社会情報学部の性格づけについての補足意見  以下は、私の社会情報学部(および社会情報学)の性格づけについての補足意見である。(2004年11月2日)

1. 社会情報学部の設立の趣旨を一言でいうと、高度情報社会の諸問題に対して様々な学問からアプローチするということである。

2. しかし翻って考えると、現代社会はそれ自体が既に高度情報社会であると言って差しつかえない。なるほど世界全体を問う時にはこの前提は成り立たない(地域もある)という反論はあり得るが、さまざまな分野でのグローバル化の進展はまぎれもない事実であり、世界全体が高度情報社会の方向に進んでいると仮定することも、それほど不自然ではない。
 こう考えると、その顕著な特徴である情報の側面を名称に添えてはいるが、 本質的には「現代社会の諸問題に対して様々な学問の立場からアプローチする」というのが学部の基本的な性質ということになる。
 もちろん高度情報社会に特有の問題もありうるが、それはむしろ各研究領域の中での新たな地平であると捉えるべきものである。そしてそれは当然、それぞれの学問の過去の蓄積の上にはじめて成り立つべきものである。

3. より焦点を絞って論じても、上の趣旨と同様なことが言える。例えば、社会 ・情報行動コースのキーワードである情報行動を取り上げよう。専門用語とし ての「行動」には、そもそも行動主体に何らかの入力と処理および出力がともなうことが暗黙の前提にされている。従って、行動とはすなわち情報行動を意味する、とさえ言うことができる。ゆえに従来の行動研究はすべて情報行動研究と等価であると考えることができる。
 さらに、私の専攻する社会心理学の典型的テーマである「説得」を例にあげて考えよう。説得とは、そもそも「言語によって他者の態度・意見・行動を特定の方向に変容させようとする試み」を意味するが、そこには説得者側の出力(発話)、受け手側の入力と処理(受容/拒否)がともなっており、その意味で、情報行動の一種ということになる。
 広く学部全体を見た場合にも、多くの専攻領域で、「情報」はそれぞれの概念枠組みの中に織込み済みのものであるため、こうした事情は同様である。

4. さらにより根源的な問題として、情報と学問の関係を取り上げることもできる。多くの学問研究の特徴である分析的アプローチは、もともと、対象とな る現象から新たな情報を切り出す試みであると言うことができる。従って、多くの学問がそもそも何らかの意味での情報を扱うのは、まったく自明な事柄であると言える。

5. 以上のように考えると、情報という言葉に過剰反応する必要がないことが分かる。
 結論を言うと、社会情報学部とは現代社会の諸問題に対して、まさしく学問的なアプローチを図る場であるととらえ直すことができるのである。