調査方法

リター生産量

各調査地において、ポリエステル網を張った一個の開口面積が0.1320u(群馬大学地点1〜10、玉原地点11〜20)と、0.0962u(群馬大学地点11〜20、玉原地点1〜10)のプラスチック籠(以降リタートラップと表す)を約10m間隔の二直線状に、2m間隔で合計20個ずつ設置した(写真1)。これにより落葉・落枝(リターフォール)を得て、月に一度回収して持ち帰った。送風定温乾燥機(ADVANTEC,FC-610)内で、80℃で一週間乾燥させた後、電子天秤(sartorius,BP 310S)を用いて乾燥重量を測定した。リタートラップの設置期間は群馬大学構内混交林では2007年4月27日から2007年12月20日、玉原高原ブナ林で2007年5月12日から2007年11月25日であった。また、群馬大学構内混交林の2007年12月〜2008年3月のデータがとれなかったため、亀澤(2002)のデータを用いてこの間の値を推定した。

CO2放出速度測定時の地温・土壌含水率

CO2放出速度測定時に、同時に各地点において、深さ5cmにおける地温をデジタル温度計(T&D corporation,TR52)を用いて測定した。同時に土壌含水率を各地点において、土壌含水率計(Delta,Theta probe)を用いて測定した。

土壌CO2放出速度

携帯型CO2センサー(VAISALA,GM70)を用いた密閉型土壌呼吸チャンバー(体積11.314L、底面積0.04906u)を用いて、直接土壌からのCO2放出速度を測定した。1地点につき5分間(15秒間毎に自動測定)した(写真2)。各調査地内で測定する位置を固定して毎月一度測定した。群馬大学ではリターの質と量の異なる5地点について、1地点につき3箇所ずつ計15カ所を1回ずつ、玉原では20地点を1回ずつ測定した。測定は群馬大学構内混交林では2007年5月16日から2007年12月4日、玉原高原ブナ林では2007年5月12日から2007年10月11日の間に行った。

得られたデータから、X軸を時間[s]、Y軸をチャンバー内のCO2濃度[ppm]として、最小二乗法を用いて回帰式を作成し、1秒あたりのCO2濃度上昇速度を算出した。

これらの測定結果をもとにして、1時間1平方メートルあたりのCO2放出速度を以下の式から求めた。

土壌CO2放出速度[g/hr/m2]={チャンバーの内側の体積(11.314)[L]×1秒あたりのCO2濃度上昇速度×10-6[t]×273.16[K]/(273.16+気温[℃])[K]/22.4[L]×CO2の分子量(44)}/チャンバーの底面積(4.906×10-2)[m2]×(60×60)[hr]

群馬大学混交林における測定立地の特徴

立地GA(NO.1〜3).リターの層がやや厚く、ササが周辺に生えていた

立地GB(NO.4〜6).リターの層は林内の平均

立地GC(NO.7〜9).リターの層は薄く、リターは主にマツ落葉からなる。周辺に大きな木は生えていない

立地GD(NO.10〜12).リターの層はやや薄く、リターは主にマツ落葉からなる         

立地GE(NO.13〜15).リターの層は厚く、主としてコナラ、クヌギ落葉で構成される

連続地温測定

デジタル温度計(T&D corporation,TR52)を用いて、深さ3cmの地温を、群馬大学構内混交林内の4ヶ所、玉原高原ブナ林内の4ヶ所で連続測定した。測定は群馬大学構内混交林では2006年11月21日から2007年11月21の間に、30分おきで自動的に行った。玉原高原ブナ林では2007年5月13日から2007年11月24日の間に、20分おきで自動的に行った。

リター分解速度

メッシュサイズ0.09mm2、全体の大きさ690cm2(縦30cm、横23cm)のポリエステル網の袋(以降リターバッグと表す)を各調査地内の5立地に3個ずつ計15個ずつ設置した(群馬大学構内混交林においては土壌CO2放出速度を測定した5立地、玉原では調査区内にランダムに選んだ5立地)。これらのリターバッグに現場のリター層(原形をとどめている範囲の厚さ)を構造を崩さないように切り取って入れ、元の場所に戻した。リターバッグを設置した際に、各地点の周囲のリターを回収し湿重量と乾燥重量の重量を計測し、設置した時点での地点ごとのリターの含水率を推定した。これらの結果をもとに、1日あたりのリター乾燥重量減少速度を以下の式から求めた。

1日あたりのリター乾燥重量減少速度=(リターバッグ設置時の推定乾燥重量−リターバッグ回収時の乾燥重量)/日数

リターバッグは群馬大学構内混交林では8・11・12月に、玉原高原ブナ林では8・10・11月にそれぞれ一つずつ回収した。

統計解析

土壌CO2放出速度と地温、土壌CO2放出速度と土壌含水率、それぞれの相関はカレイダグラフ(Synergy Software)を用いて、相関関係の有意性検定には生物統計学(Robert R.Sokal,James Rohlf 1983)に示されている棄却値一覧を用いた。