調査・実験方法

発芽の温度依存性解析

 2004513日から2004728日までの間に18種の植物の種子をアドバンテストビオトープ内と群馬大学荒牧キャンパス構内で採取した。群馬大学荒牧キャンパス構内において採取した種子は、日本の野原や道ばたなどで一般によくみられるが、ビオトープ内における個体数が少なく、実験に必要なだけ種子を採取することが困難な植物やこれからビオトープ内に侵入または移入してくることが想定される植物の種子である。この実験に用いた植物は1に示した。実験は、石英砂を敷いた直径9cmのプラスチック製シャーレを1植物につき15シャーレ用意し、それぞれ種子を50個ずつ入れた。そこに蒸留水を入れ、200499日から20041012日までの34日間、4℃で冷湿処理を行った。冷湿処理とは、種子に冬の低温を経験させ、春の暖かい温度を発芽のシグナルとし、発芽を促すための処理である。アメリカフウロ、イヌムギ、カモガヤ、については冷湿処理中の発芽数が多かったため(表3a)、また、セイヨウタンポポについては冷湿処理をせずに乾燥状態で保管していた種子を用いた。その後20041013日から20041214日までの63日間、温度勾配恒温器(TG100-ADCTNK-SYSTEM)に種子を入れて培養した。温度勾配恒温器内の温度設定は30/15℃、25/13℃、22/10℃、17/8℃、10/6℃(昼14hr、夜10hr)の5段階とし、各温度区に1植物につき3シャーレを用いた。なお、イヌムギについては、採取できた種子数が少なかったため、30/15℃と25/13℃の2段階のみで培養した。すべてのシャーレを観察し、肉眼で幼根の出現が確認できたものを発芽種子として、数を数えた後に取り除いた。また観察日ごとに蒸留水をつぎ足して、常時湿った状態を保った。この発芽実験が終了した後、継続的に4℃で再び1か月冷湿処理を行った。この実験を発芽実験1とする。

 4に示した19種の植物についても同様にして実験を行い(狩谷2004)、発芽せずに残った種子について2004513日から616日までの34日間、2度目の冷湿処理により、2度目の冬を経験させた。その後、2004617日から723日までの37日間再び培養し、2度目の実験を行った。また培養21日目には、1日だけ培養温度を約3℃上昇させ、一時高温処理を行った。この実験を発芽実験2とする。発芽実験1と発芽実験2の違いは、発芽実験1は初夏〜夏にかけて結実する植物を対象としたものであり、発芽実験2は、秋に結実する植物について、2年目の春における発芽を試験する実験である。

植物の開花フェノロジーと植物相調査

 ビオトープ内の全域において、月に一度、植栽種以外の開花植物種をリストアップし、採取して研究室に持ち帰り、図鑑(「日本の野草」林弥栄編(1983)、「日本帰化植物写真図鑑」清水矩宏他(2001))を用いて種の同定を行った。また、可能な限り各植物の標本を作製した。調査日は2004410日、515日、610日、728日、921日、1030日であった。

植物の分布位置・分布面積調査

 ビオトープ内の全域において、開花した植物の位置を、ポータブルGPS(ポケナビmap21EXEMPEX)を用いて測定し、巻き尺を用いて分布面積を測定した。調査日は2004610日、728日、921日であった。

気温・地温測定

 ビオトープ内10地点(72)において、地上約1mおよび深さ約10cmの土壌中それぞれに温度データロガー(TR-52T & D Corporation)を設置し、気温および地温を測定した。気温測定に際しては、センサ先端部分をアルミニウムカバーで覆い、直射日光が当たるのを避けた。測定期間は気温、地温ともに2004410日から同年1118日であり、この間20分おきに気温と地温を自動記録した。測定データから、立地環境別に月ごとの日最高気温および地温・日平均気温および地温・日最低気温および地温の平均値と標準偏差を算出した。


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