III. 群馬県内における水辺環境調査
 調査地は管理主体の異なる赤城山覚満淵、沼田市玉原湿原、明和町アドバンテストビオトープの3地点とした。赤城山覚満淵、沼田市玉原高原は、「タブロー型」の割合の高い観光客が訪れる水辺環境として選定した。どちらも、下車後、徒歩数分という交通の便がよい立地にある。また、湿原植生がみられる高地であり、高山植物等の撮影にも適している。このため、「タブロー型」観光客の割合が多いと思われる。
 「タブロー型」の多い観光地では、管理主体が行政であることが多い。覚満淵は県自然環境課公園管理係が、玉原湿原は沼田市市役所商工観光課が管理にあたっている。
 覚満淵は、2001年に木道改修工事が行われており、今後このような工事を続けることは湿原の破壊へとつながる。玉原湿原では湿原の乾燥化からハイイヌツゲ、ヨシの分布が拡大している。両地点共に、早急に自然環境の現状とそれに対する管理主体の姿勢を明確にする必要がある。
 アドバンテストビオトープは「タブロー脱却型」「専門家型」、両者が関わり合う水辺環境として選定した。明和町アドバンテストビオトープは、(株)アドバンテストがその管理に、ビオトープ環境調査に群馬大学社会情報学部環境科学研究室が携わっている。ビオトープには、上述のように、生態系を創出するための様々な専門知識、経験が必要となる。管理主体側には、「専門家型」の知識、調査に基づく提案を受け入れる姿勢、つまり「タブロー脱却型」の意識が求められる。
 覚満淵、玉原湿原は行政、アドバンテストは民間と管理主体が異なる。そこで、各管理主体の管理方法が、水辺の自然環境にどのような影響をもたらしているのかを調査し、比較検討を行った。
 これらの結果をもとに水辺の自然環境の保全・利用において、管理主体の果たす役割を先に述べた自然環境に対する意識の三類型にもとづいて論じた。

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