備係の方は述べていた。自然環境が保たれていなければ、観光資源とはならないことは認識している。
 木道改修工事の経緯は次の通りである。木道改修工事は、2001年3月23日から7月31日にかけて行われた。工期の時期は、大沼などに旅館をかまえる地域の方々との意見交換から、観光に差し支えの少ない時期ということを公園管理、整備係が配慮したものである。木道改修の理由は、木道の腐敗が進行していたためである。公園管理、整備係としては、以前から改修を検討していたが、予算等の都合によって整備を進めることが出来ないでいた。今回の工事は、林野庁補助事業「地域材利用促進木造公共施設等整備促進事業」を利用して行ったものである。また、今回の改修工事では補修ではなく、大胆な木道の付け替えをすることにした。旧木道を撤去し、新たにバリアフリーの木道(横幅1.3m)を整備したのである。これは、以前からの「車椅子での乗り入れをしたい」という要望に群馬県が応えたものであるという。
 新木道は、以前よりも湖沼から高く設置された[資料2]。また、足場は木材によってしっかりと組まれており、ボルトが表面に出る箇所が減少した[資料3]。県材であるカラマツを利用した木道は、横幅が1.3mと広く、車椅子での通行が可能である。カラマツに防腐剤を使用していないため、湿原への影響は少ないという。しかし、工事によって踏み荒らされた湿原(地点1、2-1、2-2)について今後の対策はあるのかと尋ねると、特に対策は考えていないという。「自然の自浄能力に任せておけば元通りになる」というのが群馬県の意見であった。今回の植生調査によれば、地点1、2-1、2-2は今後帰化植物が侵入してくる可能性が高く、今後も観察を続けなくてはならない。また、群馬県で行った覚満淵における調査は、赤城県立公園を管理する自然環境課が行ったものであるが、その調査結果は今回の木道改修工事には反映されていない。
 木道改修工事は引き続き行うのかを尋ねたところ、「予算が確保出来れば、今後も改修を続けたい」とのことだった。つまり、今後も横幅1.3mの木道が湖沼周辺に整備されることになるわけである[資料4]。今回のように作業車が湿原側に乗り入れての工事手法、工事後の対策の皆無を全木道を改修するまで続けていくと、覚満淵湿原が木道沿いに広範囲にわたって破壊される危険性が高いことは、今回の調査結果から明らかである。

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