研究方法

植生・植物相調査

・赤城山覚満淵

 覚満淵全域において、設置されているワイド木道・遊歩道沿いを歩き植物相調査を行った。調査日は2009年5月28日、2009年7月10日であった。生育が確認された種はデジタルカメラによる写真撮影による記録、または採取して研究室に持ち帰るなどして種の同定を行った。2009年5月28日の調査では群馬県環境森林部自然環境課がシカの食害被害があるとして保護している、ニッコウキスゲの生育状況や確認できた個体数を調査した。ニッコウキスゲの生育が確認された地点の緯度経度を、ポータブルGPS(GPSmap 60CSx,GARMIN)を用いて測定し、記録した。


・玉原湿原

 玉原湿原において木道上および林内を歩き、植物相調査を行った。生育が確認された種はデジタルカメラによる写真撮影による記録、または採取して研究室に持ち帰るなどして種の同定を行い、主な種をリストアップした。調査日は2009年7月20日であった。


・(株)アドバンテスト ビオトープ

 (株)アドバンテスト ビオトープにおいて、8月を除き月に一回の頻度で植物相調査を行った。生育が確認できた植物種をリストアップし、写真撮影による記録または採取して研究室に持ち帰り、種の同定を行い、主な種をリストアップした。また本ビオトープ内に敷設されている水路の水辺域において、水域から陸域に向かってライントランセクトを設け、これに沿って水辺域からの距離が異なる6地点(0m、1m、2m、4m、6m、10m)にコドラート(2m×2m)を設置し、植生調査を行った。調査日は2009年4月24日、5月21日、6月25日、7月24日、9月24日、10月22日、12月17日であった。またコドラートを使用した植物相調査は10月22日に行った。

土壌含水率

コドラートを使用した植生調査実施地点と同じ場所において、土壌含水率計(ThetaProbeTypeML,Delta)を用いて土壌含水率を測定した(表10)。各地点3回の測定を行い、その平均値を算出した。測定は10月22日であった。

土壌窒素濃度

ビオトープ内の水辺域において、水辺からの距離の異なる3地点(0m,1m,2m)において、コドラート(30cm×30cm)内における厚さ約3cmまでの土壌を2009年12月17日に採取し、実験日までに冷蔵庫に保管した。各地点の土壌100gを蒸留水150mlで懸濁し、約3分間の攪拌の後約1時間放置した。それをガラスファイバー製濾紙(TOYO FILTER PAPER No.2,TOYO)を使用して濾過した。さらに濾過の後に、濾液を遠心分離機(M-160-24,佐久間製作所)に9000rpmで10分かけてシルト成分を分離した。その後上澄み液中の硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素濃度をポータブル簡易窒素計(NM-10,東亜ディーケーケー)を用いて測定した。

また各地点の土壌を送風定温乾燥機(FC-610,ADVANTEC)内にて80℃で2009年12月25日から2010年1月7日までの13日間乾燥させた後、乾燥重量を測定し、湿潤重量と乾燥重量から土壌含水率を以下の計算により求めた。

土壌含水率=(湿潤重量−乾燥重量)/湿潤重量

 ポータブル簡易窒素計での測定値と土壌含水率から、土壌水分1Lあたりの硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素濃度を算出した。また、算出値からアンモニア態窒素比を以下の計算により求めた。

アンモニア態窒素比=アンモニア態窒素濃度/(硝酸態窒素濃度+亜硝酸態窒素濃度+アンモニア態窒素濃度)

 

・板倉ウエットランド(渡良瀬遊水池、行人沼、朝日野池)

 渡良瀬遊水池、行人沼、朝日野池において、水辺を中心に生育が確認された種はデジタルカメラによる写真撮影による記録、または採取して研究室に持ち帰るなどして種の同定を行い、主な種をリストアップした。また本地域は多数の絶滅危惧種や希少種が生育しているとされていることから(大森 2009)、これらの生存確認を行った。調査日は2009年5月23日、2009年9月19日であった。


・西榛名

 数地点において徒歩で植物相調査を行い、生育が確認された種はデジタルカメラによる写真撮影による記録、または採取して研究室に持ち帰るなどして種の同定を行い、主な種をリストアップした。調査日は2009年5月5日、2009年9月7日 、2009年10月25日であった。


・石田川流域(ホタルの里公園、妙参寺沼親水公園、天沼親水公園)

 川沿いを歩いて植物調査を行った。また数地点において橋の上、土手の上から目視もしくは採取機を使用し水中内の植物を採取することで植物種を確認し、採取した植物は研究室に持ち帰るなどして種の同定を行い、主な種をリストアップした。調査日は2009年7月17日、2009年8月26日であった。


・伊勢崎市世良田周辺

用水路、水田および休耕田沿いを歩き、植物相調査を行った。生育が確認された種はデジタルカメラによる写真撮影による記録、または採取して研究室に持ち帰るなどして種の同定を行い、主な種をリストアップした。調査日は2009年7月17日、2009年9月19日であった。


・才川

  川沿いを歩いて植物相調査を行った。土手や橋の上より目視で植物種を確認し、また数地点において橋の上などから採取機を使用し水中内の植物を採取することで植物種を同定した。また採取した植物は研究室に持ち帰るなどして種の同定を行い、主な種をリストアップした。調査日は2009年4月4日、2009年9月19日であった。

発芽実験

 オモダカ、ヒロハノハネガヤ、アメリカタカサブロウ、ツリフネソウ(2008年採取)、シドキヤマアザミ(2009年採取)の5種の種子を、石英砂を敷いた直径9cmのプラスチック製シャーレにオモダカ、アメリカタカサブロウ、ヒロハノハネガヤは50個ずつ、種子数が少なかったツリフネソウは45個ずつ、シドキヤマアザミは30個ずつ種子を入れ、各々のシャーレに蒸留水を約20cc注入した。シドキヤマアザミを除くすべての種子について各々培養前の、6月16日から8月17日までの62日間、冷蔵庫(SANYO MEDICAL)にて4℃で冷湿処理を施した。温度勾配恒温器(TG-100-AGTC, NKsystem)にシャーレを入れて培養した。温度勾配恒温器内の温度は30/15℃、25/13℃、22/10℃、17/8℃、10/6℃(昼14hr、夜10hr)の5段階とし、各温度区で1植物あたり3シャーレを培養した。実験開始後三週目までは毎日、その後は1〜3日おきに種子を観察し、肉眼で幼根が確認できたものを発芽種子と見なして数を記録し、取り除いた。また観察日ごとに蒸留水をつぎ足し、常時湿った状態を保った。

 オモダカ、ヒロハノハネガヤの2種類は8月18日から9月10日までの24日間培養した。ツリフネソウ、アメリカタカサブロウの2種類は8月5日から10月9日までの65日間培養した。オモダカとヒロハノハネガヤは、24日間の培養期間において全温度段階で発芽が見られなかったため、再度冷湿処理を9月10日から10月23日まで行った後、再び恒温器内で30/15℃、25/13℃、22/10℃、17/8℃、10/6℃の温度域で10月23日から12月4日までの43日間培養した。またツリフネソウ、アメリカタカサブロウの2種類についても再冷湿処理を10月9日から11月9日まで行った後、11月10日から12月9日までの30日間培養した。シドキヤマアザミは冷湿処理せずに11月7日から12月7日までの31日間培養した。



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