結  果

実験@ 伊勢崎・水上両地点に生育するオオブタクサの生長・種子生産比較

 水上のオオブタクサのバイオマス(個体あたり乾燥重量)は、調査開始の5月末で0.157gであった。一方伊勢崎のオオブタクサのバイオマスは、調査開始時の3月上旬に0.0553g、6月上旬では6.635gと、同時期の水上を大きく上回っていた。生育期間の後期になるにつれて、両地におけるバイオマスの絶対値の差は拡がり、枯死直前の11月上旬には、水上で10.3g、伊勢崎で82.4gと約8倍の差となった (図1表4-25-2) 。
 水上のオオブタクサのLAR(葉面積比)は、6月末に0.012(m2/g)と最も高くその後は減少し続け、8月から10月の間に急激に落ち込み、最終的には11月上旬に0.002となった。一方伊勢崎のオオブタクサのLARは、4月末で0.008であり、その後7月末までほぼ横ばいで変化が見られなかったが、8月末に0.003と大きく減少した。その後も減少しつづけ、11月上旬には0.002となった (図2表4-15-1) 。
水上のオオブタクサのNAR(純同化率)は、6月末から8月末の間にほぼ横ばいで5.028〜2.723 (g/m2/day)の間を推移した。10月上旬に0.327に落ち込み、その後11月上旬に10.26に増加した。伊勢崎のオオブタクサのNARは、4月末に3.733で、6月上旬に15.00と上昇し、7月上旬から8月末にかけて6.052〜2.628の間を推移した後、10月上旬に激減し、8.410となった。そして、11月上旬に急激に増加し、27.25となった (図3表4-15-1) 。
 水上のオオブタクサのRGR(相対生長速度)は、6月末に0.056(g/g/day)で、7月末に0.029と減少し、その後減少し続け、10月上旬に0.001と最低となり、11月上旬に0.026と若干回復した。伊勢崎のオオブタクサのRGRは、4月末に0.035で、6月には大きく上昇して0.086となり、その後減少し続け、10月上旬に-0.019と最低値となった後、11月上旬に0.016と水上同様、若干回復した(図4表4-15-1)。
 伊勢崎のオオブタクサの一個体あたりの種子生産数は、11月に136.2個、水上のオオブタクサの種子生産量は、11月に63.9個であった(図9表6)。
伊勢崎のオオブタクサのSLAは、3月上旬から、4月末まで増加したが、その後は減少を示した。水上のオオブタクサのSLAは、5月末から9月上旬まで減少を示したが、9月上旬から10月上旬において増加した。伊勢崎・水上のオオブタクサのLWRは共に、調査期間の間、減少しつづけた。伊勢崎・水上のオオブタクサのSWRは共に、調査期間の間増加しつづけた。伊勢崎のオオブタクサのRWRは、3月上旬から4月下旬において増加したが、その後0.134〜0.195とあまり変化が見られなかった。水上のオオブタクサのRWRは調査期間中、0.072〜0.208とあまり変化は見られなかった(図5.6.7.8表4-25-2)。
実験A 異なる窒素態比での栽培下における伊勢崎・水上両地点に生育するオオブタクサの生長・種子生産比較

バイオマス(個体あたり乾燥重量)
 水上より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、バイオマスは7月中旬では3処理区において1.438〜2.836gと差はなかった。しかし8月中旬ではアンモニア区におけるバイオマスが、23.94gと処理区間で最大となり、次いで硝酸区で17.41g、水道水区では9.420gと最低となった。2回目の実験では、9月上旬に最も処理区間でバイオマスに差がつき、硝酸区で39.34gと最大となり、次いでアンモニア区で24.87g、水道水区では11.38gと最低となった。10月のサンプリングにおいては、落葉と虫害の影響で明確な傾向は得られなかった (図1112表12-2,14-218-220-2) 。
 伊勢崎より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、バイオマスは7月中旬では3処理区において10.81〜16.30gと差はなかった。しかし8月中旬には、硝酸区で45.64gと処理区間で最大となり、次いで水道水区で41.24g、アンモニア区では30.10gと最低となった。2回目の実験では、8月中旬に硝酸区で41.12gと最大となり、次いでアンモニア区で18.26g、水道水区では12.12gと最低となった。その後9月上旬には、水道水区で120.8g最大となり、次いで硝酸区で101.1gとなったが、アンモニア区では78.72gと8月同様最低となった。10月のサンプリングにおいては、アンモニア区のバイオマスが最低となる点では、それ以前の結果と同様であった(図1314表9-211-215-217-2)。

