3−2 調査地の概要

1、吾妻渓谷
 吾妻渓谷のある吾妻郡長野原町は、群馬県北西部に位置し、年平均気温は10〜12℃、年間降水量は1800mm〜2000mmほどで、表日本型の気候区に属する地域である。(前橋地方気象台 1998)
 吾妻渓谷とは、吾妻川上流に位置する国指定名勝である。吾妻町大字川原畑の八ッ場を西端として、そこから東に4キロほどにも及ぶ。「関東の耶馬渓」と称される吾妻渓谷は、吾妻川により両岸の溶岩が数万年以上の年月をかけて浸食されて出来た名勝地である。
 吾妻渓谷右岸の遊歩道沿いの7地点にて調査を行った。調査地A1〜A5までがダムサイトよりも上流にあたり、ダム建設後は水没する場所である。調査地の概要は以下の通りである。(図6

A1:JR川原湯温泉駅側から吾妻渓谷の遊歩道へと入るとすぐに、白糸の滝を展望できる橋が架けられており、その周辺がA1地点である。この場所は、ダムサイトの建設予定地より400m上流にあたる。A1地点における谷の幅は34m、谷の高さは21mで、斜度65°の崖であった。

A2:A1地点から遊歩道を下流に向かうと、小高い丘にあたる。この上がA2地点である。この場所は、ダムサイトの建設予定地より370m上流あたり、吾妻川までの距離は42m、斜度は39°である。近くにすでに防災ダムがつくられているため、隣はアスファルトの道路が通っている。

A3:第2地点の丘を下った場所が第3地点である。この場所は、ダムサイトの建設予定地より340メートル上流にあたり、吾妻川までの距離は70メートル、斜度は28°である。

A4:A4地点は、谷になっており、すぐ脇を沢が流れている。この場所は、ダムサイト建設予定地より270m上流にあたり、吾妻川までの距離は85m、斜度は22°である。
A5:A5地点は、道がしばらく真っ直ぐな状態で続いており、その途中の場所で、ダムサイト建設予定地のすぐ上流である。吾妻川までの距離は50メートル、斜度は32°である。

A6:A6地点は、小蓬莱と呼ばれる穏やかな円錐形の岩峯の頂上である。ダムサイト建設予定地より135m下流にあたり、吾妻川までの距離は135m、斜度は20°である。ここは、現在吾妻渓谷を上から望む見晴らし台となっているが、ダムサイトが建設されると、目前にダムサイトが立ちはだかるという場所である。

A7:A7地点は、大曲沢よりも少し上流で、ダムサイト建設予定地より210m下流である。吾妻川までの距離は95m、斜度は22°である。

2、三波石峡
 三波石峡および下久保ダムのある多野郡鬼石町は、群馬県の南西部に位置し、表日本型の気候区に属する地域である。年平均気温は12〜14℃、年間降水量は1200〜1400mmほどで、降水量は群馬県内でも最も少ない方の地域である(前橋地方気象台 1998)。
 三波石峡とは、下久保ダム直下流にある国指定名勝および天然記念物である。下久保ダム著下から下流1500mまでの地域で、三波石が自然のままで保存されている場所である。長い年月をかけて、神流川の流水が、峡谷の岩石を磨きあげ、緑色のなかに石英や方解石の白い曲線が走り、形も千差万別の美しい三波石を作り上げてきたのである。鬼石町の誇るべき峡谷であった。
 三波石峡では、神流川の右岸S1,S2の2地点において調査を行った。調査地の概要は以下の通りである(図7)。
S1:下久保ダムの主ダムサイトより650mほど下流で、標高190m、斜度27°の場所である。調査を行った右岸は、水辺から13mの範囲は岩場であり、それ以上は土であった。地点番号は、水辺から4mの範囲はコケ帯で、〜13mをS1ウ、〜19mをS1エ、〜24mをS1オとする(図8)。

S2:S1地点よりも1.5kmほど下流で、標高160m、傾斜53°の場所である。右岸、左岸ともに岩場となっており、特に右岸は水辺から30mほどの辺りから、切り立った崖となっている。調査地は、水辺から15mがコケ帯、〜30mをBとする(図9)。

3、下久保ダム(神流湖)
 下久保ダムでは、SD1〜SD3の3ヶ所で調査を行った(図7)。調査地の概要は以下の通りである。
SD1:ダム湖右岸の稲村と呼ばれている場所で、現在埼玉県の貸しボート乗り場のある所であり水辺から道路までを調査範囲とした。調査地の斜度は27°である。
 
SD2:ダム湖左岸の高瀬と呼ばれる集落の神社の下にあたる場所で、水辺から人の手が加えられている工事中の道までを調査範囲とした。調査地の斜度は16°である。

SD3:ダム湖左岸の坂本と呼ばれる集落の下にある、群馬県の貸しボート乗り場のある所であり、水辺から道路までを調査範囲とした。調査地の斜度は11°である。

次へ=>