情報社会、情報技術、情報社会論、後期近代、消費社会、情報化
現代の情報社会は、これまでの産業社会とは異なる原理にもとづく新たなシステムに再編されつつあるが、これを情報技術の一方的な影響によるものと考えてはならない。その背後には、産業構造・組織やコミュニティ・教育制度・家族システムまで含めた、「後期近代」と呼ばれるより大きな社会変動が関係しており、こうした「社会」の側の事情もまた、情報技術の普及や人々の行動を規定している。
こうした事情を理解することを通じて、情報社会における諸問題を考える際の基礎的概念や社会理論に関する知識を修得してもらうことが本講義の目標である。また、情報社会を論じる視点の問題、「語り方」の問題も合わせて考察したい。
近代社会とは何か/後期近代とは何か/産業社会論の展開/消費社会論の展開/ニューエコノミーとは何か/情報社会論の展開/メディア論の射程/監視社会論/デジタル・デバイド/公共圏と情報社会
大学院レベル。高度な内容を含むが、基礎から説明する。
修士1年生以上
授業を通じて準拠するようなテキストはない。参考文献は授業中に適宜指示する。
本講義の見取り図を示す。「情報社会」という言葉そのものを相対化することの必要を論ずる。
情報社会を論ずる前提として、近代社会について理解しておく。近代社会は、それ以前の社会とどこがどのように異なると考えられているか、また、近代社会の登場と情報技術の関係について議論する。
全体とは違った視点から近代社会を論ずる。Habermasのいう「コミュニケーション的合理性」からみた近代社会の特徴を考えると、前回とは異なる側面が見えてくる。
近年議論されている後期近代について論じる。Beckの「リスク社会」「個人化」、Giddensの「純粋な関係」といった議論を参照しつつ、後期近代と前期近代の違いについて考える。
今日の情報社会論の基礎を作ったのは、D.Bellの「ポスト工業社会論」である。この講義では、彼の主張を検討し、その意義と限界について考察する。
情報社会論のもう一つの源流となったMcLuhanとOngのメディア論について批判的に検討する。彼らの議論も、それなりの説得力を持つが、特有の限界もあることを示す。
情報社会論に信憑性を与えている原因の一つに、現代社会の消費社会化という側面がある。ここを主題として取り上げた消費社会論を検討し、その意義を考察する。
2000年前後に米国で議論された「ニューエコノミー」論を取り上げて、その主張を検討する。単に経済の問題だけでなく、生活構造そのものに影響を及ぼす議論となっている。
今日情報社会論として語られている議論を取り上げて、その内容を批判的に検討する。特にIT革命として盛んに議論されていることの中身は何か、いかなる根拠に基づいているのか検討する。
これまでの情報社会論は、一般に考えられている程根拠が強いものでないのだが、にもかかわらず人々を魅了し続けている。その理由について考察する。
情報社会と部分的に重なっているグローバル化の問題を議論する。特に世界システム論から考えると、この現象は異なる姿となることを示す。
情報技術とともに可能となりつつある監視社会の現実について議論する。Foucault、Giddens、Lyonらの議論を参照しつつ、その重要性について考える。
情報社会の負の側面として一時期議論されていたデジタルデバイドの問題を考える。この「問題」が、階層社会論的に考えて、いかなる重要性をもつのかを批判的に検討する。
公共圏という規範的モデルから考えて、情報社会にどのような光を当てることができるか、わたしたちがこれから作るべき情報社会の姿について考える。