生長パラメータ
 LAR(葉面積比)
 水上より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、LARは7月中旬には硝酸区で0.438(m2/g)と最大となったのに対し、アンモニア区で0.016、水道水区で0.016であった。8月中旬には、硝酸区で0.032、と減少したが、処理区間では依然最大であった。水道水区とアンモニア区ではほとんど変化しなかった。2回目の実験では、3処理区いずれにおいても時間の経過につれ減少したが、アンモニア区で常に最大となった(図1516・表12-114-118-120-1 )。
 伊勢崎より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、LARは3処理区いずれにおいても、時間の経過につれ減少した。絶対値には処理区間で差はなく、8月中旬には0.080〜0.010となった。2回目の実験でも同様の傾向が見られ、9月上旬で0.007〜0.008であった(図1718表9-111-115-117-1)。

 NAR(純同化率)
 水上より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、NARは常にアンモニア区で最大となった。しかし2回目の実験では、9月までは硝酸区で最大となった。10月のサンプリングにおいては、落葉と虫害の影響で明確な傾向は得られなかった(図1920表12-114-118-120-1)。
 伊勢崎より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、NARはおおむね硝酸区で4〜7と最大となった。2回目の実験では、水道水区で大きな変動がみられたため、処理による明確な差は認めることができなかった(図2122表9-111-115-117-1)。

 RGR(相対生長速度)
 水上より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、RGRは常に硝酸区とアンモニア区ではほぼ同等の0.072〜0.085(g/g/day)で、水道水区ではこれらに比べると、0.066〜0.062と常に低い値を示した。2回目の実験では、水道水区で大きな変動がみられたため、処理による明確な差は認めることができなかった(図2324・表12-114-118-120-1)。
伊勢崎より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、RGRは6〜9月にアンモニア区で最も低くなった。6〜7月中旬間の値は、硝酸区で0.051、次いで水道区で0.046、アンモニア区で0.033であった。2回目の実験では、水道水区で大きな変動がみられたため、処理による明確な差は認めることができなかった(図2526・表9-111-115-117-1)。
SLA(比葉面積)
 水上より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、SLAはアンモニア区と水道区では、0.012〜0.041(m2/g)とほぼ同等の値を示した。硝酸区では、これらに比べると7〜8月中旬間で0.126と高い値を示した。2回目の実験では、アンモニア区で8〜9月中旬間で0.093と高い値を出したが、硝酸区と水道区はほぼ同等の値であった(図2728・表12-214-218-220-2)。
  伊勢崎より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、SLAはどの処理区間においても7月中旬まで増加を見せたが、処理による明確な差は認めることができなかった。2回目の実験では、どの処理区間も減少を見せたが、処理による明確な差は認めることができなかった(図2930・表9-211-215-217-2)。
LWR(葉重比)
 水上より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、どの処理区間においてもLWRは7月中旬まで増加し、その後減少した。また、処理による明確な差は認めることができなかった。2回目の実験では、調査期間中どの区においても時間の経過につれて減少を示したが、処理による明確な差は認めることができなかった(図3132・表12-214-218-220-2)。
 伊勢崎より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、LWRは調査期間中どの処理区間においても時間の経過につれて減少を示したが、処理による明確な差は認めることができなかった。2回目の実験でも、時間の経過につれて減少を示したが、処理による明確な差は認めることができなかった(図3334表9-211-215-217-2)。
SWR(茎重比)
 水上より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、SWRは水道区が高い値を示したため処理による明確な差は認めることができなかった。2回目の実験では、期間中増加を示したが、水道区に大きな変動がみられたため、処理による明確な差は認めることができなかった(図3536表12-214-218-220-2)。伊勢崎より採取したオオブタクサを用いた1回目、 2回目の実験共に、処理による明確な差は認めることができなかった(図3738表9-211-215-217-2)。
RWR(根重比)
 水上より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、RWRは硝酸区、アンモニア区が7〜8月中旬区において高い増加を示したが、水道区は、0.244〜0.287とほぼ変化が見られなかった。2回目の実験においては、水道区の変動が大きかったために、処理による明確な差は認めることができなかった(図3940表12-214-218-220-2)。
伊勢崎より採取したオオブタクサを用いた1回目の実験において、RWRはアンモニア区と硝酸区は水道区に比べて、増加が大きかった。2回目の実験では、硝酸区の値が大きかった一方、水道区とアンモニア区は差が無かった(図4142表9-211-215-217-2)。

