概要

 

 近年、春頃になると道端に紫色の花が一面に咲いている景色を見かけるようになった。これは外来植物の一種で、学名はHesperis matronalis L.(アブラナ科)、和名はハナダイコンである。その花はとてもきれいであるため、園芸用としても販売されており、その危険性についてはあまり検討されていないのが現状である。外来植物であるからには、その分布が拡大すれば在来生物に対して何らかの影響があるかもしれない。

そのため本研究では、ハナダイコンのと光条件の関係および各種の生態的特性を解析することとした。

前橋市内における分布調査、各分布地点の光環境測定より、ハナダイコンは光強度80100%のより明るい環境下において多く生育していることが明らかになった。

光強度100%(上泉町1801)、および10%(荒牧町4-2)の2地点で採取したハナダイコンの種子を用い、温度勾配恒温器内で14/8℃、25/13℃の条件で発芽実験を行ったところ、最終発芽率は両地点ともに高い温度条件下で高かった。一方、2地点間を比べると、温度によらず光強度10%(荒牧町4-2)地点の方が最終発芽率が高かった。

光強度が100%(上泉町1801)、50%(荒牧町360)、40%(富士見村横室894)、30%(荒牧町4-2)、20%(関根町3-7)、10%(荒牧町4-2)の6地点より採取した個体について乾燥重量と種子数を測定したところ、明るい環境下で生育した個体は大きく生長し、種子生産量も多いことが明らかになった。しかし、その比率は光環境に関係なくほぼ一定であった。

光強度100%(上泉町1801)、30%(荒牧町4-2)、10%(荒牧町4-2)の3地点より採取した種子から発芽させた個体に対する人工被陰実験を、相対光強度100%、13%、3%、0.6%で行った。その結果、枯死率は全採取地点において13%区が最も低くなった。

以上のことより、ハナダイコンは明るい光環境により多く分布しているが、ある程度(10%前後)の暗い光環境においても生育可能であり、そこに生育する個体の生存力は高いと考えられる。また、暗くても発芽率の高い種子を個体サイズに応じた数だけ生産可能であると考えられる。そのため、今後もより一層、分布域を拡大していく可能性があるのではないかと考えられる。

 

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