結 論

 本研究により、ハナダイコンはより明るい立地環境下で生育した方が大きく生長し、より多くの種子を生産することが明らかになった。個体あたりの生産種子数は、今枝(2004)と同様、全体として光条件にかかわらず、重量あたりの種子生産数が一定であるという結果が得られた。また、生育光環境に関しては、中嶋(2003)、今枝(2004)と同様に相対光量子密度100%区では多数が枯死し、14%区が生育に最も適しているという結果が得られた。先行研究と同様の結果であったことから、これらはハナダイコンの普遍的な生態学的特徴であるといえる。種子発芽特性は、種子形成直後と保管後において、なんらかの変化を遂げることが示唆された。また、永続的シードバンクを形成することが示唆されたことから、ハナダイコンは、単に刈り取りを行なっても完全に除去できず、根絶のためには長期の継続的な除去作業が必要であると考えられる。ハナダイコンの下では、特に春植物の生長が阻害され続け、やがては消滅してしまうことになりかねない。

 ハリエンジュは、種子発芽が低温条件で最も高かったことから、今後も寒冷な北方の河川において分布域を拡大する恐れがある。さらには、生長速度の速い萌芽やルートサッカーにより迅速に個体数を増やす可能性も高い。根気よく抜根していかないと、河畔植生を構成する日本古来の植物たちが生息不可能になり、河畔生態系の多様性が低下する恐れもあると考えられる。ハリエンジュを駆除するため、渡良瀬川河川敷においてハリエンジュの抜根を行なった例がある。しかし、土壌中に根が残っていたためそこから再生してしまった。このことからわかるように、完全に駆除するには、より綿密な抜根を行なう必要がある。また、ハナダイコンとハリエンジュが同所に生育している場合には、両種の相乗効果により、林床に生育する在来植物が十分な光を得られず、かつ排除されている可能性も示唆された。



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