2003年度における教育研究活動の要旨 (2002年11月〜2003年10月) 石 川  真 一


[著書]
著者名:小田信治、小松裕幸・著、石川真一(監修)
題名:エコロジカルデザイン:アドバンテスト群馬R&Dセンター敷地内ビオトープ.「建築設計資料集成:地域・都市I-プロジェクト編」日本建築学会・編 
担当頁:178-179
発行年月日:2003年9月
発行元:丸善
要旨:全国の大学工学部建設工学科で教科書として用いられる「建築設計資料集成」がおよそ20年ぶりに改訂され、その中でアドバンテスト群馬R&Dセンター敷地内ビオトープの建設・維持管理手法を概説した。近年世界的に自然再生事業として行われれるようになったビオトープであるが、その建設・維持管理は当該地の多様な自然環境に合わせて行う必要がある。本稿では、日本最大のビオトープの成立過程を、当該地の立地条件とともに概説した。


[学会機関誌等への投稿]
著者名:石川真一、高橋和雄、吉井弘昭
題名:利根川中流域における外来植物オオブタクサ(Ambrosia trifida)の分布状況と発芽・生長特性
掲載誌名:保全生態学研究(日本生態学会第二和文誌)
巻数:8
頁:11-24
発行年月日:2003年8月
要旨:花粉症や生態系破壊の原因とされる外来植物オオブタクサ(Ambrosia trifida)の、群馬県内利根川中流域における分布状況を調査した結果、県南端に位置する明和町から、県北端の水上町(源流から約30km下流)の範囲において、大きな個体群が30地点で確認され、このうち最大のものは約687万個体からなり、年間約17億の種子を生産していると推定された。またこの30地点はすべて工事現場や採石場周辺などの、人為的撹乱地であった。また水上町の個体群と群馬県南部の伊勢崎市の個体群において残存率調査と生長解析を行った結果、オオブタクサは北の低温環境下においても南部と同等かそれ以上の相対生長速度を有しているが、エマージェンス時期が遅くて生育期間が短いため、個体乾燥重量は小さくなった。しかし水上町では、伊勢崎市に比べて個体乾燥重量あたりの種子生産数と残存率および個体群密度が高いため、単位面積あたりでは伊勢崎市より多くの種子を生産していた。これらの結果から、オオブタクサが今後も低温環境下において勢力を拡大する危険性があるとことが示唆され、拡大防止の一方策として、河川周辺における人為的撹乱の低減と、種子を含む土壌が工事車両によって移動することを防止する必要性が提言された。


[その他著作]
(評論)
著者名:石川真一
題名:温暖化はもはや防げない?ー追われる生物、迷走する人類ー
掲載誌名:群馬評論
巻数:94
頁:62-67
要旨:地球温暖化の原因、メカニズムを概説し、またその将来における自然・生物・人類に対する影響予測に関する近年の研究成果をとりまとめた。これらをもとにして、温暖化防止に根元的に必要な5条件を提唱した。すなわち、人口抑制と貧困の改善、化石燃料の廃止と代替エネルギーの利用、長期的研究のための基盤整備、およびこれらを阻害する政治・行政上の凋落の改善、である。
(報告書)
著者名:石川真一
題名:ビオトープの管理・育成に関する調査研究
発行年月日:2003年3月
要旨:2002年度ビオトープ基金による。近年、ビオトープと呼ばれる人工生態系を構築することによって、地域の自然を再生しようとする試みが産業界、教育界を中心に盛んになっている。しかし、その手法のほとんどは経験的で、トライ・アンド・エラーを繰り返し、成功にはほど遠い。そこで、このビオトープをを育成するための環境科学的調査研究を行った結果、次の2点が解明された。ビオトープ竣工後に起こる生物の侵入・定着パターンが、一般撹乱地におけるものとほぼ同様であることが明らかになった。2. 特に帰化植物と呼ばれる、地域生態系を破壊する恐れのある植物の侵入が顕著であるが、管理手法の改良により、少なくとも一年生帰化植物については抑制が可能であることが明らかになった。

著者名:石川真一、三上紘一、中田吉郎、他
題名:新学習指導要領と「新しい時代における教養教育の在り方について」答申に対応した自然科学系大学初年次教育の新教材・授業方法の確立
発行年月日:2003年3月
要旨:平成14年度群馬大学教育研究重点経費による。平成14年度より「新学習指導要領」が始まり、平成17年度にはこのもとで中等教育をうけた学生を本学でも受け入れることになる。新学習指導要領では必修内容が現行のものとくらべて1/3ほど少なくなる。このような中等教育を受けた学生の知的水準を、より高度化して専門教育に”橋わたし”するためには、初年次教育を全面的に見直し、いっそうの充実に務めなくてはならない。また、「新しい時代における教養教育の在り方について」答申では、授業科目を複数の教員で担当したり実験や実習を取り入れたりなど、カリキュラム改革や指導方法の改善により「感銘と感動を与え知的好奇心を喚起する授業」を生み出すことが要求されている。このためのカリキュラム改革の基盤となる諸学生実験環境の改善および教材の整備を行い、その実効性を検証した。

著者名:石川真一、三上紘一、中島照雄、西村淑子、杉山学、樋田勉、他
題名:環境政策策定支援システムの構築に係る学内共同研究
発行年月日:2003年3月
要旨:平成14年度群馬大学教育研究重点経費による。人類の存続・繁栄のカギは、さまざまなレベルにおける環境政策にある。特に地球環境問題の解決や地域環境の整備等に関しては、総合大学たる群馬大学は、政策立案の直接支援および政策立案者の養成の2つの面で、大いに貢献してゆく必要がある。
本プロジェクトでは、こうした貢献を行う学内横断的体制を確立することを目的として、以下の3つのサブプロジェクトを行った。<1> 環境情報収集システムの構築 <2> 環境法、環境税制の国際比較データベースの構築<3> 環境政策策定支援シミュレーションモデルの構築。

