専門用語の解説

(生態学辞典等より引用)

帰化率
 ある一定の面積の植物種類数を調べて外来植物種類数が何%あるか示したものである。帰化率=(外来植物の数÷すべての植物の数)×100

休眠
 生長や活発な代謝を中断することにより高い死亡率をもたらす非生物的・生物的悪条件を回避するための生理的手段であり、ごく限られた能動的移動能力しかもたない種子植物の生活史戦略にとってきわめて重要な適応的意義をもつことである。さらに、温度や光などの外的要因が、生育に不適当な場合に起こる強制休眠と、生育に好適な条件を与えても休眠を続ける自発休眠とがある。

二次休眠
 発芽しうる状態になった後で発芽に不適な環境にしばらくおかれた場合、新たに誘導される休眠である。

光量子密度
 植物の成長や生死は、個葉の光合成反応を介して生育場所の光環境と密接にかかわっている。これら植物が置かれた光環境における、植物環境の光の当たる密度である。

相対光量子密度
 植物が置かれた光環境と植物のない裸地において、光量センサーを用いて測定した相対的な値である。

植生Vegetation
 ある地域における植物体の集まりの総称である。植生を研究する学問には、植物社会学、植物生態学などがあるが、一般的には植生学と呼ばれる。植生の成立は、地形や気候などの環境要因や、伐採や農耕などの人為的要因の影響を受ける。一方、成立した植生はこれらの環境要因を変化させる。現存する植生は、このような植物と環境要因の相互作用の結果である。植生を地図上に表現した植生図は、立地診断や環境計画の基礎図などに利用されている。

植物群落Plant Community
  同じ場所で一緒に生育している、ひとまとまりの植物群をいう。便宜的な概念で、「植生」の単位として用いられる。同じような立地にはよく似た植物群落が見られることから、立地条件、種の組成、群落全体の形状などにより、類型化されることも多い(「植物群系」、「植物群集」などともいわれる)。どのような基準で類型化するかについては、植生学の学派によって見解が異なる。「植生図」は、植物群落とその類型を地図として表したものである。

植物相Flora 
 特定の地域に生育する植物の種類組成であり、「フロラ」ともいう。「動物相」(特定の地域に生息する動物の種類組成)と合わせて、「生物相」(特定の地域に生育・生息する動植物の種類組成)を構成する。
植生」が「植物群落」によって類型的に地域の特徴を表すのに対して、植物相は地域に生育する全ての植物を同定して、種名などを記した種のリストで表す。日本は亜熱帯と亜寒帯にまたがっているため、多様な植物相が見られる。

遷移Succession
 生物群集の組成が時間とともに変化する過程。この移行(遷移)が進み最も発達した群集を極相という。遷移にともない、土壌も変化する。植生は有機物を土壌に供給し、一方で、水分・養分の供給を土壌に依存するため、両者はたがいに影響を受けながら進行する。遷移は、その始まり方や立地状況からさまざまに区別される。生物によって新しく創出された環境から始まる遷移は自発的遷移という。一方、河口における土砂の堆積地のように外的要因から始まる遷移は他発的遷移という。またその基質によって、溶岩上など乾燥した基質から始まる場合は乾性遷移、水湿地から始まる場合は湿性遷移という。さらに、基質に全く生物を含まない場所から始まるものを一次遷移、森林を伐採した跡地など最初から基質に若干の生物、例えば土壌中の種子・地下茎・土壌動物などを含む場所から始まるものは二次遷移といい、この途上にある森林を二次林という。

棚田 Terraced Paddy Field
 山腹の傾斜地に階段状に作られた水田である。傾斜地が急であればあるほど狭小な区画の水田となる。棚田は機械利用が難しいこと、維持管理に多くの人手を必要とすることから、近年減少が著しい。しかしながら、棚田には土壌の侵食を防止したり、小さなダムとして雨水を一時貯留し洪水を和らげたりする機能がある。また、里山と接した湿地環境を形成するため多様な生き物の生息場所となっている。棚田にはこれらの多面的な機能があるため、各地で存続のための運動・活動が展開されている。

硝酸態窒素Nitrate Nitrogen  NO3  
 植物が根から吸収する窒素。窒素は、リン・カリウムと並んで三大栄養素とも言われ、植物の生育・生命維持に欠かせない大切な栄養素である。しかし、収穫量を上げようと窒素肥料を大量に投入すると問題が起こる。植物は自分の成長に必要な量以上の硝酸態窒素をどんどん吸収し、葉に溜めてしまう性質があるため。

亜硝酸態窒素Nitrite Nitrogen  NO2
 亜硝酸塩をその窒素量で表したものである。亜硝酸性窒素ともいう。硝酸化成作用の過程でアンモニアから硝酸に酸化される際の中間生成物として現れる。アンモニア酸化反応よりも亜硝酸酸化反応の方が反応速度が大きいため、堆肥化や汚水処理などの過程あるいは土壌中においては、通常、亜硝酸態窒素が蓄積することはない。しかし、pH等の影響で硝酸菌の活性が抑制されると亜硝酸が集積することがある。窒素肥料の施肥量が多いと土壌中に亜硝酸が多量に集積しやすく酸性条件下ではとくにガス化しやすくなる。

アンモニア態窒素Ammonia  NH3  
 アンモニア態窒素とは、アンモニウム塩をその窒素量で表したもの。家畜ふん尿においては、アンモニアはタンパク質、アミノ酸、尿素、尿酸などの含窒素化合物が分解する際に生成(アンモニア化成)されるが、家畜ふん尿や畜舎汚水のように水と共存するような状態ではアンモニウムイオン(NH4)の形態で存在する。排水中のアンモニア態窒素は、水の汚染指標として重要である。アンモニア態窒素は、酸化されると亜硝酸態窒素を経て硝酸態窒素となる。水系におけるアンモニア態窒素の存在は、近い過去に、し尿(ふん尿を含む)による汚染のあった可能性を示す指標ともなっている。


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