結論

 

現在ハナダイコンが多く生育しているのは、光環境がより明るい地点であると思われる。そして、明るい環境における方がより大きく生育し、多くの種子を生産することができるようである。

しかし、暗い環境では、ハナダイコンの生育・繁殖能力は必ずしも劣るわけではないとも考えられる。暗い環境に生育した場合にも、明るい環境に生育する個体が生産する種子以上の発芽率を有する種子を、効率良く生産しているようである。暗い光環境はハナダイコンにとっては生育に不適であるため、そこで生育し分布を拡大させていくには、より多くの種子を発芽させなければならないからであると考えられる。さらには、発芽後の個体の生存率も相対光強度10%程度の環境下で最も高いという示唆も得られた。

これらの結果から考えると、ハナダイコンはあらゆる環境に適応し、今後も分布を拡大していく可能性があると推察される。さらには、ハナダイコンは園芸用としても扱われている。花がきれいであるため、悪条件と考えられる環境において生育していた個体であっても、その種子を人為的に、すなわち園芸目的で好条件下に移動させられたならば、現在以上に速く拡大していく危険性がある。そうしたハナダイコンの分布域拡大が続けば、いずれは在来種に悪影響を及ぼす可能性もあるのではないかと考えられる。そのため、今後もハナダイコンの分布状況と環境適応様式を追跡調査し、その生態を解明していくことが重要であると思われる。

 

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