調査方法

リター生産量

 調査地において、ポリエステル網を張った一個の開口面積が0.1320m2(地点1〜10)と、0.0962m2(地点11〜20)のプラスチック籠(以降リタートラップと表す)を約10m間隔の二直線上に、2m間隔で合計20個設置した(写真1)。これにより落葉・落枝(リターフォール)を得て、月に一度回収して持ち帰った。送風定温乾燥機(ADVANTEC FC-610)を用い、80℃で一週間乾燥させた後、電子天秤(sartorius BP 310S)を用いて乾燥重量を測定した。リタートラップの設置期間は2005年5月21日から2005年11月18日であった。

CO2放出速度測定地点の地温・土壌含水率

 CO2放出速度測定時に、同時に各地点において、深さ5cmにおける地温をデジタル温度計(T&D corporation, TR52)を用いて測定した。同時に土壌含水率を各地点において、土壌含水率計(Delta, Theta probe)を用いて測定した。

土壌CO2放出速度

 携帯型CO2センサー(VAISALA, GM70)を用いた密閉型土壌呼吸チャンバー(体積11.314l、底面積0.04906m2)を用いて、直接土壌からのCO2放出速度を測定した(写真2)。1地点につき5分間(15秒毎に自動測定)した。調査地内で20地点を固定して毎月一度測定した。測定は2005年5月21日から2005年11月18日の間に行った。

 得られたデータから、X軸を時間[s]、Y軸をチャンバー内のCO2濃度[ppm]として、最小二乗法を用い2回帰式を作成し、1秒あたりのCO濃度上昇速度を算出した。

これらの測定結果をもとにして、1時間1平方メートルあたりのCO2放出速度を以下の式から求めた。

土壌CO放出速度[g/hr/m2]={チャンバーの内側の体積(11.314)[l]×1秒あたりのCO濃度上昇速度×10-6[t]×273.16[K]/(273.16+気温[℃])[K]/22.4[l]×CO2の分子量(44)}/チャンバーの底面積(4.906×10-2)[m2]×(60×60)[hr]

土壌CO2放出因子分解

 土壌から放出されるCO2を、発生源別に測定し、土壌微生物のリター分解、植物根の呼吸、および土壌そのものからのCO2放出に因子分解した。ブナは細根層がリター直下にあるため、リター、細根をほとんど攪乱なしに除去することが可能である。今回はこの特性を利用して、玉原高原ブナ林において、リター、細根を順番に除去して測定を行った。測定に用いた器機・手法は上記土壌CO2放出速度測定と同等である。まずリター層を除去しない状態で測定を行い(CO2(A))、次にリター層を除去後に直ちに同じ場所で測定を行った(CO2(B))。次に細根を注意深く除去し、2時間放置後に同様の測定を行った(CO2(C))。測定は2005年8月29日および9月29日に行った。土壌微生物のリター分解、植物値の呼吸、および土壌そのものからのCO2放出の貢献度は、以下の式で算出した。

CO2(土壌微生物のリター分解)=(CO2(A)−CO2(B))/CO2(A) (%)

CO2(植物根の呼吸)=(CO2(B)−CO2(C))/CO2(A) (%)

CO2(土壌そのものから)=CO2(C)/CO2(A) (%)

連続地温測定

 デジタル温度計(T&D corporation, TR52)を用いて、深さ5cmの地温を、調査地内において4ヶ所で連続測定した。測定は2005年5月21日から2005年11月18日の間に、30分おきで自動的に行った。

リター分解速度

 メッシュサイズ0.09mm2、面積690cm2のポリエステル網の袋(以降リターバックという)を調査地内に2005年5月21日に12個設置した(写真1)。これらのリターバックに現場のリターを構造を崩さないように切り取って入れ、元の場所に戻した。毎月一度リターバック全体の湿重量を現地で電子天秤(エーアンドデー,HL-200)を用いて測定した。

また、それぞれのリターバック近くにメッシュサイズ0.09mm2、面積690cm2のポリエステル網の袋(以降ダミーバックという)を12個設置し、これらのダミーバックには、周辺から集めたリターを入れた。毎月一度ダミーバック内のリターを一部採取し、同時にダミーバック自体の湿重量を現地で測定した。採取したリターは研究室で、湿重量、乾燥重量を計測した。この計測値から現地のリターバック内のリター含水率を推定した。リターバック自体が含む水分量は、現地で測定したダミーバックの水分量と同じとみなした。これらの結果をもとに、各月のリター乾燥重量減少量から、1日あたりのリター乾燥重量減少速度を以下の式から求めた。

1日あたりのリター乾燥重量減少速度=各月の乾燥重量減少量/前月の乾燥重量/日数

統計解析

 土壌CO2放出速度と地温、土壌CO2放出速度と土壌含水率のそれぞれの相関はカレイダグラフ(Synergy Software)を用いて、相関関係の有意性検定には生物統計学(R.Sokal・F.James 1983)の表を用いた。