調査・実験方法

 

土壌シードバンクの解析

 土壌シードバンクの解析は、実生発生法(荒木・安島・鷲谷2003)に準じた方法で行った。20031115日、アドバンテストビオトープ内の、立地条件の異なる3ヶ所より合計8地点(林内3地点、ヨモギ草原3地点、川辺2地点、1および3参照)から、表層リターを除いた土壌を採取した。各地点とも、約50B四方より深さ25Bの土壌を採取した。採取した土壌、湿ったままの状態で、4℃の冷蔵庫内で冷湿処理を75日間施した後、よく攪拌して均質化した。ここから各地点ごとに300.7gの土壌をサンプリングし、約25×30Bのプラスチックトレイに敷き詰めた。敷き詰めた土壌の厚さはおおむね1B程度となった。ここに土壌含水率が100%になるように十分水道水を灌水した後、25/10℃(昼14hr、夜10hr)に設定した人工気象器(MLR-350、サンヨー)内に設置して、培養した。なお、この人工気象器内の昼間の光量子密度は、蛍光灯を用いて70μmol m-2s-1に調整した。培養中は毎日、新規出現個体の有無を確認し、またその度に水道水を追加して、常に土壌含水率を100%程度に保った。新規出現個体については、ある程度大きくなって種の同定が可能になるまでは、そのまま培養し、同定後は種毎の総出現個体数を数えた後、抜き取って一部を標本とした。培養は、新規出現個体がゼロになるまで、およそ4ヶ月間継続した。

 

発芽の温度依存性解析

 20031018日から20031119日までの間に21種の植物の種子をアドバンテストビオトープ内で採取した。実験に用いた植物種は(2)に示した。石英砂約70ccを敷いた直径9Bのプラスチック製シャーレを1植物につき15シャーレ用意し、それぞれ種子を50個ずつ入れた。ハイチゴザサについては採取できた種子数が少なかったため、各シャーレ25個ずつの種子で実験を行った。各々のシャーレに蒸留水を約20ccずつ入れ、20031225日から2004412日までの109日間、4℃で冷湿処理を行った。冷湿処理とは、種子に冬の低温を経験させることにより、胚の後熟を促進するなどして休眠の一部解除を促すための処理である。ギシギシ、コセンダングサ、ハイチゴザサについては冷湿処理中にほとんどが発芽してしまったため、乾燥状態で保管していた種子を用いた。その後2004413日から2004512日までの30日間、温度勾配恒温器(TG100-ADCTNK SYSTEM)に種子をシャーレごと入れて培養した。温度勾配恒温器内の温度設定は30/15℃、25/13℃、22/10℃、17/8℃、10/6℃(昼14hr、夜10hr)の5段階とし、各温度区に1植物につき3シャーレを用いた。なお、この温度勾配恒温器内の昼間の光量子密度は、蛍光灯を用いて約30μmol m-2s-1に調整した。すべてのシャーレを観察し、肉眼で幼根の出現が確認できたものを発芽種子として、数を数えた後に取り除いた。また、観察日ごとに蒸留水をつぎ足して常時湿った状態を保った。

この発芽実験が終了した後、2004513日から616日までの34日間、4℃で再び冷湿処理を行った。

 

春植物の開花フェノロジーと植物相調査

 ビオトープ内の全域において、月に一度、植栽種以外の植物種をリストアップし、採取して研究室に持ち帰り、図鑑(「日本の野草」、林弥栄編1983)を用いて種の同定を行った。調査日は20031018 日、1115日、2004220日、311日、410日、515日、610日であった。

春植物の分布位置・分布面積調査

 ビオトープ内の全域において、開花した春植物の位置を、ポータブルGPS(ポケナビ map21EXEMPEX)を用いて測定し、巻き尺を用いて分布面積を測定した。調査日は2004210日、311日、410日であった。

 

ギニアグラスの分布調査

インターネット「Yahoo!Japan」の検索エンジンを用い、「ギニアグラス」をキーワードとして、ギニアグラスが分布している都道府県とその用途を調べた。

 

相対光量子密度測定

ビオトープの林内16地点において、光量子センサー(IKS-20koito)を用いて光量子密度を測定し、同ビオトープ内の裸地で測定した光量子密度との相対値を算出した。測定日は2004610日であった。

 

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