帰化植物は、近年急速に侵入・拡大し、我が国の自然生態系や人間の健康に対する悪影響が危惧されている。そこで本研究では、近年日本に分布の拡大が見られており、今後一層の拡大が危惧されているオオブタクサとハナダイコンの2種類の帰化植物の生態特性を解析し、今後の帰化植帰物一般への対策の基礎データを提供することとした。
オオブタクサについては、群馬県内の分布北限で、低温環境である水上町に自生する個体群と、南部の伊勢崎市の個体群を用いて、現地個体の生長解析、気温・土壌窒素成分比較、窒素肥料投与実験下での生長解析、種子生産量比較を行った。
その結果、水上に自生するオオブタクサは、伊勢崎のオオブタクサよりも生長速度が遅いことが確認された。また、伊勢崎の土壌が水上の土壌よりも20倍以上も硝酸態窒素濃度が高いことが明らかになり、両調査地点のオオブタクサにおける生長と個体サイズの差には、気温環境と土壌窒素成分が影響している可能性が示唆された。次に、窒素肥料投与実験の結果から、オオブタクサは硝酸態窒素を好む可能性が示唆された。よって、今後オオブタクサが、硝酸態窒素の比較的多い内陸部へ侵入・拡大する可能性が危惧される。
次に、ハナダイコンについては、日本北部にはほとんど分布しないのは、積雪によって光がさえぎられ、生育が阻害されることが原因ではないかという仮説を立て、前橋市内における分布調査、各分布地点の相対光強度測定、および被陰実験による4段階の相対光強度(100・30・9・3%)条件下においての生長解析および枯死率比較を行った。
その結果、ハナダイコンは前橋市内の北部に多く生息している事、分布は相対光強度が30〜100%の場所に多いという事が明らかになった。また、被陰実験により、相対光強度3%下で栽培した個体の多くが枯死し、生長も他の光条件よりも悪いことが明らかになった。
これらのことから、ハナダイコンは暗い環境下には分布できないことが示唆された。被陰実験の結果によれば、ハナダイコンの良好な生育のためには、相対光強度で9%以上が必要であると考えられる。すなわち、ハナダイコンは積雪と林床を除く明るい光度条件で生息が可能で、こうした条件が整えば、今後さらに分布を拡大可能性が高いと考えられる。