5,結論

 ダム開発は、これまでもさまざま影響が指摘されながらも、強制的にダム開発がすすめられてきた。環境影響評価法が施行され、環境に配慮しない事業は許認可をしないこともできるようになった。それでも、八ッ場ダム事業のように古い計画では、そのダム建設の目的が再評価されないまま工事がすすめられている。
 今回の調査の結果から、八ッ場ダムの湖岸は帰化植物の群落に覆われ、工事の入ったところは攪乱地を好む植物が入ってくることが示唆された。ダム湖の水は植物プランクトンの増殖のために異様な色を呈する。歴史のある民俗や文化も水没する。つまり、ダムが出来ることで建設地一帯が、観光資源としての利用価値の低いものに変わる可能性が高い。
 ダム湖は、自然湖沼と同様に景観要素やレクリエーションの場として、人々に憩いや娯楽をあたえる場となりうる。そうであるならば、ダム湖は、地元住民にとって利用価値の高いものになりうる。そのためにはダム湖の水質管理が課題となる。さらに、ダム湖周辺や工事のために帰化植物や攪乱地を好む種が入ってきたところでは、植生の再生が課題となる。
 水質管理や植生の再生は、計画の段階から配慮されなければ実現しない。そこで八ッ場ダム建設計画を、現在の環境影響評価法に基づいて再評価し、対策を検討することを提案する。さらに、ダム建設後も対策は続けられるべきである。これらにかかる費用は、生活再建の一部であるので、ダム建設側や下流の受益者が負担すべきである。

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