発芽実験

目的)
 種子発芽の温度特性を調べるため、3種類の発芽実験を行った。実験1は最大発芽率を調べるため、実験2は発芽の限界温度を調べるため、実験3は種子を冷凍することによって冬越しの可能性を調べるための実験である。
 
材料)
 実験1では、ハナダイコンの種子はカネコ種苗(株)、ルドベキア・オオキンケイギク・ケナフの種子はサカタのタネ園芸部(株)より購入して使用した。実験2ではハナダイコンとオオキンケイギクを試験した。種子は分布状況調査(ハナダイコン:図20の地点番号9、オオキンケイギク:図20の地点番号12)によって発見された個体群より採取した野生の種子である。実験3ではオオキンケイギクとケナフを試験した。オオキンケイギクは分布状況調査(オオキンケイギク:図20の地点番号12)によって発見された個体群より採取した野生の種子を使用し、ケナフの種子はサカタのタネ園芸部(株)の種子より購入して使用した。


 ハナダイコン(学名:Orychophragmus violaceb O.E,Schulz)は、アジア(中国)原産のアブラナ科の二年草で紫色の花(写真12)が3〜5月頃にかけて咲く。オオアラセイトウ、ショカツサイなど多様な名前で呼ばれており、江戸時代すでに渡来し、観賞用として栽培されたものが日本の各地で逸出・野生化している。二年草とは、種をまいてから発芽・生長・開花・結実し、枯れるまでの期間が1年以上2年未満の植物のことである。春から夏にかけて播種し、十分に育った苗が冬を越して、翌年の同じ時期に花をつけるものが多い。
 ルドベキア・マーマレード(学名:Rudbeckia hirata L.)は、北アメリカ原産のキク科の一年草で濃黄色の花(写真34)が7〜8月頃にかけて咲く。一年草のルドベキアは、オオハンゴウソウとは別種のルドベキア・ヒルタの改良種でグロリオーサデージーと呼ばれる種類である。マーマレードは米国で改良された矮性多花の一年草である。一年草とは、種をまいてから1年以内に発芽・生長・開花・結実し、枯れる植物のことでる。春にまいて夏から秋に開花し冬までに枯れる「春まき一年草(非耐寒性一年草)と、秋にまいて翌春に開花し夏までに枯れる「秋まき一年草(耐寒性一年草)がある。
 オオキンケイギク(学名:Coreopsis lanceolata L.)は、北アメリカ原産のキク科の多年草で濃黄橙色で芯黒の花(写真56)が7〜8月頃にかけて咲く。明治中期に渡来し栽培されたものが河川敷や道路沿いに野生化して大群落をつくる。多年草とは、多年にわたって生育し続ける植物のことである。宿根草と同義語で使われることが多い。地上部は枯れるが地下部の根株は生きて休眠して、毎年時期がくると新しい芽を出して生育するものと、冬でも地上部が枯れることなく常緑で、春に新しい芽を出して生育するものがある。以前は、前者を宿根草として区別していたが最近では区別なしに使うことが多い。
 ケナフ(学名:Hibiscus cannabinus L.)は、アフリカ西部原産のアオイ科の一年草である。二酸化炭素の吸収・固定化能力が高いことから地球温暖化防止に役立つと注目されている環境保全植物である。その他に、水中の窒素・リンの吸収効率が良いので湖沼・河川をきれいにする水質改善効果や製紙原料となる繊維がとれ、半年で収穫が可能であるため森林伐採を防ぐなど言われている。環境教育の一環として、ケナフの栽培を導入する小学校が全国各地に広がっており、群馬県では「ケナフの会」ホームページに掲載されている「全国発芽マップ」を見ると、前橋市立天川小学校・勢多郡新里村立中央小学校・前橋市立広瀬小学校・群馬郡榛名町立第七小学校の4校が登録されている。(2001年1月16日現在)

実験器材)
 濾紙、及び、石英砂を敷いた直径9cmのプラスチック製のシャーレを使用し、日本医科器械製作所の温度勾配恒温器TG100‐ADCTで発芽実験を行った。実験1では武田薬品工業(株)の殺菌剤(ベンレート水和剤)、実験2では武田薬品工業(株)の殺菌剤(ストレプトマイシン液剤)を用いて、カビの発生を抑制した。

発芽実験における温度設定)
 実験1では温度勾配恒温器内の環境を昼間の14時間を25℃、夜間の10時間を13℃とする高温環境と、昼間の14時間を15℃、夜間の10時間を7℃とする低温環境の2パターン設定した。
実験2では温度勾配恒温器内の環境を昼間の14時間は10℃、夜間の10時間を6℃とする環境と、家庭用冷蔵庫で一定低温とする2パターンを設定した。なお、冷蔵庫の室内温度を計測したところ、平均4.3℃であった。
実験3では温度勾配恒温器に入れる前に1日間水に浸しておいた吸水種子と、乾燥した種子を用意した。吸水種子と乾燥した種子を1日間冷凍庫にいれたものと、吸水種子と乾燥した種子を12日間冷凍庫にいれたものを、温度勾配恒温器内の温度を昼間の14時間は25℃、夜間の10時間を13℃とした条件下で発芽実験を行った。 

種子の設置と観察手順)
 実験1では、ハナダイコン・ルドベキア・オオキンケイギクの種子を、濾紙を2枚ずつ敷き蒸留水を入れたシャーレの中に50粒ずつ播種した。ケナフの種子は、石英砂を敷き殺菌剤(ベンレート水和剤)を溶かした蒸留水を入れたシャーレの中に25粒ずつ播種した。実験2ではハナダイコンとオオキンケイギクの種子を、濾紙を2枚ずつ敷き殺菌剤(ストレプトマイシン液剤)を溶かした蒸留水を入れたシャーレの中に25粒ずつ播種した。実験3では、オオキンケイギクの種子を、濾紙を2枚ずつ敷き殺菌剤(ストレプトマイシン液剤)を溶かした蒸留水を入れたシャーレの中に25粒ずつ播種した。ケナフの種子は、石英砂を敷き殺菌剤(ベンレート水和剤)を溶かした蒸留水を入れたシャーレの中に25粒ずつ播種した。これらのシャーレを、1処理あたり3個ずつ作成し、温度勾配恒温器に入れた。約2日おきにシャーレを観察し、発芽種子は取り除いた。種子が割れて根が確認されたら発芽とした。また、観察ごとに蒸留水をつぎ足して、水分を一定に保った。これを、実験1ではハナダイコンを52日間・ルドベキアを49日間・オオキンケイギクを103日間・ケナフを30日間、実験2では10/6℃環境を38日間・冷蔵庫内を51日間、実験3ではオオキンケイギクを33日間・ケナフを10日間観察し、積算発芽数が最大となったのを確認して最終発芽数とした。

 

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