2011年度における教育研究活動の要旨 (2010年10月〜2011年9月) 石 川  真 一


[学会機関誌等への投稿]

 


[その他]

[報告書]
1.
著者名:石川真一、大森威宏、増田和明、小林栄一、小池正之
題名:西榛名地域貴重植物種モニタリングIII
発行年月日:2010年11月
報告書名:群馬県自然環境課「良好な自然環境を有する地域学術調査報告書(XXXVI)」
頁:117-124
概要:2009年度に行われた群馬県自然環境調査研究会による学術調査の報告書。群馬県西榛名地域において2005-2007年度調査で生育が確認された30種の絶滅危惧・希少植物種の生育・分布状況をモニタリングした。このうち4種について新たな生育地が確認された。また貴重在来種の受粉を行う昆虫相について調査し、種子繁殖成功度、遺伝子流動の検証の基礎資料を作成した。今後、群馬県の自然環境保護政策の策定・実施の基礎資料となる。筆頭著者として調査・解析・執筆を担当した。


[学会等での口頭発表]

1.
発表者名:石川真一、高橋美絵、鈴木由希、青木良輔
題名:群馬県内で育成中の大型ビオトープの紹介
発表年月日:2010年10月23日
学会名:群馬野外生物学会2010年度大会
開催場所:群馬大学社会情報学部(前橋)
概要:群馬大学社会情報学部・環境科学研究室で「育成管理」と呼ばれる手法によって育成中である、群馬県内の3つのビオトープの植物種多様性の保全または再生状況を紹介した。アドバンテスト・ビオトープは明和町・群馬R&Dセンタ内に2001年竣工した、民間企業所有としては国内最大級のものである。2009年の調査では、在来植物86種、外来植物33種の計119種の生育が確認された。これまでの調査結果も含めると、在来植物種数が安定してきていることが明らかになった。チノー・ビオトープは藤岡市に2009年末から造成中で、高崎観音山にあるコナラ民有林から在来植物(コナラほか)と表土を移植し、在来の低地性樹種30種程度を植栽した。池には、前橋・玉村の休耕田および現地に埋没した水田土壌を撒きだしした。2009年の調査では、在来植物40種、外来植物1種の計41 種の生育が確認された。男井戸川遊水池内ビオトープは、群馬県伊勢崎工事事務所が休耕田を遊水池化し、その一部に造成中である。造成前の休耕田では、2008年の調査により在来植物24種、外来植物4種の計28種の生育が確認された。この中にはアサザをはじめ、計4種の絶滅危惧種が含まれ、土壌または植物体の状態で保存されており、ビオトープ完成後に戻す予定である。以上のように大型ビオトープは、学術調査に基づいた人為的・積極的管理により、地域の在来種と絶滅危惧種の保護・系統維持など、生物種多様性の保全において重要な役割を担うことが期待できる。

2.
発表者名:石川真一
題名:日本の砂浜海岸における砂丘植生の現状と課題-コメント
発表年月日:2011年3月9日
学会名:第58回日本生態学会大会シンポジウム「日本の砂浜海岸における砂丘植生の現状と課題」
開催場所:札幌コンベンションセンター(札幌)
概要:海岸砂丘植生・植物は、すでに1980年代から全国的に衰退が著しい。その保全のためには、以下の3点に留意する必要がある。第一に、海岸砂丘植物の研究は100年以上の歴史のある領域であり、また環境省の分類では「自然草原」に入り、植生自然度10という最も自然度の高い植生であるなど、学術上・保全上貴重な自然植生帯である。第二に、日本の海岸砂丘は様々な開発行為により、そのほとんどがすでに失われ、今後地球温暖化により海面が1m上昇すると、日本の砂浜面積の90%が消失すると予測されている。しかし海岸砂丘植物はレッドリストにもほとんど掲載されておらず、社会的・学術的認知度が非常に低い。東日本大震災による地盤沈下・大津波が沿岸域の自然植生にどのように影響しているか早急に調査し、レッドリストにおける海岸砂丘植物のランク評価をやり直す必要がある。第三に、海岸植物図鑑の復活など、研究成果・教育普及活動を推進し社会的理解を深める必要がある。また海岸法の改正で「海岸環境の整備と保全」が必須となり、その計画は各自治体が策定することとなったので、工学系・実学系の研究者および国土交通省と関連機関・自治体と生態学分野の共同研究・共同事業を実施していくことが、海岸砂丘植生・植物の保全に不可欠である。

