概要
オオブタクサ(Ambrosia trifida)は北アメリカ原産のキク科一年生帰化植物である。オオブタクサはその巨大な草丈と高個体数密度により、侵入地の植物の種多様性を低下させ、人間のアクセスに支障をきたし、さらには花粉症の原因にもなる帰化植物である。
現在、群馬県内でもオオブタクサの生育が確認されており、すでに繁茂している南関東地域と比較してほぼ同等の生育が可能だということが判明した。そして、その北限は水上町まで到達しており、そこでは発芽可能な種子が生産されていることが確認された。
そこで、本研究ではオオブタクサの群馬県内における分布北限域での生長様式、種子生産量を解明し、また利根川流域での分布拡大の可能性を探ることを目的とした。
調査区域を水上町と伊勢崎市に絞り、オオブタクサの芽生え密度、生存率、成長速度、種子生産量などを調べ、比較を行った。また、前橋市と水上町で採取したオオブタクサの種子を使用して発芽実験を行った。
その結果、オオブタクサの芽生え密度は伊勢崎では1m2あたり200個体、水上では1m2あたり427個体で水上の芽生え密度は伊勢崎に比べて約2倍もあり、その後の個体群密度も水上の方が高かったが生存率は水上の方が高かったことから、伊勢崎では激しい種内競争が展開されていたことが示唆された。
また、水上に生育するオオブタクサは伊勢崎に生育するオオブタクサと同じバイオマスでも、より多くの種子をつくる傾向がみられた。オオブタクサは河川増水期に水の力を利用し、種子を下流へ拡散していく可能性が考えられるので、水上より温暖な地域でより多くの種子を生産することができる個体を出現させる可能性が示唆された。
発芽実験においても、昼15℃夜7℃の低温条件で前橋で採取した種子と水上で採取した種子が両方とも80%以上の発芽率を記録したのに対して、昼30℃夜15℃の高温条件では前橋で採取した種子が44%、水上で採取した種子は10.7%の発芽率であった。このことから、オオブタクサが水上の寒冷な気候に適応した可能性が示唆された。
以上のことから水上町と伊勢崎市でオオブタクサがさらなる分布拡大と北上をする可能性、さらに水上町より下流の利根川流域へのオオブタクサ種子の拡散による分布拡大の可能性が考えられる。