種子生産数
 2回目の実験の最終サンプリング(10月)において計測した個体あたりの種子生産数は、水上の個体では、水道水区で最大の529個、アンモニア区で246個、硝区で110個であった。伊勢崎の個体では水上と同様の傾向を示し、水道水区で225個と最大となり、次いでアンモニア区で193個、硝酸区で148個であった(図4546表7、8)。

実験B 水上・伊勢崎の気温測定
 6月〜9月の間、日平均気温はおおむね伊勢崎の方が水上より5℃程度高かった。伊勢崎では、7〜8月に日平均気温が30℃近くなる日が多くあったが、水上では同時期にはおおむね25℃程度にとどまった。10月に入ると、両調査地点の日平均気温の差はほとんど無くなるが、10月下旬以降は、水上の気温が急激に下がった(図10)。

実験C 水上・伊勢崎の土壌窒素肥料成分測定
 伊勢崎のオオブタクサ生育地の土壌において、硝酸態窒素濃度は0.049 (mg/g)、アンモニア態窒素濃度が0.003、亜硝酸態窒素濃度が0.00002と、硝酸態窒素濃度が圧倒的に高かった。総窒素濃度は0.052であった。
これに対して水上のオオブタクサ生育地の土壌においては、硝酸態窒素濃度が0.0002 (mg/g)、アンモニア態窒素濃度が0.0003、亜硝酸態窒素濃度が0.00001と、硝酸態窒素濃度とアンモニア態窒素濃度に差が無かった。総窒素濃度は0.0005であった(図47表21)。

実験D 前橋市内の主要幹線道路付近におけるハナダイコンの分布調査

 前橋市内では、北部の方に分布が多く、南部にほとんど分布が見られなかった。ハナダイコンの各分布地点における相対光量子密度は、大半が100〜30%の間であり、10%以下であった地点は、3地点しかなかった。分布が確認された地点の中で、最低の相対光量子密度だったのは、敷島公園の5.26%であった(図4849表22)。

実験E 人工被陰下におけるハナダイコンの栽培実験

バイオマス
 1回目の実験において、バイオマスは100%区では11月まで顕著に増加し続けたが、30%、9%および3%区では、有意な増加は見られなかった。10月のバイオマスの平均値は、100%区で0.94g、9%区で0.26、30%区で0.072、3%区で0.012であった。2回目の実験においては、バイオマスは100%区および30%区では12月まで増加し続けたが、9%区と3%区では明確な増加が見られないか、減少傾向を示した。12月上旬のバイオマスは、100%区で0.12g、30%区で0.11、9%区で0.031、3%区で0.026となった(図5253表24-231-2)。

生長パラメータ
 LAR
 2回の実験期間を通じて、LARは9%区または30%区で最大となり、これより暗い3%区では、むしろ100%区での値に近いものとなった。9月末(1回目)のLARは、9%区で0.038、3%区で0.015、30%区で0.012、100%区で0.010であった。12月上旬(2回目)のLARは、9%区で0.052、30%区で0.047、3%区で0.022、100%区で0.012であった(図5455表24-131-1)。

 NAR
 2回の実験期間を通じて、NARはおおむね100%区で常に最大となり、相対光量子密度が低い区ほど減少した。9月末(1回目)のNARは、100%区で8.437、9%区で1.375、30%区で-0.263、3%区で-3.546であった。12月上旬(2回目)のNARは、100%区で2.714、30%区で0.690、9%区で-0.547、3%区で-0.819であった(図5657表24-131-1)。
RGR
 2回の実験期間を通じて、RGRはおおむね3%区で常に最低となった。9月末(1回目)のRGRは、100%区で0.053(g/g/day)、9%区で0.043、30%区で-0.003、3%区で-0.048であった。12月上旬(2回目)のRGRは、30%区で0.029、100%区で0.029、3%区で-0.014、9%区で-0.020であった(図5859表24-131-1)。

器官別乾燥重量比
 2回の実験期間を通じて、個体の生長に伴って LWRが低下する傾向が見られ、この傾向は相対光量子密度の高い区ほど顕著であった。SWR、RWR、SLAについては、一貫した傾向はみられなかった(図60.67表24-231-2)。

枯死率
 1回目の実験では、実験期間を通じておおむね3%区での枯死率が最も高かった。10月末には100%区の個体の54%、30%区では48%、9%区では45%、3%区では74%が枯死した。2回目の実験では、1回目と比べるとどの区でも枯死率が低くなった。12月上旬で、100%区で22%、30%区で25%、9%区で7%、3%区で22%が枯死した(図5051表23-123-2)。

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