色グラデーション帯を用いた内集団バイアスの研究

                       須藤洋子

 
 集団間関係の研究を代表する理論の一つに、社会的アイデンティティ理論がある。これは、集団成員性が自己概念に取り込まれたものである社会的アイデンティティを肯定的なものとして維持し、高揚しようとする動機が、社会的カテゴリー化の作用によって生じた内集団と外集団の区別に働くと、その集団間で内集団に有利な比較が行われ、それゆえ内集団びいき、集団間差別が生じるという図式である。すなわち集団成員が内集団成員を外集団成員と比べて好意的に評価・処遇するということである。この現象は内集団バイアスと呼ばれる。
 内集団バイアスには、認知的カテゴリー分化過程と社会的アイデンティティ過程の二つの要素があり、認知的カテゴリー分化過程は集団間の差異が知覚上のカテゴリー化の作用によって増大する認知過程である。社会的アイデンティティ過程とは、内集団に有利な方向が選び取られるということである。この二つが区別される次元として、認知的カテゴリー分化過程は社会的アイデンティティ過程と比べて自動性がより高く、意図性がより低い事が提唱される。そしてこの二つの心理過程は、集団間関係をとらえる様々な指標に異なった度合いで反映される。
 ここでは認知的カテゴリー分化過程をよく反映する、色グラデーション帯を使って、優劣の価値判断に左右されない二集団の区別の度合い、すなわち知覚レベルでの集団間関係を検討する。