対人感情の心理学

                       小野万利子

 本研究では、私たちが日頃の人間関係の中で抱いているT感情Uについて各理論を元に検討した。 私たちの「心」とも言える感情は、人間関係の中で最も重要な要因である。社会心理学界の中では長い間、関心は持たれてきたようだが、正面きっての本格的な研究が行われるようになったのは比較的最近になってからである。
 対人関係において、Heiderは“好き・嫌い”の感情傾向が成り立つ関係の感情関係(Sentiment Relation)と二つのものが一緒のものとして知覚(認知)されている単位関係(Unit Relation)が存在し、この二つの関係が矛盾なく共存する状態を均衡状態と呼んでいる。また逆に矛盾が生じる場合は不均衡状態と呼び、基本的に不均衡状態は均衡状態に変化する傾向がある。  各均衡状態・不均衡状態が‘快’か‘不快’かについては必ずしも均衡状態が‘快’であるということはなく、均衡状態に一つでも(嫌い)というネガティブな感情があれば、対人関係に不快感が生じる。
 また、人間関係において、“好き・嫌い”だけでなく、たくさんの感情について MC.Dougallは対人感情は「感情傾向」と「情緒」に区分している。「感情傾向」は特定の他者に対する感情でいったん形成されるとその人に対する心理的活動をトータルに規定するような心的構造となる。また「情緒」は急激に生じ短期間で終わる比較的強い感情で、「感情傾向」はいくつかの「情緒」によって形成される。またそれは、いちどきの非常に強力に引き起こされた情緒が何度も繰り返されることによって結合され、形成される。
 よって、人はそれぞれのいろんな違った経験を通して「感情傾向」と「情緒」を結びつけているので、人によってある人へ抱く感情が異なるのは当たり前のことである。 そして、そのT対人感情Uがその人の「個性」を築きあげていると言っても過言ではないようだ。