著者名:石川真一、三上紘一、今村元義、落合信高、下田博次
題名:下仁田町新教育産業用地域・環境教育資材の開発のための社会情報学的共同
発行年月日:2003年3月
要旨:平成14年度群馬大学教育研究重点経費(社会貢献重点経費)による。
群馬県下仁田町において近年発足した、新教育産業に用いられる地域・環境教育資材を開発・整備した。ここでいう地域・環境教育資材とは、当地で発足した町立自然学校、自然史館において教育を行う際に教材として用いる、地域の自然環境情報や人文社会学的特性およびこれらに関する社会情報学的知見のことである。具体的には、次の通りである.(1)下仁田町と周辺地域の地質・地下資源分布とそのデータベース(2)同地域の植生分布・植物生理活性とそのデータベース(3)同地域の気象・大気環境・土壌環境特性とそのデータベース(4)同地域の土地利用の歴史、産業盛衰の歴史とそのデータベース。


[学会等での発表]
発表者名:石川真一
題名:文理融合分野としての環境科学の近年の取り組み
学会名:日本社会情報学会第7会大会ワークショップ「持続可能な社会構築のための”環境”」
発表年月日:2002年11月
開催場所:群馬・群馬大学
要旨:文理融合分野としておよそ30年間行われてきた環境科学の近年の取り組み、特に持続可能な社会構築のための取り組みを概説し、また環境科学の基礎概念として主体ー環境論、作用ー反作用、学際性などについても概説した。

発表者名:石川真一、亀沢秀一
題名:平地雑木林と高地ブナ林におけるリター生成・分解速度の季節変化
学会名:日本生態学会第50回大会
発表年月日:2003年3月
開催場所:茨城・エポカルつくば国際会議場
2003年3月
要旨:IPCCの第三次報告書(2001)によると、21世紀中に大気中のCO2は最大で490〜1260ppm、地球の平均気温が1.4〜5.8℃上昇すると予測されている。一方、生態系でのCO2の収支バランスは、特に森林において未解明部分が多く、とりわけリター(落葉落枝)の生成・分解速度に関するデータが不足している。 そこで、立地と構成樹種の異なる二つの森林生態系において、リターの生産・分解速度および含水率・地温との相関について解析した。群馬大学構内雑木林においては、リター分解速度は夏期の6〜8月期にもっとも高く、0.004〜0.005g/g/dayとなっていた。秋期・冬期の9〜4月にはリターの分解速度は低下し、0.001〜0.003g/g/dayとなっていた。玉原高原ブナ林ではリターの分解速度は7〜10月に0.004〜0.005g/g/dayと、雑木林と同等の値となっていた。ところが冬期積雪期には0.001g/g/dayと非常に低い値となった。リター生成速度はブナ林で1427g/m2/yr、雑木林で55770g/m2/yrと大きな違いがあった。以上のことから、ブナ林においては、リター由来のCO2放出量は、雑木林に比べて非常に低く、その原因は、リター生成量が少ないこと、低温と積雪により分解速度が低下することであると考えられる。

発表者名:石川真一
題名:21世紀がなぜ「環境の世紀」と呼ばれるのか
学会名:社会情報学部総合科学シンポジウム「環境の世紀」における環境施策の展
発表年月日:2002年10月3日
開催場所:群馬・群馬大学
要旨:1992年の地球サミットから2002年の環境サミットに至るまで、世界の環境科学の取り組み状況、特に持続可能な社会構築のための取り組みを概説し、また環境科学の基礎概念として主体ー環境論、作用ー反作用、学際性などについても概説した。

発表者名:石川真一
題名:地球環境情報と温暖化対策
学会名:社会情報学部総合科学シンポジウム「環境の世紀」における環境施策の展
発表年月日:2002年10月3日
開催場所:群馬・群馬大学
要旨:IPCCレポート(2000)に基づく地球環境変化の最新予測・最新影響予測、および世界の地球環境情報の構築体制について概説した。また、二酸化炭素濃度増大と温暖化が樹木の生長と森林の炭素循環に及ぼす影響について、最新の実験・解析から得られた結果に基づいて論じた。


[社会的活動]

発表者名:石川真一
題名:農業と環境(文部科学省社会人キャリアアップ講座「元気の出るアグリ講座」)
開催年月日:2003年1月11日
開催場所:群馬・昭和村公民館
要旨:文部科学省・群馬県よりの依頼講演。今後の地球環境変化によって農業にどのようなインパクトがあるか、またそのメカニズムについて概説した。

開催者名:石川真一
題名:教養教育合宿実習「群馬県本白根山の自然環境の成り立ちと保全」
開催年月日:2003年7月5日〜6日
開催場所:群馬県草津町
要旨:群馬大学学生を対象とし、草津白根山の自然環境資源としての重要性や、周辺地域の産業がいかに自然環境資源をうまく利用して成り立っているかを体験する実習。

開催者名:石川真一
題名:ビオトープ育成のための環境科学的調査研究と講習
開催年月日:2003年4月〜月一回開催
開催場所:群馬県明和町
要旨:(株)アドバンテスト群馬R&Dセンター(群馬県明和町)内に竣工したビオトープを育成する環境科学的調査研究を行い、これに基づいて講習を行った。(株)アドバンテストビオトープ基金により助成を受けた。