IV. 赤城山覚満淵


IV-1. 調査地概要


 覚満淵は群馬県、赤城山山頂の南東部にある湿原である。赤城山大沼の南東にあり、一部に水が湛えられている。渇水時には消失することもあったほど水位は低い。湿地帯は長さ1000m、幅500mの南東-北西に細長い傾斜面上にある。この傾斜の上方には駒ヶ岳の斜面が続いているのだが、覚満淵はこの駒ヶ岳の斜面を流れ落ちる水が流れ込む湿原なのである。覚満淵の水は覚満川となって大沼方向へ流出するが、現在は、堤によってせき止められ、長径約300m水深1mほどとなっている。しかし以前は広い水面をもたない川の状態であり、川の周囲に湿原が発達していたものと考えられている。この堤は大正11年頃に築かれたものが、昭和10年秋に決壊し、修築されたものである。その後、貯水域が広まり現在の状態に至っている(堀 1975, 群馬県 1992)。
 この湖沼の中に半島状に張り出した部分(覚満淵の北東側部分)は、泥炭層が2.5m〜3m あり、イボミズゴケやムラサキミズゴケの優占する高層湿原植生が見られるが、湿原周辺部に向けて泥炭層は次第に薄くなる。泥炭の堆積がなくなるにつれ、ススキ群落、レンゲツツジやズミなどの優占する低木群落となる。覚満淵は泥炭層、植物群落からも初期の低層湿原であるといえる。なお、低木類は一部湿原内にも見られる。また、湿原をとりまく周辺の山地にはミズナラ林が広く分布している(堀 1975, 群馬県 1992)。
 覚満淵は前橋市からバスで1時間50分ほどで行ける。バス停「赤城山ビジターセンター」から覚満淵へ遊歩道があり、徒歩3分ほどで入ることができる。赤城ビジターセンター前に広い駐車場が整備されており、非常にアクセスが良い。覚満淵周辺は、付近にテニスコートやロープウェー、少し離れたところに、大沼を中心とするホテル・旅館、「赤城青年自然の家」などの宿泊施設が軒を連ねている。春はつつじ観賞、夏は湿原探索、避暑地として、冬はワカサギ釣りと様々な魅力を楽しむことができる覚満淵は、「ミニ尾瀬」と呼ばれている。
 覚満淵では、湿原の上方にある旅館の屎尿や汚物を捨てていた時期もあった。その後は木道を整備し、湿原への立入禁止を厳にしたため、汚物の投げ捨てなどは行われていない(堀 1975)。しかし、一方では観光客増大への対応のため湿原保護護岸工事や木道整備が随所に見られる。2001年は新たに木道の一部分を改修工事している。
 覚満淵のある赤城山とは、外輪山の黒山、小黒山、鈴が岳、地蔵岳、鍋割山の総称である。宮城村、赤城村、富士見村をまたいで位置している。が、赤城は県で指定された県有公園の1つであるため、県の管理下に置かれている。覚満淵の管理主体も群馬県であり、自然環境課内公園管理係が管理方法や施策の策定を行っている。

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