3.
発表者名:石川真一、ペレンゲル・ハシフー
題名:外来樹木ハリエンジュが渡良瀬川河川敷の在来植物相に及ぼす諸影響
発表年月日:2011年3月11日
学会名:第58回日本生態学会大会
開催場所:札幌コンベンションセンター(札幌)
概要:日本各地のダムを建設した河川の上・中流域で近年、外来樹木ハリエンジュが樹林化して、河道封鎖・堤防破壊や生物多様性減少などが危惧されている。植物相調査の結果、群馬県渡良瀬川上流に約30年前に建設された草木ダム周辺においては、ダム建設後も本来の生育立地が各地に残存し、山地性植物種が多く生存している一方で、山地性でない草本植物種および外来植物種も少なからず生育が確認された。また群馬県桐生市内の渡良瀬川河川敷における国土交通省との共同実験により、ハリエンジュを伐採することによって、植物種の多様性を回復できる可能性があるが、抜根まで行うと別の外来植物の繁茂を誘発する危険性があることが示唆された。渡良瀬川上中流域における分布調査により、最上流の足尾町で植林したハリエンジュ由来の個体が、全体で57カ所において合計110,080本生育していると推定された。ハリエンジュの根・茎・葉の各器官抽出液が、河川敷に生育する外来種3種(ナガバギシギシ、コセンダングサ、ショカツサイ)および在来種3種(チヂミザサ、ミゾコウジュ、メハジキ)の種子発芽に与える影響を発芽実験により検証した結果、茎および根の抽出液は、いずれの植物の種子の最終発芽率も大きく低下させた。またこの低下の度合いは、全体として外来種3種よりも在来種3種でより大きくなった。ハリエンジュの葉の抽出液にも同様の抑制効果があることが検出されたが、その効果は茎と根の抽出液よりも弱く、また時間が経つとさらに弱くなる可能性があると考えられる。いずれにしても、これらの在来植物の種子発芽に対する抑制効果は、野外調査で明らかになった、ハリエンジュ林およびその駆除後に外来種が特異的に多くなるという現象の一因になっていると推察される。

4.
発表者名:石川真一
題名:企業と生物多様性-企業活動による生物多様性保全の実例
発表年月日:2011年3月12日
学会名:第58回日本生態学会大会フォーラム「企業と生物多様性-COP10の成果を受けて」
開催場所:札幌コンベンションセンター(札幌)
概要:群馬県内で企業が育成中の2つのビオトープの、植物種多様性の保全または再生状況を紹介した。


[社会的活動]

開催者名:石川真一
題名:教養教育合宿実習「群馬県本白根山の自然環境の成り立ちと保全」
開催年月日:2011年6月18日・19日
開催場所:群馬県草津町
概要:群馬大学学生を対象とし、草津白根山の自然環境資源としての重要性や、周辺地域の産業がいかに自然環境資源をうまく利用して成り立っているかを体験する実習。

2.
開催者名:石川真一
題名:ビオトープ育成のための環境科学的調査研究と講習
開催年月日:2011年4月〜10月二回開催
開催場所:群馬県明和町、群馬県藤岡市
概要:(株)アドバンテスト群馬R&Dセンター(群馬県明和町)および(株)チノー藤岡事業所内に竣工したビオトープを育成する環境科学的調査研究を行い、これに基づいて講習を行った。(株)アドバンテストビオトープ基金および(株)チノービオトープ基金により助成を受けた。

3.
開催者名:石川真一(群馬県自然環境調査研究会)
題名:群馬県・絶滅危惧植物実態調査
開催年月日:2011年3月〜9月(月3回程度)
開催場所:群馬県東吾妻町、太田市、館林市、板倉町
概要:群馬県の委託事業である。群馬県レッドデータブックの改訂に必要な情報を得るため、群馬県内各地における絶滅危惧植物の分布・個体数・生育立地調査、種子採集を担当した。

4.
開催者名:観音山丘陵の自然を守るネットワークの会、高崎商科大学
題名:公開講座「外来植物の脅威 群馬県の実例」
開催年月日:2011年7月30日
開催場所:高崎商科大学
概要:地域住民対象の公開講座。群馬県内に蔓延するオオキンケイギクなどの外来植物の生態と防除法法に関する講義を行った。参加者60名。