「近代社会の自己認識」として開始された社会学は、パーソンズによる理論的統合において一定の完成度に到達したかに思われたが、多方面からの批判を受けて、大きく認識が変わってしまった。それは、一言で言えば、近代化論において自明とされていた近代的価値(合理主義、個人主義、自由主義等)に対する懐疑がもはや無視できない形で突きつけられている事態だと言える。そうした多くの「異議申し立て」を解説し、現代社会学が直面している諸問題について論ずる。
近代化の限界/歴史社会学による近代化論批判/世界システム論/想像の共同体としての国民国家/文化的再生産論の展開/構造と過程の統一的把握/近代的自己の生成と規律化/啓蒙の弁証法としての近代批判/未完のプロジェクトとしての近代/社会システムによる複雑性の縮減/社会学にとってのフェミニズムの意義/構築主義アプローチの可能性
特に抽象度の高いものも含まれる。理論社会学Aを受講していることを前提に授業を行う。
2年生以上
授業を通じて準拠するようなテキストはない。参考文献は授業中に適宜指示する。
講義形式。
学期末試験の成績によって評価する。
講義内容は展開によって若干変更する可能性がある。分かりやすい説明を心がけるが、学生諸君の方でも積極的に質問や要望を寄せて欲しい。積極的な参加を求める。
前期の講義をまとめて、社会学にとって近代化論がもっていた意味について述べ、後期への導入とする。
歴史社会学からの近代化論批判について解説する。特にデータの蓄積が進んでいる家族社会学の事例を採り上げ、単一の「近代化」はもはや論じえないことを述べる。
フランク、アミン、ウォーラーステイン等の世界システム論を採り上げて、国民国家別に考えられていた近代化論に対するアンチテーゼを示す。
近代化論の中で自明視されていた「国民国家」の概念を考察する。アンダーソンによる国民国家批判や、小熊英二による日本社会の自己認識を採り上げる。
バーンスティンやボウルズ、ギンタスによる学校教育を通じた再生産論を採り上げ、「メリトクラシー」という近代社会の移動規範の信憑性について考察する。
引き続き文化的再生産論を採り上げ、ブルデューの文化的再生産が文化研究について及ぼした影響に触れる。
ギデンズによる構造=機能主義批判として登場した構造化理論について解説し、近代の意味や近代社会がもたらした社会変動について考察する。
フーコーの自我論を参照しながら、近代的自我/自己の形成について考える。狂気/正気、犯罪者/正常者といった区分や規律化といった事態がもたらした自己のあり方について考察する。
近代社会をもたらした啓蒙的理性そのものに対する批判として、アドルノ、ホルクハイマーらによる近代批判を解説し、批判理論について講義する。
フランクフルト学派第二世代であるハーバマスの近代擁護を採り上げて、コミュニケーション的理性、コミュニケーション的行為の理論について簡単に述べる。
フェミニズムの衝撃は、理論的にも大きな影響を多方面に及ぼしている。主に社会学理論の面で、フェミニズムがひき起こした影響について解説する。
パーソンズ以後の機能主義・システム理論の展開について概観し、特にルーマンによる社会システム理論のあらたな展開について解説する。
社会問題研究として始まった構築主義が、社会学を含んだ学問一般に根本的な反省を迫る論点を含んでいることを解説する。
U・ベックのリスク社会論・個人化論を紹介し、第二の近代という議論をよりどころに、近代の意味を考察する。
最後の授業で、講義内容に関する試験を実施する。