調査地概要

 玉原高原は群馬県北部の沼田市北方、薄根川に合流する発知川源流域にあり、標高1200〜1300mに広がる平坦地と緩い傾斜地、そして高層湿原から構成されている。平坦地は玉原の南側と北側にあり、南側は迦葉山(1322m)の裏側から鹿俣山(1637.7m)尼ヶ禿山(1466m)獅子ヶ鼻山(1875m)、武尊山(2158.3m)にかけての地域、北側は沼田市と水上町の市町境であるブナ平となっている。玉原高原の一角には湿原植物が群生し、「小尾瀬」、「第2の尾瀬」と呼称される玉原湿原がある。また沼田市が第3セクター方式によって1973年に策定された「武尊総合森林レクリェーション地域開発計画」や、1987年に策定された「玉原レクリェーションゾーン」として開発が推進された玉原スキー場、たんばらラベンダーパーク、キャンプ場、ダム湖が一周できるサイクリングロードなどの観光施設が存在する。1982年には落差116mもあるダム特有のコンクリートの壁がない、自然の景観に配慮したロックフィルダムが築かれた。キャンプ場からは玉原高原や鹿俣山に通じる登山道があり、玉原の雄大な自然を楽しむことができる(群馬評論 2001)。

 玉原高原には、約一万年前に終了した氷河期以降、数えきれないほどの世代交代を繰り返して形成されたブナ林が存在しており、高原内には、全く手が加わっていない林、大径木のブナを含む自然の姿を留める林、必要な個体だけを抜き伐りした結果、隙間はあるがブナを含む樹木が所々に残る林。また、ブナを含むすべての樹木を伐採した結果、樹木のないササ原になっている場所などがあり、それら性質の異なるタイプが各所にモザイク的に分布している(福嶋 2005)。

 1684m2の調査地区内に成木82本(うちブナ55本)が分布し、立木密度は1haあたり約487本である(町田 2005)。